1.2.2 日本点字表記法(現代語篇)抜粋

日本点字委員会


内容

  1. まえがき
  2. 内容 日本点字表記法(現代語篇)の目次
  3. あとがき

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 日本点字表記法(現代語篇)の概略を紹介するために、「まえがき」と内容項目および「あとがき」を以下に引用する。

(1)「まえがき」

 点字表記法の統一と体系化を求める声は近年次第に高まり、日本点字委員会内部の気運も熟してきたので、点字制定80周年を機会に15・6項目の相違点を克服し、合意に達して、ここに日本点字表記法現代語編を出版することとなった。

 点字表記法の体系化を図る場合、最も重要なことは一般の国語表記法との対応である。盲人も閉ざされた社会に生活してはいないから点字も仲間うちの単なる暗号であってはならない。点字は、まず一般から盲人への知識の伝え手であると同時に、盲人が一般に意思を伝える手段でもある。その際一般の人の助力で点訳や普通字訳を行なう場合でも、盲人自身がカナ文字タイプライターで書く場合でも点字と普通文字との間で表記法の対応が単純、明確に行なわれている必要がある。このことは将来読書機械を開発する場合はもとよりのこと、当面盲児の国語の学力を高めるためにも必要である。

 一方これと同時に、点字は、読みやすく、書きやすく、わかりやすく、更に覚えやすくなければならない。このように表記法の対応と読み書きの能率の両面を満足させることが体系化の今日的な課題である。

 今回は、相違点の解消に重点があったため全体として従来の表記法の集大成にとどまっているけれども、結果として一般との対比は明確になっている。すなわち、かなづかいについては表音式の体系の基礎の上に語意識の概念を導入して現代かなづかいとの共通点や相違点を明記している。わかち書きについては、普通小学校の低学年の教科書に用いられている文節わかち書きと基本的に対応しているので、これを本則とし、その他を例外として取り扱っている。更に、くぎり符号については、一般とほとんど対応している。

 このような点字表記の体系のもとに書かれている本書のうち、第一章の第三節点字の記号は一覧表の役割りをもかねており、第二章点字の規則は、遵守すべき表記の基準を示している。また第三章では、書式の参考例を、「点字表記の用例」では表記の実例を例示している。

 本書は、点字使用者はもとよりのこと、学校・図書館・出版所などの職員や点訳者などいわゆる点字関係者の表記の基準として活用されるであろう。なお、これにもとづいて各種の入門書や指導書が作成されて、正しい表記法の普及がなされることは望ましいことである。

 この点字表記法は、盲学校小学部の教科書をかわきりに1971年4月から各方面で実施されることとなるであろう。

 最後に本書の出版が日本盲人福祉委員会の援助でなされたことを感謝をもって付記する次第である。

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(2)内容

第一章 点字の概説

第一節 序説

  1. 点字の必要性
  2. 点字に関する用語
  3. 点字の読み書きの要点

第二節 点字の略史

  1. 六点点字の考案
  2. 日本点字の考案
  3. 日本点字表記法の変遷

第三節 点字の記号

  1. 点字の構成とブライユの点字配列表
  2. 国語音
  3. 外来音
  4. くぎり符号など
  5. 数字など
  6. 英語のアルファベットと符号
  7. 万国音標文字

第四節 表記法の概要

  1. 語の書きあらわしかた
  2. 語のくぎりかた
  3. 文の構成と符号
  4. 行がえと行移し

第二章 点字の規則

第一節 語の書きあらわしかた

  1. 「かなづかい」の原則
  2. 五十音など
  3. 促音
  4. 長音
  5. 外来語
  6. 外国の地名・人名など
  7. 数字を含むことば
  8. 数・助数詞および数式
  9. アルファベットと外国語
  10. 万国音標文字
  11. 音や語のくりかえし

第二節 語のくぎりかた

  1. 「わかち書き」の原則
  2. 名詞
  3. 用言
  4. 接辞
  5. 助詞
  6. 助動詞
  7. 形式名詞
  8. 補助用言
  9. 副詞
  10. 連体詞
  11. 接続詞
  12. 感動詞

第三節 文の構成と符号

  1. 文のくぎり
  2. 語句のくぎり
  3. 文や語句の引用および強調
  4. 語句の説明
  5. 欄外注記など
  6. 語句の対照
  7. 補足説明と省略
  8. 語句の範囲と接続

第四節 行がえと行移し

  1. 行がえ
  2. 行移し
  3. 行末のつなぎ
  4. 2行にまたがってはならないもの
  5. 行頭に書いてはならない符号
  6. 行末に書いてはならない符号

第三章 書きかたの形式

第一節 見出し・表題など

  1. 見出し
  2. 数字の序列
  3. 書きながしの小見出し
  4. 箇条書き
  5. 目次
  6. ページ
  7. 欄外見出し
  8. とびら

第二節 本文

  1. 段落
  2. 短歌
  3. 俳句および川柳
  4. 脚本

第三節 書簡類

  1. 手紙
  2. 公文書
  3. 日記

第四節 その他

  1. 出納簿
  2. 数の略記

点字表記の用例

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(3)「あとがき」

 1966年7月、日本点字研究会が解散し全日本盲教育研究会点字部が発足した機会に全日盲研と日盲社協が委員を推選し、ほかに若干の学識経験者を加えて日本点字委員会が成立し鳥居篤治郎委員を初代の会長に決めた。しかし、その後財源の見通しがつかず、いわば開店休業状態であったが、点字制定80周年を迎えるにあたって、日本点字表記法現代語編の体系化をはかり出版を行なうこととした。

 1970年7月、東京で第2回委員総会を開き相違点の解消に努めた。学識経験者の本間一夫委員、全日盲研代表委員の永井昌彦(京都)・折本盛美(大阪府)・阿佐博(付属)・木塚泰弘(久我山)および松田功(鹿児島)の代理として尾関育三(付属)、日盲社協代表委員の宮田信直(ハウス)・高橋実(点毎)・肥後基一(東京)・下沢仁(日点)・尾崎銀治(愛盲)、事務局員の清水友次郎(付属)・丹羽清雄(日点)などの各委員のほか田中徹二氏など若干のオブザーバーも出席して、長音と小数点の問題を除いてすべて合意に達した。また、とりまとめには肥後・下沢・阿佐・木塚の4名の小委員会があたることとした。

 その後、千葉で開かれた全日盲研点字部会をはじめ、各地で若干の意見聴取を行なったのち、第3回の委員総会を8月に大阪で開いた。この会から学識経験者として日盲連を代表して大野加久二日盲連副会長、全国校長会を代表して中林左近校長会長(当日は代理として本間伊三郎大阪府盲教頭が出席)が加わって、かなづかいやわかち書きに関する小委員会の原案について二日間検討した。

 その後、国語審議会担当の文化庁国語課および特殊教育課程審議会の協力者会議などでご意見をうかがったのち、小委員会で原案を作成した。10月には主として執筆を担当した木塚委員の大阪滞在中に宮田・高橋・永井の各委員をはじめ、旧日点研の事務局担当の馬場・田中両氏および疋田・森両氏をはじめとする日本ライトハウスの職員をまじえて持ちまわりの検討会を開いた。

 更に東京の小委員会で再度検討した結果、長音についても本則と許容事項を明確にすることができた。しかし、小数点については、数学記号の体系との関連があるので、今回結論をうることはできなかった。今後、外国語点字の指導書や古語の表記などとともに検討する予定である。

 その後、1月末から日点で点字製版を開始し、各委員が検討を行ない、都立葛飾盲学校小林一弘教諭の協力で普通字訳を行ない、野口印刷で活字版を印刷した。

 この間、9月に全国校長会・全日盲研および日点委が連名で文部省の初中局長に要望書を提出し、これが受け入れられて教科書への採用が決定された。

 本書の出版を前に鳥居篤治郎会長を失ったが、鳥居会長の最後の文章を点字表記の用例として掲載し多年にわたる功績を記念した。

1971年3月 小委員会

出典:「日本点字表記法 現代語篇」抜粋(まえがき、あとがき)、日本点字委員会、1971年3月.


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