共同研究 「イラク戦争を考える」: Thinking About The Iraqi War

慶應義塾大学 経済学部 延近 充 編著 (2004年9月25日公開)

アフガニスタン戦争,イラク戦争を含む「対テロ戦争」がなぜ「終わらない」性格をもつのか,またアメリカのブッシュ政権が国際社会の反対の中でなぜイラク攻撃を強行したのかについてのわたしの見解は,

『対テロ戦争の政治経済学― 終わらない戦争は何をもたらしたのか』(明石書店,2018年3月)をお読みください。

本書の理論的基礎およびより詳しい現状分析について,下記の2冊が参考となります。

2008年秋以降の世界的金融・経済危機の構造を国際政治や軍事面を含めて論じた『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(御茶の水書房,2012年2月,本書の構成と序論),

現在の世界経済の危機的状況と90年代以降の日本経済の構造変化を基礎理論から現状分析まで展開し,平易に説明した『21世紀のマルクス経済学』(慶應義塾大学出版会,2015年7月,本書の目次)
What's New
<資料> 終わらない「対テロ戦争」−年表 2003年2月〜 (2025.9.16 更新)

【第2期トランプ政権の政策関連年表2025年】 

【分析】 トランプ2.0の政策の本質とは?(2025.7.1)
第2期トランプ政権の政策は国際社会に混乱をもたらしている。
トランプ大統領はアメリカ・ファーストの政策と主張しているが,その本質は自分の権力維持のためのトランプ・ファーストの政策である。
彼の関税政策と親イスラエル政策についての分析をまとめました。

【欧米でのIS関係のテロ】(2015年〜)

【トランプ政権の政策関連年表2017〜2021年】(2020大統領選挙,バイデン政権によるトランプ政権の政策変更を含む)

[イラク情勢] 【イラク戦争における犠牲者数】
「暴力事件」などによるイラク人の2025年9月の死者1人(15日まで)。
クルド労働者党(PKK)が党大会を開催し「解散と武装闘争の終結を決定した」との声明を発表(5.12)。
・ウォルツ米大統領補佐官(国家安全保障担当)がテレビのインタビューでISIS,アルカイダ,アル・シャバブが米国への攻撃を計画していると警告(4.23)。
[パレスチナ情勢] パレスチナ問題の経緯については『対テロ戦争の政治経済学』第6章をお読みください。

2025年のパレスチナ情勢年表

過去のパレスチナ情勢年表一覧はこちら

[イラン・イスラエル情勢]2025年

【イスラエル・パレスチナ紛争における犠牲者数】*(9月15日まで)
イスラエル軍のガザ地区とヨルダン川西岸地区への攻撃による
2025年9月のパレスチナ人の死者

1,153人
 うちガザ地区での死者
 瓦礫の下などから発見された死者
1,045人
18人
 ヨルダン川西岸地区での死者 3人
 2023年10月7日のハマスのイスラエルへの攻撃以降の
ガザ地区とヨルダン川西岸地区へのイスラエル軍の攻撃による
パレスチナ人の死者総数(飢餓と栄養失調による死者を含む)
 瓦礫の下に埋まるなどによる行方不明者(少なくとも)
 瓦礫の下などから発見された死者(2025年1月11日以降)
 同上(1月19日の停戦合意発効以降)
 行方不明者を死亡と判断 
 イスラエルのガザ地区への人道支援物資搬入制限による飢餓と栄養失調による死者
  (うち子どもの死者)


 68,276人
10,000人
2,302人
1,803人
2,809人
425人
(145人)
 うちガザ地区での死者(多数の女性と子どもを含む) 66,407人
 ヨルダン川西岸地区での死者 750人
パレスチナ人の負傷者数 164,926人
10月7日のハマスのイスラエル南部攻撃によるイスラエル人の死者
10月20日のイスラエル軍のガザ地区での最初の地上作戦実施以降の
パレスチナ武装勢力(レバノンのヒズボラ含む)との戦闘によるイスラエル兵の死者
1,200人

 905人

*予測数=1日平均の死者数×30日
*瓦礫の下などから発見された死者と飢餓と栄養失調による死者を含む。ガザ保健省が死者と認定した行方不明者は含まず。
25年1月と2月ははガザ地区の停戦の発効により,瓦礫の下などに埋まった死者の捜索が可能になったため,多数の遺体が発見されたと思われる。
2025年
9月
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は34人 ,負傷者は316人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,905人,負傷者は164,926人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は3人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども145人含む425人と発表(15日)。
・ルビオ米国務長官がエルサレムでネタニヤフ首相と会談,イスラエル軍によるガザ市攻撃を容認,ネタニヤフ首相は両国関係はかつてないほど強固と自賛,両者はガザ地区での紛争終結はハマスの壊滅を通じてのみ実現されるとの認識で一致(15日)。
・ガザ地区北部ガザ市でイスラエル軍が地上攻撃を開始,ニュースサイトのアクシオスがイスラエル当局者の情報として報道(15日)。
・9日のイスラエルによるカタール空爆について,トランプ大統領に事前に通知していたとアクシオス報道,トランプ大統領は事前に知らされていなかったと否定(15日)。
ガザ地区の人権に関する国連特別報告者アルバネーゼ氏が「イスラエルは非通常兵器を用いて爆撃し,パレスチナ人を強制的に避難させようとしている。民族浄化を進める前に,ガザで居住できなくする必要がある最後に残った地域だからだ」と非難,同時にイスラエルのガザ地区でのジェノサイドに対して有効な措置をとっていない国際社会も共犯関係にあると批判(15日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は68人 ,負傷者は346人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,871人,負傷者は164,610人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は2人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども145人含む422人と発表(14日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも45人死亡,各病院当局発表,中部ディル・アルバラハで子ども3人含む家族6人死亡,アルアクサ病院発表,北部ガザ市をイスラエル軍が空爆し集合住宅や民家30棟以上を破壊,住民の退避の強制目的(14日)。
イエメンのフーシ派が先週の西部サヌアの新聞本社へのイスラエル軍の空爆によりジャーナリスト31人死亡,22人負傷と発表(14日)。
ガザ地区北部ガザ市でイスラエル軍の空爆により子ども12人と女性1人含むパレスチナ人少なくとも32人死亡,シファ病院発表(13日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は68人 ,負傷者は346人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,871人,負傷者は164,610人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は2人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども145人含む422人と発表(14日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも45人死亡,各病院当局発表,中部ディル・アルバラハで子ども3人含む家族6人死亡,アルアクサ病院発表,北部ガザ市をイスラエル軍が空爆し集合住宅や民家30棟以上を破壊,住民の退避の強制目的(14日)。
イエメンのフーシ派が先週の西部サヌアの新聞本社へのイスラエル軍の空爆によりジャーナリスト31人死亡,22人負傷と発表(14日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は47人 ,負傷者は205人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,803人,負傷者は164,264人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども2人含む7人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども145人含む420人と発表(13日)。
ガザ地区北部ガザ市でイスラエル軍の空爆により子ども12人と女性1人含むパレスチナ人少なくとも32人死亡,シファ病院発表(13日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は38人(うち2人は瓦礫の下などから発見) ,負傷者は200人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,756人,負傷者は164,059人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども1人含む2人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども143人含む413人と発表(12日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも40人死亡,保健当局発表,北部ガザ市の500カ所以上をイスラエル軍が空爆(12日)。
・イスラエル軍幹部らがネタニヤフ首相に対して,ガザ市の制圧作戦は政権の想定を超えて長期化し,ハマスが拘束中の人質の犠牲は避けられず,制圧の目標が達成されずに終わる可能性が高いと警告,イスラエル・メディア報道(12日)。
国連総会でパレスチナの2国家共存を支持する宣言を賛成142カ国,反対10カ国,棄権12カ国で採択,米国とイスラエルは会議をボイコット(12日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は72人 ,負傷者は356人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,718人,負傷者は163,859人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども1人含む7人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども142人含む411人と発表(11日)。
・ガザ地区北部ガザ市でイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも11人死亡,北部アルシャティ難民キャンプで5人死亡(11日)。
エルサレム東方のユダヤ人入植地マーレアドゥミムで,8月14日にスモトリッチ財務相が承認したと発表した同地域(12平方q)にユダヤ人入植者用住宅3400戸を建設する計画(E1計画)を実現する調印式で,ネタニヤフ首相が「パレスチナ国家を未来永劫存在させないという約束を果たす。この場所は我々のものだ」,「我々の遺産,土地,そして安全を守り,この都市の人口を倍増させる」と主張(11日)。
国連安保理で9日に行なわれたイスラエル軍によるカタールへの空爆について,英仏が策定したイスラエルを直接名指しせずに非難する声明を米国を含む15理事国すべての賛成により承認し発表,声明文には「安保理メンバーは紛争を和らげる重要性を強調し,カタールとの連帯を表明した。カタールの主権と領土の一体性を支持した」と記載(11日)。
・イエメンのフーシ派運営の保健省が10日のイスラエル軍の攻撃による死者が46人,負傷者が165人に増加したと発表(11日)。
・イエメンのフーシ派がイスラエル南部ネゲブ地域を弾道ミサイルと無人機で攻撃したと発表,イスラエル軍はイエメンから発射されたミサイル1基と無人機1機を迎撃したと発表(11日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は41人(うち2人は瓦礫の下などから発見) ,負傷者は184人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,656人,負傷者は163,503人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども2人含む5人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども141人含む404人と発表(10日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも52人死亡,うち12人は南部ハンユニスの人道支援物資配給拠点付近での銃撃による死者,医療当局発表(10日)。
・イスラエルのネタニヤフ首相がカタール政府がハマスのメンバーをかくまっていると批判し,追放または処罰するよう要求し,「もし実行されなければ我々がやる」と警告(10日)。
EU欧州委員会のフォンデアライエン委員長がEU議会の演説で,「ガザで起きていることは世界の良心を揺さぶっている」と強調し,イスラエル製品に対する貿易優遇措置の撤廃などの制裁措置を提案すると発表(10日)。
イエメン西部サヌアと北部ジャウフ州のフーシ派の国防省や複数の拠点を空爆,フーシ派の保健当局は少なくとも35人死亡,131人負傷と発表,フーシ派報道官は「イスラエルの攻撃は純粋に民間人を標的にしていた」と非難(10日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は83人,負傷者は223人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,605人,負傷者は163,319人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は6人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども140人含む399人と発表(9日)
・イスラエル軍がガザ地区北部ガザ市の住民に対して南部ハンユニスのマワシ地区への非難を命令(9日)
カタール・ドーハをイスラエル軍が空爆し,ハマス政治部門のガザ地区の停戦交渉団リーダーのハイヤ氏の息子と側近,警護員3人死亡,ハマス発表,カタール内務省は同国の治安要員1人死亡と発表,イスラエルのネタニヤフ首相はハマス幹部の排除は「戦闘終結につながる」と自己正当化,カタール政府は「国際法違反の犯罪行為だ」と非難,ムハンマド首相は「今回の攻撃は国家テロとしか言いようがない」,「これは地域全体へのメッセージだ。この地域にはならず者が存在するということだ」と強く非難,トランプ大統領は「非常に不満だ」と批判,サウジアラビア政府はカタールの主権に対する「イスラエルによる残忍な侵略」と非難,国連のグテーレス事務総長も非難声明(9日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は67人 (うち2人は瓦礫の下などから発見),負傷者は320人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,522人,負傷者は163,096人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども2人含む6人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども140人含む393人と発表(8日)。
・ガザ地区北部ガザ市でパレスチナ武装組織戦闘員のイスラエル軍戦車へのIED攻撃によりイスラエル兵4人死亡,1人負傷,イスラエル軍発表(8日)。
エルサレム北部のバス停で武装集団の銃撃によりイスラエル人6人死亡,20人負傷,イスラエル兵と市民の発砲により襲撃者2人死亡,イスラエルのサール外相は実行犯はヨルダン川西岸地区の住民と発表,ハマスは武装集団の銃撃を称賛する声明を発表するも自らの関与は否定(8日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ジェニンのパレスチナ人居住地をイスラエル軍が襲撃し多数の民家を破壊,イスラエル兵の発砲によりパレスチナ人少年2人死亡,1人負傷,イスラエル軍は住民が立入禁止区域に進入し部隊に脅威を与えたための発砲と主張,パレスチナ自治政府保健省がイスラエル兵の発砲によりパレスチナ人少年1人死亡と発砲,状況などの詳細未発表(8日)。
スペインのサンチェス首相がイスラエルによる「ガザでの虐殺を止め,その加害者を追及し,パレスチナの人々を支援する」ことを目的とした9項目の措置を発表,イスラエル向けの武器や燃料を積んだ船舶や航空機のスペインの港の使用と領空への進入の禁止,パレスチナ自治政府と国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)への援助の増額,ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地で生産された製品の禁輸,ジェノサイドに直接関与した人物の入国禁止など,スペインは2024年5月にパレスチナ国家を承認済み,イスラエルのサール外相はこれらの措置は「反ユダヤ的」であり,国内の汚職スキャンダルから国民の目をそらそうとしていると批判(8日)。
国連のターク人権高等弁務官が人権理事会第60回会合の冒頭演説で,「イスラエルによるガザ地区でのパレスチナ市民の大量殺害,言葉では表現できない苦しみと壊滅的な破壊,支援の妨害とそれにともなう市民の飢餓,ジャーナリストや国連職員,NGO職員の殺害,そして戦争犯罪の繰り返しは,世界の良心を揺さぶっている」と非難(8日)。
・ベルギー・ブリュッセルでパレスチナの大義を支持する12万人規模(主催者発表,警察は7万人と発表)のデモ(8日)。
・レバノン東部ベカア渓谷とヘルメルでイスラエル軍の攻撃により5人死亡,5人負傷,レバノン保健省発表(8日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は87人 (うち4人は瓦礫の下などから発見),負傷者は409人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,455人,負傷者は162,776人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども3人含む5人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども138人含む387人と発表(7日)。
・ガザ地区北部ガザ市で避難所の学校へのイスラエル軍の空爆により子ども6人と女性3人含む少なくとも14人死亡,同市の7階建てビルをイスラエル軍が爆破しビルが崩壊,住民が避難する高層ビルの破壊は9月5日以降,3棟目(7日)。
・イスラエル最高裁が,政府が拘束中のパレスチナ人に対して生命を維持するのに十分な食料を与えていないとして,法律に基づいて基本的な生活を維持できるよう命令(7日)。
・イエメンのフーシ派が発射した無人機がイスラエルの防空システムを通過してイスラエル南部エイラート近郊のラモン空港に着弾し空港施設に被害,破片によりイスラエル人2人負傷(7日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は68人 (うち8人は瓦礫の下などから発見),負傷者は362人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,368人,負傷者は162,367人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども1人含む9人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども135人含む382人と発表(6日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも40人死亡,保健当局発表,北部ガザ市のジキム十字路で支援物資の食料を受け取りに来た住民へのイスラエル兵の発砲により11人死亡,ガザ地区各地での支援物資を受け取りに来た住民への発砲による死者は23人とシファ病院発表(6日)。
・ガザ市の15階建てのビルをイスラエル軍が爆破しビルが崩壊(6日)。
・イスラエル軍報道官がガザ市の住民に対して南部ハンユニスのマワシ地区などの「人道地区」に避難するようSNS上で要請(6日)。
イスラエル西部テルアビブのイスラエル軍司令部外でトランプ米大統領にガザ地区の戦闘終結と人質の解放を保証する行動を求める数千人規模のデモ,プラカードの1つには「ガザ戦争の継続を放置すればトランプの遺産は消失する!」(6日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は69人 ,負傷者は422人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,300人,負傷者は162,005人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども3人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども134人含む373人と発表(5日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも30人死亡,うち20人はガザ市での死者,保健当局発表,北部ガザ市西部リマルの14階建てのビルをイスラエル軍が爆破しビルが崩壊,イスラエル軍はハマスの偵察所として使用されていたための攻撃と証拠を示さずに主張,ビルの管理者は民間人の避難所として使用され,民間利用目的以外に使用されたことはないと反論(5日)。
・ヨルダン川西岸地区ハレット・アダバをユダヤ人入植者が襲撃しパレスチナ人数人負傷(5日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は84人 ,負傷者は304人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は64,231人(うち401人は行方不明者を死亡と認定),負傷者は161,583人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は3人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども131人含む370人と発表(4日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも53人死亡,保健当局発表,北部ガザ市の避難テントへの空爆により少なくとも子供9人と女性6人含む25人死亡,シファ病院発表,南部ハンユニスで空爆により3人死亡,ナセル病院発表(4日)。
・イスラエル軍報道官がガザ市の40%を掌握していると発表(4日)。
イスラエルのスモトリッチ財務相がヨルダン川西岸地区の併合計画を発表(4日)。
ヨルダン川西岸地区南西部ヘブロンでユダヤ人入植者が新たな入植地建設のために,パレスチナ人がヘブロン旧市街への移動に使用する通路上の建物を強奪,反入植監視団体の「ピース・ナウ」発表(4日)。
・レバノン南部のヒズボラの拠点2カ所へのイスラエル軍の空爆によりヒズボラ幹部含むメンバー5人死亡,イスラエル軍発表(4日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は113人 ,負傷者は304人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は63,746人,負傷者は161,245人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども1人含む6人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども131人含む367人と発表(3日)。
・ガザ地区北部ガザ市でイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも15人死亡,避難民居住の家屋やテントを破壊,シファ病院発表,南部地域で人道支援物資を受け取りに来た住民10人含む16人死亡,ナセル病院発表(3日)。
・ハマスがイスラエルと合意した人数のパレスチナ人の解放と引き換えに人質全員の解放を含む包括的な取引の用意があると発表,イスラエル首相府は「これはハマスによる新たなごまかしであり,目新しいものは何もない」と指摘し,ガザでの戦争終結には人質全員の解放に加えて,ハマスの武装解除,ガザの非武装化,イスラエルがガザの治安管理を確立し,それに代わる文民政権が樹立される必要があると主張(3日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は76人 ,負傷者は281人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は63,633人,負傷者は160,914人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども3人含む13人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども130人含む361人と発表(2日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも95人死亡,北部ガザ市シファ病院が35人の遺体受領,同市シェイク・ラドワン野戦病院が4人の遺体受領,北部ベイト・ラヒヤのアル・アウダ病院が10人の遺体受領,中部アルアクサ病院が3人の遺体受領,南部ハンユニスのナセル病院が31人の遺体受領(2日)。
・ガザ地区南部ハンユニス西方マワシ地区で無人機攻撃により子ども7人含む9人死亡,パレスチナ・メディア報道(2日)。
・ガザ地区北部ガザ市の集合住宅への空爆により子ども3人含む15人死亡(2日)。
・イスラエル軍がガザ市の完全制圧作戦のために約6万人の予備役招集を開始したと発表(2日)。
イスラエル西部テルアビブでガザ地区での戦闘に従事した少なくとも365人の兵士が参加する団体「人質のための兵士たち」が,ネタニヤフは人質解放ではなく政治目的のために戦争を長期化させており,「ネタニヤフの進める侵略戦争は人質の生命を危険にさらし,ガザ地区の民間人を殺害し,不具者にし,飢餓に追い込んでいる」と批判し,予備役招集に応じないよう呼びかけ(2日)。
ベルギーのプレボ外相がパレスチナ,特にガザ地区で起きている人道的悲劇や,イスラエルの国際法違反の暴力」を受けて,9月の国連総会でパレスチナ国家を承認し,ユダヤ人入植地からの輸入禁止,イスラエル企業との公共調達契約に関する政策見直しなどの「断固たる」対イスラエル制裁を科す方針を発表,「これはイスラエル国民を処罰するものではなく,イスラエル政府に国際法と人道法を順守させ,現地の状況を変えるための行動を取らせるためのものだ」と付言(2日)。
・イエメンのフーシ派が紅海北部でイスラエルに関係する貨物船を2機の無人機と1基のミサイルで攻撃したと発表(2日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻の結果としてのパレスチナ人の死者は98人 ,負傷者は404人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は63,557人,負傷者は160,660人,過去24時間の飢餓と栄養失調による死者は子ども3人含む9人,戦争開始以来の飢餓と栄養失調による死者は子ども127人含む348人と発表(1日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも34人死亡,半数以上が女性と子ども,保健当局発表,北部ガザ市で民家への空爆により女性と子ども含む19人死亡(1日)。
ハマス政治部門がトランプ政権がガザ地区を信託統治し住民を域外に移住させる計画を検討しているとの8月31日のワシントン・ポスト紙の報道について,「ガザは売り物ではない」と非難し,「ハマスはガザ住民を見捨て、占領者をわれわれの土地にとどめ置くような計画すべてを拒否する」と主張(1日)。
・イエメン西部サヌアでフーシ派が8月31日に国連の世界食糧計画(WFP)の施設を襲撃し職員少なくとも11人を拘束したとグテーレス事務総長が発表(1日)。

[論文・分析]

「対テロ戦争」は何をもたらしたのか(2017/3/25)
『薄氷の帝国 アメリカ ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』 ( 出版案内と序論 12/1/25公開)
イラク戦争前史 ― パレスチナ問題(09/1/31掲載)
「イラク情勢メモ」:イラク情勢の「改善」をどう見るか?(09/1/25掲載)
Collateral Damage ― “対テロ戦争 War on Terror”の非人間性(2009/1/20掲載)

はじめに

〔共同研究開始の経緯〕

2003年2月,アメリカによる対イラク攻撃が迫っている危機的状況のなか,社会科学研究者の有志36人が呼びかけ人となって,新聞に「意見広告 社会科学研究者は訴える」を掲載する運動をはじめました。
国際法や国際世論を無視した先制攻撃と日本の加担への反対を世論に訴えることが目的でした。その運動の一環としてウェブ・サイトを開設することになり,呼びかけ人の依頼により,わたしがサイトの作成・管理にあたることになりました。
そこで2月中旬に「研究者は訴える」と題したウェブ・サイトを開設し,賛同者名簿の作成,運動の進展・拡大にともなう更新,読者から送られてくるメールへの対応などを担当しました。
さらに3月17日,ブッシュ大統領の最後通告演説をうけて,呼びかけ人による「軍事行動即時停止要求の声明」をウェブ・サイト上で発表し,「声明」への賛同者のメールによる受付をはじめました。
しかし3月20日,世界的な反戦運動の盛り上がりをあざ笑うかのように米英軍のイラク攻撃が強行されました。
(この意見広告や声明,運動の経緯については「研究者は訴える」ウェブ・サイトをご覧ください。また,最後通告演説直後にウェブ上に公開した私見はこちらをご覧ください。)
わたしはこの「イラク戦争」の経過の記録をはじめるとともに,わたしの研究会(ゼミナール)の学生(新4年生)に,この戦争の記録と背景や実態の分析を2003年度の共同研究のテーマとしてはどうかともちかけてみました。わたしのゼミの専攻分野が政治経済学・現代資本主義論であり,第2次大戦後の資本主義を世界史的視野から理論的・実証的に分析することが基本テーマであったからです。彼らも現在進行中の深刻な問題をリアルタイムで取り扱うことに非常に興味を持ってくれ,4月から参加した新3年生の同意も得て,「イラク戦争を考える」共同研究が出発しました。

〔分析視角〕

共同研究を始めるためには分析視角を共有することがまず大切です。
わたしたちは,「イラク戦争」を単に時論的にではなく,
1. 多面的・歴史的視点から考察すること,
2. 自分たち自身の問題として考えるため,また戦後日本経済をゼミのテーマの1つとしていることから,国際社会と日本との関係・日本の「戦争」への対応を考察の柱の1つとすること,
3. 安易に独りよがりの結論を下すのではなく,考えるための材料を可能な限り集めて取捨選択して提示すること,
を基本方針としました。
(1) より具体的には,この「戦争」を9.11同時多発テロに起因する問題としてではなく,あるいは少しさかのぼって1991年の湾岸戦争前後に根源がある問題としてでもなく,第2次大戦後の国際関係や中東地域の複雑な政治・軍事関係を考慮しなければ本質が理解できない問題として分析するということです。
もちろん,中東問題の焦点であるパレスチナ問題の起源は紀元前にあります。そこまでさかのぼらなくとも,現代につながるパレスチナ問題の複雑化*の出発点は,第1次大戦中,イギリスがパレスチナの地にアラブ人とユダヤ人双方に独立国家建設を認める矛盾した政策(フサイン・マクマホン協定とバルフォア宣言)をとったこと,いわゆるイギリスの「二枚舌外交」にあります。
*現代のパレスチナ問題の起源と経過については,「イラク戦争前史―パレスチナ問題」をご覧ください。
(2) ただ,イスラエルとアラブ諸国との対立にしてもイスラム圏諸国間関係にしても,今回の「イラク戦争」につながるような問題の複雑化を規定する要因の大部分は,第2次大戦後の特殊な国際関係にあるとわたしたちは考えました。
第2次大戦後の特殊な国際関係においてもっとも重視すべき要素は,戦後まもなくはじまった米ソ冷戦です。アメリカを中心とする西側資本主義陣営とソ連を中心とする東側社会主義陣営との対立はグローバルな広がりを持ち,政治・軍事・経済・社会などさまざまな分野で戦後世界を規定する重要な要因となりました。
40年以上続いた冷戦期間中,米ソがそれぞれ自陣営の支配圏の維持・拡大と強化のために,世界各国の政権や諸勢力に政治・軍事・経済的に影響力を行使しました。
国際的な紛争を平和的に解決する目的で設立された国際連合も,米ソ間の利害の対立する問題については機能不全に陥りました。
日本は敗戦から6年以上もアメリカ主導の占領下に置かれ,諸制度の急激な改革が行なわれました。日本の独立と同時に結ばれた日米安保条約(日米軍事同盟),その後も続く政治的な対米依存(従属),日本経済の復興や急激な経済成長も,冷戦体制のもとでのアメリカとの関係によって根本的に規定されています(これはわたしのゼミで扱う基本テーマの1つです)。
中東地域も米ソ対立・覇権争いの変遷に翻弄された地域です。
(3) 冷戦は,時に朝鮮戦争やベトナム戦争のような地域的な(代理)戦争として,熱い戦争として現実化しましたが,米ソが直接戦うことはありませんでした。しかし,米ソの熾烈な軍拡競争とそれぞれの支配圏の維持・拡大のための軍事的・経済的な介入は,両国にとって実際の戦争を戦うのと同様の重い負担となりました
象徴的なのがアメリカのベトナム戦争への介入とソ連のアフガニスタン侵攻です。
アメリカは1965年からベトナム戦争に本格的に介入をはじめました。介入当初の予想に反して,南ベトナム解放民族戦線と北ベトナムの抵抗によって戦闘は長期化・泥沼化していきます。アメリカは,ピーク時で年間288億ドル(総額1,067億ドル)の巨額の直接戦費と54万人の兵力を投じ,核兵器以外のあらゆる近代兵器を使用しました。死者だけでも,アメリカ兵約4万6000人,南ベトナム軍や韓国軍などの援助軍約19万人,北ベトナム・解放戦線軍92万人,民間人120万人といわれています。負傷者や後遺症に苦しむ人はさらに膨大でしょう。
これだけの犠牲を払いながら勝利できず,アメリカ国内や世界的な反戦運動の高まり,後述の経済的負担の重さなどから,1973年のパリ協定でアメリカ軍の完全撤退となりました。
アメリカは軍事的に敗北しただけでなく,経済的にも深刻な影響を受けました。ベトナム戦争はアメリカの財政赤字を膨大なものとし,インフレーションに拍車をかけ,産業の国際競争力を低下させ,国際収支の赤字を悪化させました。その結果,基軸通貨であるドルに対する信認が低下してドル危機が深刻化し,アメリカは1971年に金とドルの交換を停止せざるを得なくなります。国際経済は混乱し,固定相場制が維持できなくなって変動相場制に移行します。第2次大戦後の資本主義諸国の経済復興と成長の枠組みであったIMF体制が崩壊し,世界経済は1970年代の長期停滞に入っていきました。
ソ連は1979年末にアフガニスタンの内戦に軍事介入しました。反政府派はパキスタンの支援をえながらゲリラ活動で対抗し,アメリカも武器の供与など反政府派を援助して,戦闘は長期化・泥沼化していきました*。ソ連は10万を超える兵力を投入しながら勝利できず,多数の人的損害(15,000人の戦死者・37,000人の負傷者といわれる)をこうむり,経済的にも大きな負担となったため,1989年2月,ゴルバチョフ政権のもとで撤兵が行なわれました。
*サウジアラビアの富裕な家に生まれたオサマ・ビン・ラーデンがソ連と戦うためにアフガニスタンに入り,アラブ義勇兵の募集や訓練に資金提供などで重要な役割を果たしました。そのために作られた基金がアル・カーイダ(al Qaida)です。
この時期にはオサマは親米でしたが,ソ連のアフガニスタンからの撤退後の90年代に反米に転じて,アル・カーイダは反米武装組織に変わっていきます。
(4) 米ソ両国とも冷戦とそれに付随する地域戦争の負担に耐えられず,1989年のマルタ会談によってようやく冷戦の終了が公式に宣言されたのです。アメリカはレーガン軍拡の影響も加わって80年代後半に純債務国となったことに象徴されるように経済的に衰退し,ソ連は経済的困難ばかりか政治的混乱も極限に達し,国自体が消滅してしまいました。
第2次大戦後の戦争(冷戦・熱戦)は,戦場となった国・地域を荒廃させたのはもちろん,正義のない戦争を強行した米ソ両国をも多様な意味で荒廃させてしまったのです
*。
*戦後資本主義体制において冷戦のもつ意味については,わたしの「冷戦とアメリカ経済」『薄氷の帝国 アメリカ ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』をお読みください。
さらに,冷戦中に米ソが影響下に置いた各国や地域・諸勢力に対して行なった政策は,それら国民や民族の自立・民主化のためにではなく,自陣営の安全保障と支配圏の維持・拡大と強化を第1の目的としていました。両国とも民主的国家や勢力だけでなく,独裁政権や軍事政権であっても自国にとって有用であれば軍事・経済援助やその他の支援を行ない,支配下に置いたのはその現われです。
冷戦終結後はアメリカもソ連(ロシア)もその影響下に置いていた国や地域の多くに対して,そうした支援と支配を続ける必要もその余裕もなくなりました。いわば,冷戦体制の維持というタガが外れたのです。
冷戦中に米ソ両国の援助と支援を受けた体制の下で抑圧され続けてきた人々や民族は,その体制に対する強い抵抗意識だけでなく,強い反米意識・反ソ(反ロ)意識を持ったのは当然でしょう。米ソの影響力が低下し,既存の支配体制が弱体化すれば,そうした意識を行動として現実化させようとする動きが出てくることも当然でしょう。
1990年代以降,世界の各地で民族紛争や地域紛争がいっきに噴出しはじめたこと,アメリカやロシアなどに対するテロ(実行者にとっては抵抗運動)が頻発するようになったことは,こうした背景のためだと考えられます。
(5) 他方,冷戦終結は国際紛争の調停機関としての国連の存在意義と機能を高めるはずです。アメリカもロシアも一国だけで国際紛争を封じ込める能力も必要性もなくなったからです。また,国連のシステムにはさまざまな弱点があるとしても,現実的に国際紛争を調停し解決する多国間の協議・協力機関は国連しかないからです。
(6) 以上のような認識にたって,わたしたちは「イラク戦争」を分析していこうと考えました。
そこで,以下のような論点と課題を設定しました。
1. 冷戦中および冷戦後のアメリカの中東政策
2. アメリカの政策の中東地域への影響
3. アメリカのイラク攻撃の経緯:単独行動主義への傾斜
4. 冷戦中および冷戦後の国連の役割
5. 冷戦中および冷戦後の日米関係
6. イラク戦争の原因についての諸説の検討
さらに,
7. イラク戦争の推移を記録し,分析視角(4)の認識からこの戦争が容易には「終わらない」性格を持っていることを明らかにすること
8. アメリカにとってのベトナム戦争,ソ連にとってのアフガニスタン侵攻のように,イラク戦争は現代世界にどのような影響を与え,世界史の中でどのような意味を持つことになるのかを考察していこうと考えました。
2003年度は,これらの一部(1〜6)について延近が論文構成を提案し適宜コメントしながら,延近研究会12期・13期の学生が論文にまとめ,三田祭と延近研究会OB/OG会でとして発表しました。しかし,問題の難しさと幅の広さから論文としてはかなり未消化なものでした。
2004年度は,13期と14期の学生がそれらの改良と7,8の作業を行ない,延近提案の論文構成とコメントにより「イラク戦争のアメリカ政治・経済への影響」を中心として論文にまとめ,三田祭と延近研究会OB/OG会で発表しました。
当初は論文本体と要約をこのウェブサイト上に公開する予定でしたが,インターネット利用者の著作権軽視の状況*にかんがみ,公開の形式等を検討中です。
*このウェブサイト上に公開しているわたしの著作が他大学の学生によってコピーされてレポートとして提出されているばかりか,某大学の教員(非常勤)が,出典を明示せずに無断で教材として配布していたとの情報を当該大学の学生から連絡を受けたことがあります。
「イラク戦争を考える」を読みたいという希望も多く,公開を検討してきましたが,公開するためには論文としての完成度を上げ,現時点までのイラク情勢や「対テロ戦争」の推移についても盛り込んだものを公開したいと考えています。現在,一般公開に向けて私が全面的に改訂作業中です。その一部は論文ドラフトとして順次掲載していく予定です。(2009年1月31日記)
「イラク戦争を考える 第1部」については,2003年度の論文作成時点の原稿の修正は最低限にとどめたものをPDFファイルで公開しました。ファイルのダウンロードおよび印刷はできますが,著作権保護のために,文章や図表などのコピーはできないようなセキュリティ設定としてあります。また背景にわたしのニックネームが透かしとして入っています。
イラク戦争を含む「対テロ戦争」と「新帝国主義」戦略についてのわたしの見解は,別に「薄氷の帝国 アメリカ」と題する論文として公開しています(2009年12月30日記)。
「薄氷の帝国 アメリカ」は,大幅に加筆修正して,2008年秋以降の世界的金融・経済危機の構造を論じた著書『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』として,御茶の水書房から2012年2月に出版いたします。本書の構成と序論はこちらでご覧ください(2012年1月25日追記)。
「イラク戦争を考える 第1部」(pdf. 3.6MB)
「薄氷の帝国 アメリカ」

(延近 充)

各年度の論文構成は次のページをご覧ください。
「イラク戦争を考える」第1部(2003年度)
「イラク戦争を考える」第2部(2004年度)
7.のための資料として作成中の年表は次のページをご覧ください。
イラク戦争(対テロ戦争)関連年表 2003年2月〜
原則として複数のソースで確認できた事実のみを分類・収集して作成。
日付は時系列参照の便宜のため日本時間で表示し,必要に応じて現地時間を併記した。
現在,ほぼ毎日更新中です。
8.の考察のために作成している,イラク情勢の現状に関する私のメモはこちらのページをご覧ください
イラク戦争における
犠牲者
アフガニスタン戦争
における犠牲者
原油価格の推移
2003年〜
日米株価の推移
2008年9月〜
延近研究会 共同研究メンバー
第12期 植村昌史,大倉由貴子,乙武郁子,菊地雅子,岸田昌子,高石裕介,田川亮輔,永田大介,
村上創太,山口顕
第13期 安部雅隆,石井宏太郎,和泉ちひろ,小島健一郎,杉井良子,関谷直人,関屋文彦,
長江崇将,福市年成,堀田佳秀,山口功,山本真澄,吉田一陽
第14期 井上允之,内川浩樹,内田健介,栢島由佳里,今野聡,田中広美,中尾俊明,西山浩平,
福原早苗,松崎禎夫,望月さやか,山崎理絵,渡辺陽介
Iraq Body Count(民間人死亡者)

【関連情報・リンク】

対イラク戦争と日本の加担に対する研究者有志の反対声明(2003.3.20)
Column アメリカの対イラク最後通告と日本の対応について(2003.3.18)
研究者有志による意見広告「アメリカの対イラク先制攻撃と日本の加担に反対します」(2003.2.27)
ドキュメンタリー映画「アメリカばんざい - crazy as usual -」
イラクで死んだ兵士の家族,イラク派遣を拒否した兵士,ベトナム・アフガニスタン・イラクからの帰還兵,現役海兵隊員へのインタビューや海兵隊員養成のブート・キャンプの取材などで構成されたドキュメンタリー映画。2008年7月26日から公開。私も協賛しています。
「リダクテッド 真実の価値」
2006年にイラク・サーマッラで起きた米兵によるイラク人少女レイプ殺人事件を題材としたブライアン・デ・パルマ監督の作品。フィクションとインターネット上で公開されている実際の映像をミックスして,Redacted−情報の事前削除・編集:アメリカの情報操作・報道規制や偏向報道を描いている。10月25日から公開。この映画のサイトではイラク研究者の酒井啓子氏を講師とするシンポジウムなどの情報あり。
解放軍として歓迎される期待が裏切られ,泥沼化するイラク戦争下,「テロ」を恐れて心理的に追い詰められる米兵たち。イラクで何が起こっているのか,イラクに派兵したアメリカ社会では何が起こっているのかを考えさせる映画。
イラクと同様に泥沼化するアフガニスタンへ日米同盟のために自衛隊派遣を模索し続ける日本政府。
これは「ひとごと」の話ではない。無知は免罪符とはならないのである。

「対テロ戦争」の最前線の実態を知るための手がかりとなるこの2つの映画についての私のコメントをアップしてあります。

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