【アフガニスタン戦争における犠牲者数】

アフガニスタン戦争,イラク戦争を含む「対テロ戦争」がなぜ「終わらない」性格をもつのか,またブッシュ政権が国際社会の反対の中でなぜイラク攻撃を強行したのかについてのわたしの見解は,
2008年秋以降の世界的金融・経済危機の構造を国際政治や軍事面を含めて論じた『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(御茶の水書房,2012年2月,本書の構成と序論),
現在の世界経済の危機的状況と90年代以降の日本経済の構造変化を基礎理論から現状分析まで展開し,平易に説明した『21世紀のマルクス経済学』(慶應義塾大学出版会,2015年7月,本書の目次)
でお読みいただけます。2014年以降のIslamic State in Iraq and Levant(またはIslamic State,イスラム国)の台頭の問題を考える材料にもなると思います。

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 第1表 アフガニスタン戦争における米軍の死傷者(2016年9月14日更新) 第2表 ISAF*1派遣国・派遣人数(2016/7/7現在)と死者数(2016/8/23まで)
作戦別 死者   負傷者*4
合計 戦闘 非戦闘 合計 軽傷 重傷
「不朽の自由」作戦*1
(Operation Enduring Freedom)
2,350 1,845 505 20,091 4,176 4,529
  アフガニスタン*2 2,216 1,832 384 20,049 4,176 4,529
  その他の地域*3 130 11 119 42
  国防総省文官 4 2 2
「自由の番人」作戦
(Operation Freedom's Sentinel)
24 12 12 121
  うち国防総省文官 1 1 0
合計 2,374 1,847 517 20,212 4,176 4,529
*1 「不朽の自由」作戦は2001年10月7日から始まって2014年12月31日で
終了。その後は米軍の駐留目的がアフガニスタン治安部隊の訓練となり
「自由の番人」作戦(Operation Freedom's Sentinel)と名称を変更。
*2 2010年7月26日発表分まではパキスタン,ウズベキスタンを含む
アフガニスタンおよび周辺地域として集計されていたが,7月27日
発表からアフガニスタンのみにおける死傷者となった。
*3 イエメン,ウズベキスタン,エチオピア,エリトリア,キルギスタン,
グアンタナモ湾(キューバ),ケニア,ジブチ,スーダン,セーシェル,
タジキスタン,トルコ,パキスタン,フィリピン,ヨルダンにおける死傷者。
*4 戦闘中に負傷した兵士で,
軽傷:負傷後72時間以内に任務に復帰した者
重傷:負傷後72時間以内に任務に復帰しなかった者
ただし,2010年10月19日発表分から内訳が公表されなくなったので,内訳は同18日発表分までの負傷者数である。
[資料出所] 国防総省ニュース:http://www.defense.gov/News/News-Releases
派遣国 派遣人数 死者数
現在 最大
United States*2 6,800 90,000 2,380
United Kingdom 450 9,500 455
Canada 0 2,922 158
France 0 4,005 87
Germany 980 5,000 54
Italy 945 4,000 48
Poland 198 2,580 44
Denmark 90 750 43
Australia 270 1,550 41
Spain 7 1,606 34
Georgia 870 1,561 31
Netherlands 100 2,160 25
Romania 588 1,949 25
Turkey 523 1,845 15
New Zealand 8 236 11
Czech 214 626 10
Norway 35 600 10
Estonia 5 163 9
Hungary 90 611 7
Sweden 23 506 5
Latvia 21 190 3
Slovakia 40 343 3
Finland 30 181 2
Jordan 0 1,069 2
Portugal 10 179 2
Albania 43 333 1
Belgium 62 528 1
Korea,
Republic of
0 426 1
Lithuania 19 245 1
NATO(国籍不明
または未発表)
- - 15
 
派遣国 派遣人数 死者数
現在 最大
Armenia 121 131 0
Austria 9 3 0
Azerbaijan 94 95 0
Bahrain 0 95 0
Bosnia
& Herzegovina
55 79 0
Bulgaria 79 608 0
Croatia 103 530 0
El Salvador 0 25 0
Greece 4 162 0
Iceland 2 8 0
Ireland 0 8 0
Luxemburg 1 11 0
Macedonia 39 240 0
Malaysia 0 46 0
Mongolia 120 195 0
Montenegro 14 41 0
Singapore 0 48 0
Slovenia 7 130 0
Tonga 0 55 0
Ukraine 10 31 0
United Arab
Emirates
0 35 0
Total*3 13,079 138,240 3,523
参考:Afghanistan
National Armyの規模
 187,000 n.a.
ISAF(International Security Assistance Force)およびOEF活動中の死者
*1:2015年1月1日からは
  Resolute Support mission
*2アメリカはISAF以外にも最大で
10,000人規模(推定)を派遣していた。
*3最大派遣人数のTotalは各国の最大
派遣人数の単純合計で,同時期に
派遣された最大人数ではない。
[資料出所]
ISAF
「対テロ戦争」関連年表
 

アフガニスタン戦争における多国籍軍の死者
第1-1図 多国籍軍の戦闘・作戦行動中の死者 月別の推移(2005年〜)
第1-2図 戦闘・非戦闘行動別の年間死者数 第1-3図 戦闘・作戦行動中の年間死者数
[備考]
多国籍軍:「不朽の自由」作戦参加国軍および国連安保理決議に基づく国際治安支援部隊(International Security Assistance Force, ISAF)
第1-1図
(1) US:OEFとISAFの戦闘行動中の米軍の死者数
(2) Other:OEFとISAFの戦闘行動中の米軍以外の多国籍軍の死者数。
(3) est.:集計日までの死者数の増加ペースをもとにした当該月の死者総数の予想値。
第1-2図
(1) 「戦闘」:戦闘行動中の死者として発表された数で,敵対勢力の攻撃による死者のほか,爆弾・地雷処理中の死者なども含む。
(2) 「非戦闘」:戦闘行動中以外の死者として発表された数で,病気・自殺,訓練中の事故などによる死者のほか,軍事作戦行動中の事故など広い意味では戦闘作戦行動関連の死者も含む。
(3) est.:集計日までの死者数の増加ペースをもとにした当該年の死者総数の予想値。
第1-3図
戦闘行動中の死者数の米軍・米軍以外の多国籍軍の内訳。
[資料出所]
イラク戦争関連年表
米国防総省ニュース:http://www.defense.gov/News/News-Releases
英国防省:http://www.mod.uk/
カナダ国防省:http://www.forces.gc.ca/
AP:http://www.ap.org/
ロイター:http://www.reuters.com/
などから集計し作成。
【注釈】
(1) 2005年以降,多国籍軍およびISAFの死者数は急速に増加し,タリバン等の反外国軍・反政府武装勢力の攻勢が強まり,アフガニスタンの治安情勢が悪化の一途をたどっていることが推測される。
2008年の多国籍軍・ISAFの兵士の死者数は9月中旬には07年の死者総数を上回っている(なお,第1-1図が示すように多国籍軍の死者数は毎年秋から冬にかけて少なくなり,春から夏に増加している。これは,武装勢力と多国籍軍・アフガン国軍の主戦場である山岳部は冬季には雪に覆われ,毎年,両者の交戦数が低下するためと考えられる)。

また,2007年までは,戦闘に起因する死者はカンダハル州やヘルマンド州などの南部地域およびウルズガン州やパクティカ州などの中部・東部地域が中心であったが,2008年に入って首都カブールや周辺地域におけるIED攻撃や自爆攻撃による死者,2008年5月頃からはファラー州・ヘラート州など西部地域における武装勢力との戦闘による死者が増加している。北部地域でも戦闘による死者が発生しているから,治安の悪化はアフガニスタン全土におよんでいるようである。

日本政府は,2008年6月8日にアフガニスタンへの自衛隊派遣の可能性を検討するための外務・防衛両省などによる調査団をアフガニスタンへ派遣し(6月18日帰国),ISAFの活動状況,米軍が駐留するタジキスタンの空港施設などを視察し,航空自衛隊の輸送機や陸上自衛隊のヘリによる多国籍軍の空輸支援の可能性を調査した。自衛隊の派遣については,上記のような治安状況の悪化や,カルザイ大統領のたびたびの要請にもかかわらず,依然としてISAFやOEFの軍事行動によって多数の民間人の犠牲者が出ており,アフガニスタン国民の外国軍に対する反感が根強いこと,を慎重に考慮すべきであろう(08年7月5日記)。
(2) 08年7月18日付の朝日新聞によると,日本政府はアフガニスタン国内の治安悪化およびISAF内での日本の支援活動について日本側の希望とISAF側のニーズとの不一致(ISAFは自衛隊ヘリによる輸送支援を要請したが,自衛隊は低空を飛び地上からの攻撃を受けやすいヘリの派遣に難色を示しC130輸送機の派遣を打診したが,ISAFでは輸送機による輸送支援へのニーズは小さかった)から,アフガニスタンへの自衛隊派遣を断念したという(08年7月20日追記)。
(3) 2009年1月,オバマ米大統領が就任し,オバマ政権はアフガニスタンを“テロとの戦い”の主戦場と位置づけた。イラク情勢を「改善」に導いたゲーツ国防長官・ペトレイアス中央軍司令官コンビのもとで,彼らがイラクで実行した方法― 米軍増派と,金と武器を与えて住民に自警団組織を構築させる方法をアフガニスタンでも実行しようとしている。この方法とその問題点については,イラク戦争の「改善」をどう見るか?をお読みください。
また,05年以降のアフガニスタンの治安状況の悪化 ― 武装勢力による多国籍軍・アフガン治安部隊への攻撃増大と多国籍軍等による武装勢力掃討作戦の強化にともなって,「誤爆」やコラテラル・ダメージ(軍事行動に付随する犠牲)によって,多数の民間人死者が発生している。この問題については,08年末からのイスラエルのガザ地区攻撃にともなう多数の民間人死者発生の問題とあわせて,私が論じたCollateral Damage ― “対テロ戦争 War on Terror”の非人間性もお読みください。
「対テロ戦争」の原点とも言うべきパレスチナ問題の起源と経過については,「イラク戦争前史― パレスチナ問題」をご覧ください(09年1月31日追記)。
(4) 2009年6月19日から,タリバンの勢力圏である南部ヘルマンド州のラシュカルガー地域で英軍主導の大規模なタリバン武装勢力掃討作戦(豹の爪作戦)が開始され,7月2日からは,同州中央部でオバマ米政権の“テロとの戦い”戦略の一環としての米軍増派にもとづく米軍(海兵隊など4000人規模)・アフガン国家警察(650人規模)による大規模な武装勢力掃討作戦(剣の打撃作戦:Operation Strike of the Sword)が開始された。この作戦の目的が達成されるかどうかはわからないが,少なくともタリバン側によるゲリラ戦や自爆攻撃等の強い抵抗が行なわれ,米英軍兵士に多数の死傷者が発生すること*,また両者の戦闘に付随してアフガン民間人にも多数の犠牲者が発生することが予想される(2009年7月4日追記)。
*2009年7月10日に南部ヘルマンド州でIED攻撃により英兵計6人が死亡し,アフガニスタン戦争における英軍の死者数累計(184人)がイラク戦争における死者数累計(179人)を上回った。また,7月13日にはアフガニスタン駐留軍兵士の戦闘行動中の月間死者数が42人となって,2008年8月のそれまでの月間最多死者数に並び,その後も死者数は増加し続けている(2009年7月19日追記)。
(5) 2011年6月17日付の朝日新聞で,上記注釈の(2),(3)に記した自衛隊のアフガニスタン派遣問題について,ウィキリークスが入手したアメリカの外交公電のうち朝日新聞が提供を受けた公電の中に,当該問題関係の記述があったことが報道された。記事によると,2008年7月7〜9日に行なわれた北海道洞爺湖サミット直前の6日の日米首脳会談で,ブッシュ米大統領が福田康夫首相に対して,「日本はアフガンに中身のある支援をする必要がある」,「形だけの貢献は適当でないし,歓迎もされない」と強い調子で要求し,「(陸自の)CH-47大型輸送ヘリを派遣するか,軍民一体型のPRT(地域復興チーム)を担当するか」と具体的に求めたという。
しかし,アフガニスタンへの自衛隊派遣については,自民党と連立を組む公明党が反対し,野党の民主党が参議院の多数を握る当時の状況では自衛隊派遣のために必要な新法を通すめどはたっていなかったため,福田首相は「陸自の大規模派遣は不可能」と返答したという。結局,福田政権も,続く麻生政権も自衛隊の派遣は見送り,「不朽の自由」作戦支援は海上自衛隊の補給艦によるインド洋における燃料補給にとどめた。民主党政権も5年間で約50億ドルの財政支援を行なうことを発表しただけとなった(11年6月18日追記)。
[参考]
1.『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(御茶の水書房,2012年2月)。本書の構成と序論はこちらでご覧ください
2. 「対テロ戦争」の最前線を知るために:アフガニスタン戦争・イラク戦争という「対テロ戦争」の最前線の状況と日本の関与をどう考えるかについて,映画を素材としたエッセイ集。「アメリカはなぜ戦争をし続けるのか」(ドキュメンタリー映画「アメリカばんざい-crazy as usual」),「無知は免罪符とならない」(映画「リダクテッド 真実の価値」)。
 第2図 アフガニスタン戦争における民間人の死者(2007年以降)  第3表 アフガニスタン戦争における民間人の死者(2007年以降)
死者数
合計*
殺害主体**
AGE PGF うち空爆
2007 1,523 700 629 n.a.
08 2,118 1,160 828 552
09 2,412 1,533 573 359
10 2,794 2,037 429 171
11 3,133 2,208 519 235
12 2,769 2,180 323 126
13 2,959 2,310 341 122
14 3,701 2,677 610 104
15 3,545 2,315 621 149
16 1,601 1,228 383 57
合計 25,042 17,648 4,627 1,875
* 死者数合計は殺害主体不明を含む。
**殺害主体別の数値はAGEとPGF双方の行動に起因する死者を含む。
2016年は1月から6月末まで。
[備考]
AGE: Anti-Government Elements, 反政府勢力の行動に起因する死者
PGF: Pro-Government Forces, アフガニスタン治安部隊やNATO軍・米軍の行動に起因する死者
第2図の2016年は1月から6月末までの数値を年間に換算。
 [資料出所]
国連アフガニスタン支援団(UNAMA)より作成。
 *なおタリバンは,UNAMAの殺害主体別の数値について,「敵によるプロパガンダであることは明白」であり「我々の聖戦の目的はすべての民間人の生命,尊厳,財産を守ることである」と批判している(AP2014年7月9日付配信記事)。

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