【イラク戦争における米軍および有志連合軍の死傷者】

アフガニスタン戦争,イラク戦争を含む「対テロ戦争」がなぜ「終わらない」性格をもつのか,またブッシュ政権が国際社会の反対の中でなぜイラク攻撃を強行したのかについてのわたしの見解は,
2008年秋以降の世界的金融・経済危機の構造を国際政治や軍事面を含めて論じた『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(御茶の水書房,2012年2月,本書の構成と序論),
現在の世界経済の危機的状況と90年代以降の日本経済の構造変化を基礎理論から現状分析まで展開し,平易に説明した『21世紀のマルクス経済学』(慶應義塾大学出版会,2015年7月,本書の目次)
でお読みいただけます。2014年以降のIslamic State in Iraq and Levant(またはIslamic State,イスラム国)の台頭の問題を考える材料にもなると思います。
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2011年12月イラク駐留米軍が撤退しましたので,米軍の死傷者数は国防総省発表で変更があった時点で更新しています。

第1表 米軍の死傷者(2016年9月14日発表) 第2表 イラク戦争における有志連合軍の派遣人数と死者数・撤退時期
作戦別 死者  負傷者****
合計 戦闘 非戦闘 合計 軽傷 重傷
 「イラクの自由」作戦*
(Operation Iraqi Freedom)
4,424 3,490 934 31,952 19,066 12,899
  軍人** 4,411 3,481 930 31,952 19,048 12,887
 うち大規模戦闘作戦期間
(2003/3/19-4/30)
(139) (109) (30) (545) (116) (429)
  国防総省文官 13 9 4
「新しい夜明け」作戦
(Operation New Dawn)
期間(2010/9/1-11/12/18)
73 38 35 295 18 12
「確固たる決意」作戦***
(Operation Inherent Resolve)
23 3 20 16
  国防総省文官 1 0 1
合計 4,514 3,532 986 32,264 19,066 12,899
* 2003年3月19日以降のイラク,オマーン,カタール,
クウェート,サウジアラビア,バーレーン,UAE,アデン湾,アラビア海,
オマーン湾,紅海,ペルシア湾における死傷者。
作戦名は,2010年8月末の米軍の戦闘任務終了により,9月1日から
「新しい夜明け」作戦(Operation New Dawn)に変更された。
** 2010年7月26日発表分までは戦闘作戦期間(2003/3/19-4/30)と
以降を区分して死傷者数が発表されていたが,7月27日発表以降では
期間の区別なく一括した数値となった。
上の表では,参考までに戦闘作戦期間の死傷者数を示した。
*** 2014年8月8日のイラク北部への空爆から始まったイラクとシリアのイスラム国勢力に対する軍事作戦(作戦名が公表されたのは10月15日)で,イラクとシリアの他,イスラエル,エジプト,カタール,キプロス,クウェート,サウジアラビア,トルコ,バーレーン,ヨルダン,レバノン,UAE,東経25度以東の地中海,ペルシャ湾,紅海での死傷者数。
**** 戦闘中に負傷した兵士で,
軽傷:負傷後72時間以内に任務に復帰した者
重傷:負傷後72時間以内に任務に復帰しなかった者
(2007年9月12日発表分で,戦闘作戦期間中の重傷者数が
426人から429人に変更された。理由は不明である。)
2010年10月19日発表分から内訳が公表されなくなったので,
内訳は同18日発表分までの負傷者である。
[資料出所] 国防総省ニュース:http://www.defense.gov/News/News-Releases
国名 最大
派遣人数
死者数 撤退時期
アメリカ 168,000 4,486 2011/12
イギリス 46,000 179 2009/7
イタリア 3,085 33 2006/12
ポーランド 2,500 23 2008/10
ウクライナ 1,632 18 2005/12
ブルガリア 475 13 2010/8
スペイン 1,400 11 2004/5
デンマーク 540 7 2007/8
エルサルバドル 380 5 2009/1
ジョージア 160 5 2009/10
スロバキア 102 4 2007/1
ラトビア 120 3 2007/8
ルーマニア 850 3 2009/7
エストニア 45 2 2010/3
オーストラリア 2,000 2 2008/6
オランダ 1,350 2 2005/3
タイ 450 2 2004/9
アゼルバイジャン 150 1 2010/9
カザフスタン 29 1 2010/6
韓国 3,600 1 2008/12
チェコ 160 1 2010/10
ハンガリー 300 1 2004/12
フィジー 134 1 2010/12
国名 最大
派遣人数
死者数 撤退時期
アルバニア 71 0 2010/5
シンガポール 175 0 2008/12
タイ 450 0 2004/9
ドミニカ 302 0 2004/5
トンガ 44 0 2008/12
ニカラグア 120 0 2004/2
日本 800 0 2008/12
ニュージーランド 61 0 2004/9
ノルウェー 164 0 2006/8
フィリピン 100 0 2004/7
ボスニア
・ヘルツェゴビナ
85 0 2008/11
ポルトガル 128 0 2005/2
ホンジュラス 370 0 2004/5
マケドニア 33 0 2010/11
モルドバ 24 0 2010/7
モンゴル 180 0 2008/9
リトアニア 120 0 2007/8
合計 236,689 4,804
[備考]各国の派遣人数はピーク時,
死者数は2011年12月の米軍撤退時点。
 [資料出所]米国防総省,英国防省,
AP,ロイターの報道をもとに作成。
第1-1図 有志連合軍の死者 月別の推移
[資料出所]
国防総省ニュース:http://www.defense.gov/News/News-Releases
米中央軍司令部:http://www.centcom.mil/
イラク多国籍軍:http://www.mnf-iraq.com/
AP:http://www.ap.org/
ロイター:http://www.reuters.com/
CNN:http://www.cnn.com/
イラク戦争関連年表
から集計し作成。
[備考]
(1) US_KIA:米国防総省発表の「イラクの自由」作戦における米軍の死者のうち,「戦闘行動中に死亡(Killed in action)」とされた数および戦闘行動関連による死者数。
(2) US_non:米国防総省発表の「イラクの自由」作戦における米軍の死者のうち,「戦闘行動以外の原因による死亡(Non-combat related cause)」とされた数で,病気・自殺,訓練中の事故などによる死者のほか,軍事作戦行動中の事故など広い意味では戦闘行動関連の死者も含む。。
(3) Other:米軍以外の有志連合軍の死者数。
[Memo]
上記グラフが示す07年秋以降の有志連合軍死者の顕著な減少については,イラク情勢の「改善」をどう見るか?を参照していただきたい。
第1-2図 有志連合軍の年間死者数の推移
[資料出所]
第1-1図に同じ
[備考]

「戦闘」:戦闘行動中の死者として発表された数で,敵対勢力の攻撃による死者のほか,爆弾・地雷処理中の死者なども含む。
「非戦闘」:戦闘行動中以外の原因による死亡(Non-combat related cause)として発表された数で,病気・自殺,訓練中の事故などによる死者のほか,軍事作戦行動中の事故など広い意味では戦闘行動関連の死者も含む。
「est.」:2003年3月の開戦以降の死者数をもとにした1年間の仮定値。
第2図 米軍の負傷者 月別の傾向
[資料出所]
国防総省ニュース:http://www.defenselink.mil/news/から集計し作成。
[備考]
米国防総省発表の「イラクの自由」作戦における米軍人の負傷者(軽傷・重傷の合計)。負傷者数は1週間ごとに発表されるため(発表されない週もあり),厳密な月別の負傷者数ではない。

【イラク戦争における民間人の死者】

第3-1図 「大規模戦闘終結宣言」以降の民間人の死者 月別の推移
第3-2図 イラク攻撃開始以降の民間人の年間死者数の推移
[備考]
第3-1図の2003年は「大規模戦闘終結宣言」(5月1日)以降の死者数。
「est.」:集計日までの最多死者総数の増加ペースをもとにした当該月の死者総数の予想値。
第3-2図の2003年はイラク攻撃開始(3月20日)以降の死者数。
「est.」:当該年の集計済分の最多死者総数の増加ペースをもとにした1年間の死者総数の予想値。
IBC集計の死者総数と各年の死者数は注釈をご覧ください
2013年末以降のイラク政府によるアルカイダ系武装勢力に対する「対テロ戦争」にともなう民間人死傷者についてはイラク軍の無差別砲撃・爆撃による民間人犠牲者発生事件(2014年)をご覧ください。
[資料出所]
第3-1図,第3-2図とも,Iraq Body Count(IBC):http://www.iraqbodycount.net/database/,「イラクにおける米国主導の軍事干渉に起因する民間人死者数:Reported civilian deaths resulting from the US-led military intervention in Iraq」をもとに,「End Date」によってソートしたデータおよび「対テロ戦争」関連年表を基礎として作成。
大規模戦闘終了後の外国軍占領・駐留期間において,IBCが信頼するに足ると考える複数のメディアに報道された死者数の最少数と最多数(イラク攻撃に起因する法秩序と治安の崩壊などの結果生じた事件の死者を含む)。
[備考]
イラクにおける実際の民間人死者数はIBCの集計をはるかに上回ると考えられる。この点についてより詳しくは[注釈]を参照してください。
上記のグラフはIBCのデータを基礎としているが,IBCの集計目的と共同研究「イラク戦争を考える」の分析視角との違い,IBCのデータでは明らかな計上ミスや各月に分類されない死者数などがあるため,IBCのデータをそのままグラフにしているわけではない
また,IBCはメディアが報道した死者数だけでなく,バグダッド死体安置所に運ばれた死者数のうちIBCがイラク戦争関連と推定した死者を随時追加している。さらに,メディアの報道についても数カ月後あるいは1年以上経過してから死者数が追加されることもある。このため,IBCのデータ更新時に上記のグラフは大きく変化することがある*。
上記グラフでは2007年9月以降,死者数が大きく減少しているが,今後追加される可能性もあり,イラクの治安状態が改善に向かっているかどうかは現時点(2008/2/26)では即断できない。実際,2007年半ばのグラフでは07年3月以降の死者数が大きく減少していたが,その後追加され,上記グラフのように8月までの死者数は06年後半と同程度の水準となった。
以上について,より詳しくは[注釈]を参照してください。
*なお,[アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局]が「シリーズ<マスコミが伝えないイラク戦争・占領の現実>その21」と題する論考の中で,わたしが作成している「イラク戦争における犠牲者数」のグラフを参考に,「イラクで誰と誰が闘っているのかの実体」について論じている。
論じられている内容の主旨は有意義なものであるが,公開の日付が05年12月12日となっており,この論考が執筆された時点では,IBCのバグダッド死体安置所のイラク戦争関連死者数推計の公表前であった。このため,この論考のイラクの民間人死者に関する叙述は,現在の第3図のグラフからは読み取れないものとなっている。
ただし,このことが,イラクの現状について「事実に基づいて検証しなければ,メディアの報道を鵜呑みにすることはできない」というこの論考の主張の価値を損なうものではない。この論考に張られたリンクからわたしの「イラク戦争関連年表」にアクセスされる方も少なくないので,念のため記しておく。
[Memo]
上記グラフが示す07年秋以降のイラク民間人死者の顕著な減少については,イラク情勢の「改善」をどう見るか?を参照していただきたい。
また,05年以降のアフガニスタンの治安状況の悪化 ― 武装勢力による多国籍軍・アフガン治安部隊への攻撃増大と多国籍軍等による武装勢力掃討作戦の強化にともなって,「誤爆」やコラテラルダメージ(軍事行動に付随する犠牲)によって,多数の民間人死者が発生している。この問題については,08年末からのイスラエルのガザ地区攻撃にともなう多数の民間人死者発生の問題とあわせて,私が論じたCollateral Damage ― “対テロ戦争 War on Terror”の非人間性をお読みください。
「対テロ戦争」の原点とも言うべきパレスチナ問題の起源と経過については,「イラク戦争前史― パレスチナ問題」をご覧ください。
[参考]
1.『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(御茶の水書房,2012年2月)。本書の構成と序論はこちらでご覧ください
2. 「対テロ戦争」の最前線を知るために:アフガニスタン戦争・イラク戦争という「対テロ戦争」の最前線の状況と日本の関与をどう考えるかについて,映画を素材としたエッセイ集。「アメリカはなぜ戦争をし続けるのか」(ドキュメンタリー映画「アメリカばんざい-crazy as usual」),「無知は免罪符とならない」(映画「リダクテッド 真実の価値」)

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