共同研究 「イラク戦争を考える」: Thinking About The Iraqi War

慶應義塾大学 経済学部 延近 充 編著 (2004年9月25日公開)

アフガニスタン戦争,イラク戦争を含む「対テロ戦争」がなぜ「終わらない」性格をもつのか,またアメリカのブッシュ政権が国際社会の反対の中でなぜイラク攻撃を強行したのかについてのわたしの見解は,

『対テロ戦争の政治経済学― 終わらない戦争は何をもたらしたのか』(明石書店,2018年3月)をお読みください。

本書の理論的基礎およびより詳しい現状分析について,下記の2冊が参考となります。

2008年秋以降の世界的金融・経済危機の構造を国際政治や軍事面を含めて論じた『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(御茶の水書房,2012年2月,本書の構成と序論),

現在の世界経済の危機的状況と90年代以降の日本経済の構造変化を基礎理論から現状分析まで展開し,平易に説明した『21世紀のマルクス経済学』(慶應義塾大学出版会,2015年7月,本書の目次)
What's New
<資料> 終わらない「対テロ戦争」−年表 2003年2月〜 (2022. 9. 29 更新)

【欧米でのIS関係のテロ】(2015年〜)

【トランプ政権の政策関連年表2017〜2021年】(2020大統領選挙,バイデン政権によるトランプ政権の政策変更を含む)

[イラク情勢] 【イラク戦争における犠牲者数】

「暴力事件」などによるイラク人の9月の死者52人(9/28まで)
・バグダッド東部サドルシティの市場で自爆攻撃により少なくとも35人死亡,60人以上負傷,ISが実行声明(2021/7/19)。
・キルクーク南西ラシャド地区の警察署へのISの攻撃により警官13人死亡,5人負傷(9/5)。
・サラハディン州とディヤラ州の境界地域のムタイビジャで警官隊へのISの攻撃により警官6人死亡,6人負傷(2022/7/20)。
・北部ダホク地域のリゾート地ザホでトルコ軍の砲撃により民間人9人死亡,22人負傷,政府がトルコによる深刻な主権侵害と非難,トルコ治安当局は砲撃はクルド労働者党(PKK)によるものと発表(7/20)。
[アフガニスタン情勢] 【アフガニスタン戦争における犠牲者数】
アフガニスタン戦争の経緯については『対テロ戦争の政治経済学』をお読みください。

2021年8月
・南西部ニムロズ州の州都ザランジをタリバンが「無抵抗」で制圧,中央政府への援軍の要請が無視されたためと州副知事公表(6日)。
・北部ジョージャン州の州都シェベルガンをタリバンが制圧,州副知事発表(7日)。
・タリバンが北部クンヅズ州クンヅズ,タカール州タロカン,サレポル州サレポルの州政府庁舎や警察本部などを攻撃し3つの州都を制圧(8日)。
・北部サマンガン州の州都アイバクをタリバンが制圧,州知事発表,タリバンの制圧した州都は計6都市(9日)。
・西部ファラー州ファラーと北部バグラン州プレクムリをタリバンが制圧,タリバンの制圧した州都は計8都市に増加,タリバンの支配下にある地域は全土の65%に達したとEU高官が発表(10日)。
・北東部バダクシャン州の州都ファイザバードをタリバンが制圧,タリバンの制圧した州都は計9都市に増加(11日)。
・南部カンダハル州カンダハルでのタリバンとアフガン軍の戦闘からアフガン軍が市街に撤退しタリバンが同市を制圧,西部ヘラート州ヘラートからアフガン軍が撤退し同市をタリバンが制圧,カブールから150qのガズニ州ガズニをタリバンが制圧,タリバンが制圧した州都は計12都市(12日)。
・米国務省報道官がアフガニスタンにおけるタリバンの支配地域拡大が首都カブールに迫ったため,米軍3000人規模を大使館職員などの国外退避の警備のためにカブール国際空港に派遣すると発表(12日)。
・イギリス軍が同国軍600人規模をアフガニスタン・カブール地域に展開し外交官などの国外退避を警備させると発表(12日)。
・イギリスのウォレス外相が米軍のアフガニスタンからの完全撤退について,タリバンの支配地域拡大をもたらし世界に脅威となるイスラム過激派の温床となる危険性があるとして批判,また,昨年2月のトランプ政権によるタリバンとの和平合意によって外国軍のアフガニスタンからの撤退以外の選択肢が無くなったと批判(13日)。
・南部ヘルマンド州ラシュカルガー,東部ロガール州プレアラム,北西部バドギス州カラエナウ,中部ウルズガン州タリンコット,中部ゴール州チャグチャラン,南部ザブール州カラート,をタリバンが制圧,タリバンが制圧した州都は全州都34都市のうち半数以上の18都市(13日)。
・北部バルク州マザリシャリフ,東部ラグマン州メーターラム,東部クナール州アサダバードをタリバンが制圧,タリバンが制圧した州都は21都市,南東部パクティカ州シャラナとパクティア州ガルデズにもタリバンが進軍(14日)。
・バイデン大統領がアフガニスタン在留の外交官らの国外退避の警備ために空挺部隊1000人規模の派遣を命令,アフガニスタン・カブールのアメリカ大使館の管理責任者が職員に対いて機密資料やプロパガンダ活動に悪用される可能性のある備品の廃棄を指示(14日)。
・東部ナンガルハル州ジャララバードをタリバンが無抵抗で制圧,カブール郊外の複数の地域にタリバンが進軍し包囲,タリバン報道官が全部隊に対してカブール入り口で待機し市内に入らないように指示したと発表,
カブール国際空港に米軍1000人規模が到着し欧米の外交官や市民の郊外退避を警備,
ガニ大統領ら政府と議会幹部がタジキスタンやパキスタンに退避し政権崩壊,
タリバンがカブールを制圧し政治部門代表のバラダル師が勝利宣言報道官が90年代後半の統治よりも穏健な政策を採用し女性の権利を尊重し外国人とアフガン人を保護する方針を発表(15日)。
・タリバンのムジャヒド報道官が記者会見を開いてアフガニスタン戦争の終了と外国への協力者や反タリバン勢力含む全国民への恩赦,イスラム法の枠内での女性の就業と学習を含む権利の尊重を宣言,全国民と国際社会に受容されるような政権の樹立に着手していることを発表,アフガニスタンが他国への攻撃基地として利用されることは許さないと言明(17日)。
・タリバン政治部門のシャヒーン報道官が女性に対してブルカ(全身を覆う衣服)の着用を強制しないことと初等教育から大学を含む高等教育を認める方針を発表(17日)。
・バイデン政権が連邦準備制度理事会(FRB)のアフガニスタン政府の外貨預金口座を凍結(17日)。
・国際通貨基金(IMF)がアフガニスタン政府の特別引き出し権(SDR)の利用や資金提供の停止すると発表(18日)。
・タリバンのアフガン政府との交渉担当者ハッカニ氏がカルザイ前大統領やアブドゥラ国家和解高等評議会議長と政権協議のために会談(18日)。
アラブ首長国連邦政府がアフガニスタンのガニ大統領を人道上の理由により受け入れていることを公表,ガニ大統領はタリバンがアブドゥラ国家和解高等評議会議長やカルザイ前大統領と行っている協議を支持すると発表(18日)。
東部ナンガルハル州ジャララバードで反タリバンの数千人規模の抗議行動へのタリバン戦闘員の発砲により3人死亡,10人以上負傷(18日)。
・イギリスのラアブ外相がアフガニスタンへの人道・開発援助を2億8600万ポンド(約3億9300万ドル)に倍増すると発表(18日)。
・サレハ第1副大統領が暫定大統領に就任すると宣言,各地でのイギリスからの独立記念日(1919年)の集会で反タリバンの抗議行動,カブール北方パンジシール州でマスード元国防相の息子がタリバンに対する武装闘争を宣言(19日)。
・北部パンジシール州の民衆蜂起部隊がバグラン州でタリバンを攻撃し同州の3つの地区を奪還,タリバン戦闘員40人死亡,15人負傷,前国防相代行発表(20日)。
・タリバンが公立と私立を問わず大学で女子学生と男子学生の共学を禁止するとのファトワ(イスラム法解釈)を命令(21日)。
・アフガニスタンのアメリカ大使館がカブール国際空港でISがアメリカ人を標的として攻撃する危険性により空港からの国外退避を一時停止するよう指示(21日)。
カブール国際空港北入り口付近でISの自爆攻撃と銃撃によりアフガン人79人死亡,100人以上負傷,米兵少なくとも13人死亡,15人負傷,ISが米軍とその協力者標的の攻撃と実行声明(26日)。
・タリバンが政権交渉相手のカルザイ前大統領とアブドゥラ国家和解高等評議会議長に自宅軟禁措置(26日)。
・東部ナンガルハル州で米軍がISの車両を無人機で攻撃しテロ攻撃作戦立案者1人を殺害したと発表,州知事は女性と子ども含む3人死亡,4人負傷と発表(28日)。
・タリバンのムジャヒド報道官がカブール国際空港での自爆攻撃はタリバンではなく米軍を標的としたもので,外国軍の撤退後はこのような爆弾攻撃のインセンティブは消滅するため,アフガニスタンにおいてどのような勢力による爆弾攻撃も他国の治安を脅かす事件は起こらないと主張(28日)。
カブール国際空港周辺地域で米軍の無人機の攻撃により大量の爆発物を搭載したISの自爆攻撃用自動車を破壊,ISメンバー1人死亡,米軍当局発表,アフガン政府当局者は民間人数人が死傷したと発表,9月17日に中央軍のマッケンジー司令官が誤爆により民間人10人(子ども7人と大人3人)を殺害したことを認める。(29日)。

9月
・南部カンダハル州カンダハルでタリバンが外国軍に対する勝利を祝う軍事パレード,米軍から押収した軍事ヘリ「ブラックホーク」の飛行や軍用車両を誇示(1日)。
・サレハ前第1副大統領が北部パンジシール州での反タリバン闘争を全土に拡大するよう呼びかけ,タリバン幹部がパンジシール州の反タリバン派に戦いは無意味であり冷静に平和裏に解決すべきだと呼びかけ(1日)。
・西部ヘラート州ヘラートで女性約50人が「教育・就業・安全は私たちの権利」とタリバンに対する街頭デモ(2日)。
・中央銀行がアメリカに対してアフガニスタンの外貨準備(94億ドル)の凍結を解除するよう要求(2日)。
・カタール・ドーハでタリバンが中東諸国の代表団と会談(2日)。
・北部パンジシール渓谷でタリバンと反タリバン勢力の戦闘,双方に多数の死傷者の情報(2日)。
・欧州連合(EU)がタリバンとの関係構築の条件として,テロの温床とならない措置を取ること,女性とメディアの権利の尊重,「包摂的で国を代表する」政府の樹立,援助の容認,外国人とアフガン国民の出国容認の遵守などを提示,これらの条件が満たされればカブールにEUの代表機関を設置することでEU加盟各国が合意したと発表(3日)。
・イギリスとドイツがアフガニスタンに対する援助を継続すると発表(3日)。
・カブールでタリバンがパンジシール州を制圧したとの情報によりタリバン戦闘員が発射した小銃による祝砲にいより17人死亡,40人負傷,東部ナンガルハル州ジャララバードで同様の発砲により17人死傷,タリバン幹部がパンジシール州制圧は誤報として発砲を非難する声明(4日)。
・カブールの大統領府近くでの女性の権利尊重を訴える抗議デモをタリバン特殊部隊が威嚇射撃や催涙弾により鎮圧(4日)。
・北部パンジシール州シュトゥル,パルヤン,キンジ,アブシャールの4つの地区をタリバンが制圧したと発表,反タリバン勢力はタリバンによる制圧を否定し,戦闘で多数のタリバン戦闘員が死亡したと発表(5日)。
・タリバンが経済の回復のために国内の投資家に対して安全を保障するとして投資の拡大を呼びかけ,タリバン報道官が国連人権機関代表と会談し人道・経済援助の継続が確約されたと発表(5日)。
・タリバン幹部がアフガン国民の国外退避のための4機の航空機の出発を凍結すると発表,理由は不明(5日)。
・タリバンのムジャヒド報道官が北部パンジシール州パンジシール渓谷を完全に掌握したと発表,反タリバン勢力と元治安部隊の「民族抵抗戦線(NRF)」は戦略拠点にはNRFの戦闘員が健在でタリバンに対する闘争は継続されると反論(6日)。
・タリバンが私立大学に通う女子大学生に顔のほとんどを覆うニカブの着用を命令(6日)。
・北部バルク州マザリシャリフで女性たちが新政府に積極的に関与すべきだと主張する抗議行動(6日)。
・タリバンが新政権の暫定閣僚名簿を発表,トップには国連の制裁対象とされているアフンド師,副首脳にタリバン共同創設者のバラダル師,国防省に故オマル師の息子ヤクーブ師など,女性閣僚は指名されず,タリバンの最高指導者アクンザダ師が新政権に対してシャリア(イスラム法)を守るよう命令(7日)。
・西部ヘラート州ヘラートでタリバンに対する抗議行動への発砲により2人死亡(7日)。
・カブールでニカブを着用した女性ら約300人が大学の講堂でタリバンの男女分離政策を支持する集会を開催(11日)。
・カブール国際空港近くで8月29日に米軍がISの攻撃計画阻止のために行なった無人攻撃機「リーパー」の空爆で国外退避を支援していた民間人10人が死亡していたことが住民の証言や防犯カメラの映像分析によって確認されたとNYタイムズ紙が報道(11日)。
・東部ナンガルハル州ジャララバードで数十人規模の女性がカブールなどでの女性の反タリバン抗議行動を批判しタリバン支持のデモ,タリバンが女性たちの教育や就労の権利の要求に対してイスラムの原理の基づく教育や就労の権利を保障(13日)。
・タリバン政権のムタキ外相代行が国際社会への関与を拡大する方針を発表(13日)。
・タリバンが国連の呼びかけで国際社会が12億ドルの緊急人道支援を約束したことについて謝意を表明,ムタキ外相代行が「完全に透明性のある形で困窮者に支援を届けるために最善を尽くす」と述べる(14日)。
・南部カンダハル州カンダハルで数千人規模の反タリバン抗議行動(14日)。
・タリバンがサレハ第1副大統領ら政府高官の自宅から1240万ドル相当の現金と金を接収し中央銀行に譲渡(15日)。
・タリバンが国連に対して新政府の国際社会の承認への助力と政権幹部のブラックリストからの削除を含む制裁の解除を要請(16日)。
・東部ナンガルハル州ジャララバードでタリバンの車両標的の爆弾攻撃など5件の爆破事件によりタリバン・メンバー1人含む4人死亡,19人負傷,カブール西部でIED攻撃により民間人3人負傷(18日)。
・カブールの女性問題省入り口でタリバンが同省を閉鎖したことに対する女性数十人規模の抗議行動,自由と平等は女性の権利でありタリバンは権利を保障すべきだと主張(19日)。
・タリバンのムジャヒド報道官が女性問題省の閉鎖について,前政権は女性の生活改善に何の貢献もしなかったとし,我々はイスラム法の下で女性のための協力で効果的な施政を設立すると述べる(19日)。
・タリバンのカブール暫定市長が市政府の女性職員に対して,仕事は男性への置き換えが不可能な場合のみに許されるとして自宅待機を命令(19日)。
・カブールでアフガニスタン中央銀行の米銀行口座(残高94億ドル)をアメリカ政府が凍結していることが経済活動や国民生活の危機をもたらしていると主張し,凍結解除を国際社会に要求する数百人規模の抗議行動(24日)。
タリバンのモタキ外相代行がタリバンは過去20年間で国際社会に脅威となったことはなく,不当な圧力をかけるべきではないと主張(24日)。

10月
・カタールのタニ副首相兼外相がタリバンに対して女性の扱いについてのシャリア(イスラム法)の誤った解釈をするべきではないとし,カタールはイスラム諸国の模範となると述べる(1日)。
・北部パルワン州チャリカールでタリバンがISの攻撃を撃退しIS戦闘員数人を殺害または逮捕し,戦闘でタリバン戦闘員4人が負傷したと発表,北部カピサ州でISがタリバンの車両を攻撃しタリバン・メンバー5人死亡,州当局発表(2日)。
カブールのモスク内でのタリバン報道官の母の追悼式中の爆弾攻撃により民間人12人死亡,ISが実行声明(3日)。
・東部ナンガルハル州ジャララバードでISメンバーの銃撃によりジャーナリスト1人とタリバン戦闘員2人含む4人死亡,1人負傷(3日)。
・北部クンドゥズ州の一部の高校でタリバンが女子生徒の就学再開を承認,一部の女性公務員の復職と未払い賃金の支払いを約束(5日)。
・カタール・ドーハでイギリスのジョンソン首相の特使がタリバン政治部門の幹部らと会談,アフガニスタンの人道援助やテロの温床とならないための方策などを協議(5日)。
北部クンドゥズ州クンドゥズのシーア派モスク内での自爆攻撃により少なくとも46人死亡,140人以上負傷,ISが実行声明(8日)。
・カタール・ドーハでタリバンとアメリカ政府の代表団の会談で,タリバンのモタキ外相代行がアメリカ政府に対してアフガニスタン中央銀行の外貨準備の凍結措置を解除するよう要求,タリバンの政治部門報道官はISの封じ込めでアメリカと協力することはないと明言(9日)。
南部カンダハル州カンダハルのシーア派モスク内外での4人の自爆攻撃と銃撃により63人死亡,83人負傷,ISが実行声明(15日)。

11月
・米WSJ紙が前政権の複数の諜報・治安部隊員がタリバンに抵抗するためにISISホラソンに参加していると報道(1日),タリバンのカリミ報道官が米WSJ紙の報道に対して,アフガニスタンでISがメンバーを招集することは完全に不可能と否定(2日)。
・カブールの軍病院での武装集団の自爆攻撃と銃撃により少なくとも25人死亡,50人以上負傷,ISが実行声明(2日)。
・カブール国際空港周辺地域で8月29日に米軍の無人機の誤爆により民間人10人(子ども7人と大人3人)が死亡した事件について,米空軍監察官が「悲劇的なミス」と認めつつ「法律にも戦争法にも違反していない」との調査結果を発表(4日)。
・北部バルク州マザリシャリフで女性人権活動家含む女性4人が航空機による国外退避への搭乗を誘う電話で誘拐され死体で発見(7日)。
・ハムラズ情報局報道官が8月中旬以降にISメンバーおよび協力者600人を逮捕し33人を殺害し,治安状況は日に日に改善していると発表(10日)。
・東部ナンガルハル州スピンガー地区のモスク内での爆弾攻撃により聖職者含む3人死亡,18人負傷(12日)。
・ブリンケン国務長官がカタールの外相と会談しカタールの在アフガニスタン大使館にアメリカの利益代表部を設置する合意文書に署名(12日)。
・カブール西部のシーア派居住のダシュテ・バラチ地区でミニバスに仕掛けられた爆弾攻撃により6人死亡,7人負傷(13日)。
・南部カンダハル州の4つの地区でタリバンが大規模なIS掃討作戦を実施しIS戦闘員3人死亡,10人以上逮捕,住民の証言で作戦により民間人3人死亡(15日)。
・カブール西部のシーア派居住地区のダシュテ・バラチ地区で自動車爆弾攻撃により民間人1人死亡,女性3人含む6人負傷,ISが実行声明(17日)。
・国連安保理でアフガニスタン駐在の国連特使がアフガン情勢について,ISがほぼ全土に勢力を拡大していると報告(17日)。
・タリバン政権の教育相代行が女性が教育を受ける権利に反対はしないがカリキュラムはイスラム法に基づくものに改変する必要があると発言(18日)。
・タリバン政権がメディアに対する指針を発表,女優の出演するTVドラマの放送禁止,女性ニュースキャスターのヒジャブの着用など(23日)。
・パキスタンのカーン首相がアフガニスタンに食糧や医薬品など2800万ドルの人道支援を実施すると発表(23日)。
・タリバン政権のアフンド首相代行が国民向けのテレビ演説で,「政治の腐敗や国際援助支援の私物化,治安の悪化などアフガニスタンが直面する問題を引き起こしたのはガニ前政権だ」と主張したうえで,「すべての国に内政干渉しないことを保証する。良好な経済関係を築きたい」と述べ,すべての国際援助団体に支援を要請(28日)。
・カブールでIED攻撃によりタリバン戦闘員含む少なくとも5人負傷,東部ナンガルハル州ジャララバードでタリバンの特殊部隊の作戦行動によりISメンバー3人死亡,タリバン戦闘員4人負傷(30日)。
・世界銀行がアフガニスタンへの人道援助5億ドル分の口座の凍結を解除すると発表(30日)。

12月
・カタール・ドーハでのタリバン外交団とアメリカ代表団との2日間の会談終了,タリバン側は95億ドルの外貨準備の無条件での凍結解除とタリバン指導者たちの制裁対象の解除を要求,アメリカ側は女子学校の再開や人権,総数者の権利の確保の進展を解除の条件とし合意に至らず(1日)。
・タリバン政権の外務省代表団がカタール・ドーハで16カ国(オーストラリア・カナダ・イギリス・EU・フィンランド・ドイツ・イタリア・日本・オランダ・ニュージーランド・ノルウェー・韓国・スペイン・スウェーデン・アメリカなど)の代表団とアフガニスタンの治安状況や人道支援などについて会談,タリバン側は緊急人道援助を要請(1日)。
・国連アフガニスタン支援団(UNAMA)がアフガニスタン中央銀行に人道援助として1600万ドルを振込(2日)。
・国連信任状委員会がアフガニスタン・タリバンとミャンマーの暫定政府の国連大使変更要求に対して決定の延期を議決(2日)。
・世界銀行が国連の世界食糧計画とユニセフ経由のアフガニスタン向け援助金2億8000万ドル分の口座の凍結を解除すると発表(2日)。
・カブールでタリバン政権のモタキ外相が中国の大使と両国の貿易や人道支援などについて会談(4日)。
・アメリカのウェスト特使がタリバンのアフンド首相代行が発した女性への婚姻の強制を禁止する布告を女性の権利の保護として評価するとともにさらなる権利の尊重を要請(4日)。
・国連総会でアフガニスタン・タリバンとミャンマーの暫定政府の国連大使変更要求を認めないことを決定(6日)。
[パレスチナ情勢] パレスチナ問題の経緯については『対テロ戦争の政治経済学』をお読みください。

2022年8月
・ヨルダン川西岸地区ジェニンでイスラエル軍が強制捜索によりパレスチナ武装組織イスラム聖戦のサアディ幹部を逮捕,抗議行動との衝突により聖戦メンバーの少年1人死亡(1日)。
・パレスチナ武装組織イスラム聖戦ガザ支部の指揮官が,ヨルダン川西岸地区ジェニンで1日にイスラエル軍がイスラム聖戦幹部1人を逮捕しメンバーの少年1人が殺害されたことに対して報復を宣言,イスラエル軍はガザ地区の封鎖を強化(4日)。
・ガザ地区でイスラエル軍の空爆によりイスラム聖戦幹部と5歳の女児含む10人死亡,55人負傷,ラピド首相が「差し迫った脅威に対する精密な対テロ作戦」と説明,ハマスは空爆を「犯罪」として「代償を支払わなければならない」と警告,イスラム聖戦はイスラエルに向けてロケット弾100発以上を発射(5日)。
・ガザ地区へのイスラエル軍の空爆によりジャバルヤ難民キャンプ近くで子ども4人含むパレスチナ人6人死亡,イスラエル軍はイスラム聖戦のロケット弾の誤爆によると発表,2日間のイスラエル軍の空爆によるパレスチナ人の死者は子ども6人含む24人,負傷者は203人,ガザ地区保健省発表,パレスチナ武装組織がイスラエルに向けて400発以上のロケット弾を発射,イスラエル側の重傷者はなし,イスラエル救急隊発表(6日)。
・国務省がガザ地区へのイスラエル軍の空爆でパレスチナ人が多数死傷していることについて,イスラエルの自衛権を完全に支持すると言明するとともに両者の衝突のさらなるエスカレーションを避けるよう強く要請(6日)。
・イスラエルとイスラム聖戦がエジプトの仲介で現地時間7日午後11時30分からの停戦に合意,5日からのイスラエル軍の空爆によるパレスチナ人死者は少なくとも子ども15人含む44人(7日)。

2021年5月
・エルサレム旧市街北方シェイク・ジャラーでパレスチナ人とユダヤ人入植者が衝突,イスラエル警察が鎮圧し7人を逮捕,入植者住宅建設のために,現住するパレスチナ人に立ち退きを要求し裁判所が認めたための衝突(6日)。
・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・スペイン政府がヨルダン川西岸地区でのイスラエルによる入植者住宅の建設拡大を停止するよう強く要請(6日)。
・エルサレム旧市街のアルアクサ・モスクで数千人規模のパレスチナ人の投石などの抗議行動に対するイスラエル警察のゴム弾や音響手榴弾による鎮圧行動によりパレスチナ人205人負傷,警官18人負傷,ヨルダン川西岸地区でイスラエル兵の発砲によりパレスチナ人2人死亡,1人負傷,イスラエル軍はパレスチナ人が治安部隊に発砲したための自衛措置と説明(7日),これ以降,エルサレム,ヨルダン川西岸地区でパレスチナ人の抗議行動に対するイスラエル軍・警察の鎮圧行動によりパレスチナ人多数死傷。
・ガザ地区からハマスがパレスチナ人の抗議行動に対するイスラエル側の暴力への報復として,イスラエル南部やエルサレムに向けてロケット弾100発以上を発射,物的損害のみ。イスラエル軍がガザ地区を報復空爆し子ども9人含む少なくとも20人死亡,65人負傷(10日),
これ以降,ガザ地区に対するイスラエル軍の軍事行動とハマスなどによるイスラエルに向けてのロケット弾攻撃の応酬が激化,10日以降19日までのパレスチナ人の死者は少なくとも子ども63人と女性36人含む228人,イスラエル側の死者は兵士1人と子ども2人含む12人(詳細については年表をご覧ください)。
・国連安保理がイスラエルとパレスチナの攻撃と報復の応酬の激化を受けて緊急会合を開催,民間人の保護を求める声明草案に対してアメリカがイスラエルの自衛権を理由に声明採択を拒否(16日)。
・バイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し,イスラエルとパレスチナの停戦を支持すると表明,ネタニヤフ首相はテロリストを標的の軍事行動であり必要な限り継続する意思を表明,ブリンケン国務長官がイスラエルの自衛権を認めつつ「イスラエルは民間人の犠牲を回避するため最大限の努力をする大きな責任がある」と表明(17日)。
イスラエルとガザ地区のハマス・イスラム聖戦がエジプトの仲介で停戦に合意,6日にエルサレム旧市街シェイク・ジャラーでユダヤ人入植者住宅の建設のために裁判所がパレスチナ人住民に立ち退きを命じたことに対するパレスチナ人の抗議行動とイスラエル治安部隊の鎮圧をきっかけに始まったイスラエルとパレスチナ相互の報復攻撃の応酬によるガザ地区とヨルダン川西岸地区のパレスチナ人の死者は子ども69人と女性40人含む259人,負傷者は8011人,イスラエル側の死者は兵士1人と子ども2人含む12人(20日)。

2019年12月
・米連邦議会下院本会議でパレスチナ問題について2国家共存がユダヤ人国家としてのイスラエルの存続とパレスチナ人の合法的な願望を満たすための唯一の解決策であるとの決議を賛成226,反対188で採択(6日)。
・国連中東担当公使がヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地と東エルサレム地区でイスラエルが過去3年間に22,000軒の住宅建設を承認したと発表,グテーレス事務総長は安保理で入植は法的な効力がなく,ただちに完全に停止されねばならないと宣言(18日)。
・国際刑事裁判所(ICC)がパレスチナ自治区でのイスラエルの戦争犯罪について正式な捜査を開始する方針を発表,イスラエルのネタニヤフ首相が「政治的駆け引きの道具だ」と批判,ポンペオ米国務長官が断固として反対すると発表(20日)。

[論文・分析]

「対テロ戦争」は何をもたらしたのか(2017/3/25)
『薄氷の帝国 アメリカ ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』 ( 出版案内と序論 12/1/25公開)
イラク戦争前史 ― パレスチナ問題(09/1/31掲載)
「イラク情勢メモ」:イラク情勢の「改善」をどう見るか?(09/1/25掲載)
Collateral Damage ― “対テロ戦争 War on Terror”の非人間性(2009/1/20掲載)

はじめに

〔共同研究開始の経緯〕

2003年2月,アメリカによる対イラク攻撃が迫っている危機的状況のなか,社会科学研究者の有志36人が呼びかけ人となって,新聞に「意見広告 社会科学研究者は訴える」を掲載する運動をはじめました。
国際法や国際世論を無視した先制攻撃と日本の加担への反対を世論に訴えることが目的でした。その運動の一環としてウェブ・サイトを開設することになり,呼びかけ人の依頼により,わたしがサイトの作成・管理にあたることになりました。
そこで2月中旬に「研究者は訴える」と題したウェブ・サイトを開設し,賛同者名簿の作成,運動の進展・拡大にともなう更新,読者から送られてくるメールへの対応などを担当しました。
さらに3月17日,ブッシュ大統領の最後通告演説をうけて,呼びかけ人による「軍事行動即時停止要求の声明」をウェブ・サイト上で発表し,「声明」への賛同者のメールによる受付をはじめました。
しかし3月20日,世界的な反戦運動の盛り上がりをあざ笑うかのように米英軍のイラク攻撃が強行されました。
(この意見広告や声明,運動の経緯については「研究者は訴える」ウェブ・サイトをご覧ください。また,最後通告演説直後にウェブ上に公開した私見はこちらをご覧ください。)
わたしはこの「イラク戦争」の経過の記録をはじめるとともに,わたしの研究会(ゼミナール)の学生(新4年生)に,この戦争の記録と背景や実態の分析を2003年度の共同研究のテーマとしてはどうかともちかけてみました。わたしのゼミの専攻分野が政治経済学・現代資本主義論であり,第2次大戦後の資本主義を世界史的視野から理論的・実証的に分析することが基本テーマであったからです。彼らも現在進行中の深刻な問題をリアルタイムで取り扱うことに非常に興味を持ってくれ,4月から参加した新3年生の同意も得て,「イラク戦争を考える」共同研究が出発しました。

〔分析視角〕

共同研究を始めるためには分析視角を共有することがまず大切です。
わたしたちは,「イラク戦争」を単に時論的にではなく,
1. 多面的・歴史的視点から考察すること,
2. 自分たち自身の問題として考えるため,また戦後日本経済をゼミのテーマの1つとしていることから,国際社会と日本との関係・日本の「戦争」への対応を考察の柱の1つとすること,
3. 安易に独りよがりの結論を下すのではなく,考えるための材料を可能な限り集めて取捨選択して提示すること,
を基本方針としました。
(1) より具体的には,この「戦争」を9.11同時多発テロに起因する問題としてではなく,あるいは少しさかのぼって1991年の湾岸戦争前後に根源がある問題としてでもなく,第2次大戦後の国際関係や中東地域の複雑な政治・軍事関係を考慮しなければ本質が理解できない問題として分析するということです。
もちろん,中東問題の焦点であるパレスチナ問題の起源は紀元前にあります。そこまでさかのぼらなくとも,現代につながるパレスチナ問題の複雑化*の出発点は,第1次大戦中,イギリスがパレスチナの地にアラブ人とユダヤ人双方に独立国家建設を認める矛盾した政策(フサイン・マクマホン協定とバルフォア宣言)をとったこと,いわゆるイギリスの「二枚舌外交」にあります。
*現代のパレスチナ問題の起源と経過については,「イラク戦争前史―パレスチナ問題」をご覧ください。
(2) ただ,イスラエルとアラブ諸国との対立にしてもイスラム圏諸国間関係にしても,今回の「イラク戦争」につながるような問題の複雑化を規定する要因の大部分は,第2次大戦後の特殊な国際関係にあるとわたしたちは考えました。
第2次大戦後の特殊な国際関係においてもっとも重視すべき要素は,戦後まもなくはじまった米ソ冷戦です。アメリカを中心とする西側資本主義陣営とソ連を中心とする東側社会主義陣営との対立はグローバルな広がりを持ち,政治・軍事・経済・社会などさまざまな分野で戦後世界を規定する重要な要因となりました。
40年以上続いた冷戦期間中,米ソがそれぞれ自陣営の支配圏の維持・拡大と強化のために,世界各国の政権や諸勢力に政治・軍事・経済的に影響力を行使しました。
国際的な紛争を平和的に解決する目的で設立された国際連合も,米ソ間の利害の対立する問題については機能不全に陥りました。
日本は敗戦から6年以上もアメリカ主導の占領下に置かれ,諸制度の急激な改革が行なわれました。日本の独立と同時に結ばれた日米安保条約(日米軍事同盟),その後も続く政治的な対米依存(従属),日本経済の復興や急激な経済成長も,冷戦体制のもとでのアメリカとの関係によって根本的に規定されています(これはわたしのゼミで扱う基本テーマの1つです)。
中東地域も米ソ対立・覇権争いの変遷に翻弄された地域です。
(3) 冷戦は,時に朝鮮戦争やベトナム戦争のような地域的な(代理)戦争として,熱い戦争として現実化しましたが,米ソが直接戦うことはありませんでした。しかし,米ソの熾烈な軍拡競争とそれぞれの支配圏の維持・拡大のための軍事的・経済的な介入は,両国にとって実際の戦争を戦うのと同様の重い負担となりました
象徴的なのがアメリカのベトナム戦争への介入とソ連のアフガニスタン侵攻です。
アメリカは1965年からベトナム戦争に本格的に介入をはじめました。介入当初の予想に反して,南ベトナム解放民族戦線と北ベトナムの抵抗によって戦闘は長期化・泥沼化していきます。アメリカは,ピーク時で年間288億ドル(総額1,067億ドル)の巨額の直接戦費と54万人の兵力を投じ,核兵器以外のあらゆる近代兵器を使用しました。死者だけでも,アメリカ兵約4万6000人,南ベトナム軍や韓国軍などの援助軍約19万人,北ベトナム・解放戦線軍92万人,民間人120万人といわれています。負傷者や後遺症に苦しむ人はさらに膨大でしょう。
これだけの犠牲を払いながら勝利できず,アメリカ国内や世界的な反戦運動の高まり,後述の経済的負担の重さなどから,1973年のパリ協定でアメリカ軍の完全撤退となりました。
アメリカは軍事的に敗北しただけでなく,経済的にも深刻な影響を受けました。ベトナム戦争はアメリカの財政赤字を膨大なものとし,インフレーションに拍車をかけ,産業の国際競争力を低下させ,国際収支の赤字を悪化させました。その結果,基軸通貨であるドルに対する信認が低下してドル危機が深刻化し,アメリカは1971年に金とドルの交換を停止せざるを得なくなります。国際経済は混乱し,固定相場制が維持できなくなって変動相場制に移行します。第2次大戦後の資本主義諸国の経済復興と成長の枠組みであったIMF体制が崩壊し,世界経済は1970年代の長期停滞に入っていきました。
ソ連は1979年末にアフガニスタンの内戦に軍事介入しました。反政府派はパキスタンの支援をえながらゲリラ活動で対抗し,アメリカも武器の供与など反政府派を援助して,戦闘は長期化・泥沼化していきました*。ソ連は10万を超える兵力を投入しながら勝利できず,多数の人的損害(15,000人の戦死者・37,000人の負傷者といわれる)をこうむり,経済的にも大きな負担となったため,1989年2月,ゴルバチョフ政権のもとで撤兵が行なわれました。
*サウジアラビアの富裕な家に生まれたオサマ・ビン・ラーデンがソ連と戦うためにアフガニスタンに入り,アラブ義勇兵の募集や訓練に資金提供などで重要な役割を果たしました。そのために作られた基金がアル・カーイダ(al Qaida)です。
この時期にはオサマは親米でしたが,ソ連のアフガニスタンからの撤退後の90年代に反米に転じて,アル・カーイダは反米武装組織に変わっていきます。
(4) 米ソ両国とも冷戦とそれに付随する地域戦争の負担に耐えられず,1989年のマルタ会談によってようやく冷戦の終了が公式に宣言されたのです。アメリカはレーガン軍拡の影響も加わって80年代後半に純債務国となったことに象徴されるように経済的に衰退し,ソ連は経済的困難ばかりか政治的混乱も極限に達し,国自体が消滅してしまいました。
第2次大戦後の戦争(冷戦・熱戦)は,戦場となった国・地域を荒廃させたのはもちろん,正義のない戦争を強行した米ソ両国をも多様な意味で荒廃させてしまったのです
*。
*戦後資本主義体制において冷戦のもつ意味については,わたしの「冷戦とアメリカ経済」『薄氷の帝国 アメリカ ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』をお読みください。
さらに,冷戦中に米ソが影響下に置いた各国や地域・諸勢力に対して行なった政策は,それら国民や民族の自立・民主化のためにではなく,自陣営の安全保障と支配圏の維持・拡大と強化を第1の目的としていました。両国とも民主的国家や勢力だけでなく,独裁政権や軍事政権であっても自国にとって有用であれば軍事・経済援助やその他の支援を行ない,支配下に置いたのはその現われです。
冷戦終結後はアメリカもソ連(ロシア)もその影響下に置いていた国や地域の多くに対して,そうした支援と支配を続ける必要もその余裕もなくなりました。いわば,冷戦体制の維持というタガが外れたのです。
冷戦中に米ソ両国の援助と支援を受けた体制の下で抑圧され続けてきた人々や民族は,その体制に対する強い抵抗意識だけでなく,強い反米意識・反ソ(反ロ)意識を持ったのは当然でしょう。米ソの影響力が低下し,既存の支配体制が弱体化すれば,そうした意識を行動として現実化させようとする動きが出てくることも当然でしょう。
1990年代以降,世界の各地で民族紛争や地域紛争がいっきに噴出しはじめたこと,アメリカやロシアなどに対するテロ(実行者にとっては抵抗運動)が頻発するようになったことは,こうした背景のためだと考えられます。
(5) 他方,冷戦終結は国際紛争の調停機関としての国連の存在意義と機能を高めるはずです。アメリカもロシアも一国だけで国際紛争を封じ込める能力も必要性もなくなったからです。また,国連のシステムにはさまざまな弱点があるとしても,現実的に国際紛争を調停し解決する多国間の協議・協力機関は国連しかないからです。
(6) 以上のような認識にたって,わたしたちは「イラク戦争」を分析していこうと考えました。
そこで,以下のような論点と課題を設定しました。
1. 冷戦中および冷戦後のアメリカの中東政策
2. アメリカの政策の中東地域への影響
3. アメリカのイラク攻撃の経緯:単独行動主義への傾斜
4. 冷戦中および冷戦後の国連の役割
5. 冷戦中および冷戦後の日米関係
6. イラク戦争の原因についての諸説の検討
さらに,
7. イラク戦争の推移を記録し,分析視角(4)の認識からこの戦争が容易には「終わらない」性格を持っていることを明らかにすること
8. アメリカにとってのベトナム戦争,ソ連にとってのアフガニスタン侵攻のように,イラク戦争は現代世界にどのような影響を与え,世界史の中でどのような意味を持つことになるのかを考察していこうと考えました。
2003年度は,これらの一部(1〜6)について延近が論文構成を提案し適宜コメントしながら,延近研究会12期・13期の学生が論文にまとめ,三田祭と延近研究会OB/OG会でとして発表しました。しかし,問題の難しさと幅の広さから論文としてはかなり未消化なものでした。
2004年度は,13期と14期の学生がそれらの改良と7,8の作業を行ない,延近提案の論文構成とコメントにより「イラク戦争のアメリカ政治・経済への影響」を中心として論文にまとめ,三田祭と延近研究会OB/OG会で発表しました。
当初は論文本体と要約をこのウェブサイト上に公開する予定でしたが,インターネット利用者の著作権軽視の状況*にかんがみ,公開の形式等を検討中です。
*このウェブサイト上に公開しているわたしの著作が他大学の学生によってコピーされてレポートとして提出されているばかりか,某大学の教員(非常勤)が,出典を明示せずに無断で教材として配布していたとの情報を当該大学の学生から連絡を受けたことがあります。
「イラク戦争を考える」を読みたいという希望も多く,公開を検討してきましたが,公開するためには論文としての完成度を上げ,現時点までのイラク情勢や「対テロ戦争」の推移についても盛り込んだものを公開したいと考えています。現在,一般公開に向けて私が全面的に改訂作業中です。その一部は論文ドラフトとして順次掲載していく予定です。(2009年1月31日記)
「イラク戦争を考える 第1部」については,2003年度の論文作成時点の原稿の修正は最低限にとどめたものをPDFファイルで公開しました。ファイルのダウンロードおよび印刷はできますが,著作権保護のために,文章や図表などのコピーはできないようなセキュリティ設定としてあります。また背景にわたしのニックネームが透かしとして入っています。
イラク戦争を含む「対テロ戦争」と「新帝国主義」戦略についてのわたしの見解は,別に「薄氷の帝国 アメリカ」と題する論文として公開しています(2009年12月30日記)。
「薄氷の帝国 アメリカ」は,大幅に加筆修正して,2008年秋以降の世界的金融・経済危機の構造を論じた著書『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』として,御茶の水書房から2012年2月に出版いたします。本書の構成と序論はこちらでご覧ください(2012年1月25日追記)。
「イラク戦争を考える 第1部」(pdf. 3.6MB)
「薄氷の帝国 アメリカ」

(延近 充)

各年度の論文構成は次のページをご覧ください。
「イラク戦争を考える」第1部(2003年度)
「イラク戦争を考える」第2部(2004年度)
7.のための資料として作成中の年表は次のページをご覧ください。
イラク戦争(対テロ戦争)関連年表 2003年2月〜
原則として複数のソースで確認できた事実のみを分類・収集して作成。
日付は時系列参照の便宜のため日本時間で表示し,必要に応じて現地時間を併記した。
現在,ほぼ毎日更新中です。
8.の考察のために作成している,イラク情勢の現状に関する私のメモはこちらのページをご覧ください
イラク戦争における
犠牲者
アフガニスタン戦争
における犠牲者
原油価格の推移
2003年〜
日米株価の推移
2008年9月〜

[更新履歴]

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延近研究会 共同研究メンバー
第12期 植村昌史,大倉由貴子,乙武郁子,菊地雅子,岸田昌子,高石裕介,田川亮輔,永田大介,
村上創太,山口顕
第13期 安部雅隆,石井宏太郎,和泉ちひろ,小島健一郎,杉井良子,関谷直人,関屋文彦,
長江崇将,福市年成,堀田佳秀,山口功,山本真澄,吉田一陽
第14期 井上允之,内川浩樹,内田健介,栢島由佳里,今野聡,田中広美,中尾俊明,西山浩平,
福原早苗,松崎禎夫,望月さやか,山崎理絵,渡辺陽介
Iraq Body Count(民間人死亡者)

【関連情報・リンク】

対イラク戦争と日本の加担に対する研究者有志の反対声明(2003.3.20)
Column アメリカの対イラク最後通告と日本の対応について(2003.3.18)
研究者有志による意見広告「アメリカの対イラク先制攻撃と日本の加担に反対します」(2003.2.27)
ドキュメンタリー映画「アメリカばんざい - crazy as usual -」
イラクで死んだ兵士の家族,イラク派遣を拒否した兵士,ベトナム・アフガニスタン・イラクからの帰還兵,現役海兵隊員へのインタビューや海兵隊員養成のブート・キャンプの取材などで構成されたドキュメンタリー映画。2008年7月26日から公開。私も協賛しています。
「リダクテッド 真実の価値」
2006年にイラク・サーマッラで起きた米兵によるイラク人少女レイプ殺人事件を題材としたブライアン・デ・パルマ監督の作品。フィクションとインターネット上で公開されている実際の映像をミックスして,Redacted−情報の事前削除・編集:アメリカの情報操作・報道規制や偏向報道を描いている。10月25日から公開。この映画のサイトではイラク研究者の酒井啓子氏を講師とするシンポジウムなどの情報あり。
解放軍として歓迎される期待が裏切られ,泥沼化するイラク戦争下,「テロ」を恐れて心理的に追い詰められる米兵たち。イラクで何が起こっているのか,イラクに派兵したアメリカ社会では何が起こっているのかを考えさせる映画。
イラクと同様に泥沼化するアフガニスタンへ日米同盟のために自衛隊派遣を模索し続ける日本政府。
これは「ひとごと」の話ではない。無知は免罪符とはならないのである。

「対テロ戦争」の最前線の実態を知るための手がかりとなるこの2つの映画についての私のコメントをアップしてあります。

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