第1章 点字の表記方法とその変遷


 点字は、視覚障害者が効率的に読み書きで きる文字である。このことは、乳幼児期からの視覚障害者にとってはもとよりのこと、中途 視覚障害者にとっても共通している。そのため、点字表記法の大系を考える際には、読み書 きの効率性を高めるという観点を常に念頭におく必要がある。一方、社会生活は視覚障害者 だけで行っているわけではないから、多くの人々と文字によるコミュニケーションを行う 必要がある。その為には、点字表記法の大型は、普通の文字の表記法の大系との共通性が 問われることとなる。

 そこで、本章では、点字読み書きの効率性と 普通の文字との共通性を目指した点字表記の改善とその課題を歴史的にまとめてみた。そのうえで、それらの裏付けとなる過去の論述や資料を引用し配列した。

 2.の点字表記法大系化の過程では、まずその舞台となる日本点字委員会設立の基となった「日本点字研究会会報19号(最終号)」に掲載した論文を取り上げた。また、点字出版所や点字図書館がそれぞれ独自に決めていた点字表記法の統一を図ったその経緯と内容が概観 できるように、「日本点字表記法(現代語編)」の目次と前書き及び後書きを引用した。次いで、点字表記法の大系化を促す為に論述した「日本の点字―その過去、現在、未来−」を取り上げた後、「改訂日本点字表記法」の抜粋を引用することによって、その内容と改訂の経緯を紹介した。

 3.の点字表記に関する問答欄では、日本点 字委員会広報「日本の点字」の8号〜10号に取り上げた三つのテーマを引用し、「改訂日本 点字表記法」で変更された事項のうち、最も質問が多かった項目について、理論的根拠を明 らかにした内容を紹介した。

 4.「日本点字表記法(1990年版)」の発行 まででは、「現代仮名づかい」の改訂の審議を行っていた国語審議会に対して、歴史的かな づかいの残滓を整理して表音式かなづかいの原則に徹するべきであるという日本点字委員会の立場から送った意見書と要望書を引用した。これによって、国語表記の合理性を確立 し、小学生をはじめとする日本国民の国語表記の誤記を少しでも減らすと共に、点字表記 との共通性を求めた日本点字委員会の意図が理解されると思う。さらに、「日本点字表記法 (1990年版)」をやや多めに抜粋引用したが、これによって改訂の経過と理論的根拠が理解さ れると思う。

 5.統一英語点字コード制定の動向を最後 に引用したが、これによって現在英語が母国語の英語圏で行われている、英語点字の総合的な表記法の改訂の動向の概略を理解してもらえると思う。


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