「対テロ戦争」における民間人誤射・誤爆・過剰防衛事件(2015年)

「誤射・誤爆」事件においては,死傷者が民間人(非戦闘員)であるか反政府・反外国軍武装勢力であるか,外国軍当局と現地政府や地域住民の主張が異なることが多い。下記では「誤射・誤爆」の可能性が高いと思われる事件を集計した。また,これらはウェブ上の主要メディアの報道や国際機関等の発表を集計したに過ぎないため,現実には,この種の事件はさらに多数発生していると思われる。
下記の表が示すように,“対テロ戦争”において,「誤射・誤爆・過剰防衛」やコラテラル・ダメージ(軍事行動に付随する犠牲)によって,多数の民間人死者が発生している。この問題については,08年末からのイスラエルのガザ地区攻撃にともなう多数の民間人死者発生の問題とあわせて,私が論じたCollateral Damage ― “対テロ戦争 War on Terror”の非人間性をお読みください。
イラクにおける2013年末からのアルカイダ系武装勢力(イラクとレバントのイスラム国ISIL,2014年6月から「イスラム国」)に対するイラク政府の「対テロ戦争」における民間人の犠牲者については,イラク軍の無差別砲撃・爆撃による民間人犠牲者発生事件をご覧ください。
“対テロ戦争”の原点とも言うべきパレスチナ問題の起源と経過については,「イラク戦争前史― パレスチナ問題」をご覧ください。
また,「対テロ戦争」の最前線を知るために:アフガニスタン戦争・イラク戦争という「対テロ戦争」の最前線の状況と日本の関与をどう考えるかについて,映画を素材としたエッセイ集,「アメリカはなぜ戦争をし続けるのか」(ドキュメンタリー映画「アメリカばんざい-crazy as usual」),「無知は免罪符とならない」(映画「リダクテッド 真実の価値」)もご参照ください。
国・地域 イラク(IS含む) アフガニスタン その他
種別* 検問等 誤射・誤爆 検問等 誤射・誤爆 検問等 誤射・誤爆
民間人死者数** 787 30 140
* 「検問等」:検問所における検問や軍部隊・車列に接近した民間人に対して,軍の指示や停止命令に従わなかったとして,兵士が自爆攻撃等を誤認して民間人に発砲した事件等。
「誤射・誤爆」:武装勢力掃討作戦や武装勢力の攻撃に対する応戦等において,民間人が死傷した事件。イスラエル軍のガザ地区攻撃においては意図的と思われる民間人殺傷事件を含む。
** 現地治安部隊員や警官の死者を含む。

日付は現地時間

月日 イラク(IS含む) アフガニスタン その他
2月18日 モスル北部の住宅地域への有志連合国軍のミサイル攻撃により民間人家族9人死亡。(NINA)
2月19日 アンバル州北部ハディサのモスクで有志連合国軍の空爆により民間人礼拝者15人死亡。(NINA)
2月24日 モスルの住宅地域での有志連合国軍の空爆により民間人14人死亡。(NINA)
バグダッド北郊サバアブール地域でイラク軍とISとの戦闘中にイラク軍の発射したカチューシャ・ロケット弾2発が着弾し民間人3人死亡,13人負傷。(IN)
2月26日 アンバル州西部カイム地域で有志連合国軍の空爆により民間人9人死亡,ISメンバー29人負傷。(R)
アンバル州西部ルトバ地域で有志連合国軍の空爆により民間人11人とISメンバー6人死亡。(R)
モスル地域での有志連合国軍の空爆により女性と子ども含む民間人14人死亡。(NINA)
ファルージャで有志連合国軍の空爆により民間人7人死亡。(IB)
2月28日 モスル地域で有志連合国軍の空爆により子ども6人含む民間人17人死亡,23人負傷。(NINA)
3月5日 モスル北方バルタラ地域で有志連合国軍の空爆により子ども5人と女性2人含む民間人16人死亡。(NINA)
3月9日 モスル北方20kmのティルカイフで有志連合国軍の空爆によりISメンバー12人死亡,女性3人含む民間人8人死亡。(NINA)
4月4日 サラハディン州バシカで有志連合国軍の空爆により民間人5人死亡。(IB)
4月8日 モスル中心街で有志連合国軍の空爆により民間人11人死亡,4人負傷,ISメンバー8人死亡。(NINA)
4月9日 ファルージャで空爆により民間人14人死亡。(IB)
4月20日 モスル東部カラマ地区での有志連合国軍の空爆により6棟のアパートが崩壊し女性11人含む民間人35人死亡,22人負傷。(NINA)
モスル北郊バシカ地区での有志連合国軍の空爆により民間人11人死亡,ISメンバー3人死亡。(NINA)
4月21日 モスル中心部の住宅地域で有志連合国軍の空爆によりISメンバー10人死亡,民間人23人死亡。(NINA)
4月23日 モスル東部地域で有志連合国軍の空爆により女性と子ども含む民間人9人死亡,12人負傷。(NINA)
4月27日 ファルージャ北東サクラウィヤでイラク軍ヘリの銃撃により民間人6人死亡。(IB)
5月1日 シリア北西部アレッポで有志連合国軍の空爆により子ども7人含む民間人52人死亡。(R)
5月13日 バイジでイラク軍の空爆により民間人家族6人死亡。(IB)
6月6日 ファルージャのイラク軍司令部に対する有志連合国軍の誤爆によりイラク兵6人死亡,8人負傷。(IN)
6月8日 モスル東方の住宅地域での有志連合国軍の空爆により女性と子ども含む民間人20人死亡,13人負傷。(NINA)
6月25日 モスルで有志連合国軍の空爆により民間人23人死亡。(IB)
6月26日 モスル南方カイヤラで有志連合国軍の空爆により民間人17人死亡。(IB)
6月29日 ファルージャでイラク軍の空爆により民間人10人死亡。(IB)
7月2日 モスルで有志連合国軍の空爆により民間人22人死亡。(IB)
7月5日 ラマディでイラク軍の空爆により民間人36人死亡。(IB)
ファルージャでイラク軍の砲撃により民間人17人死亡。(IB)
7月6日 バグダッド東部ニューバグダッド地区でイラク軍のロシア製戦闘機スホーイが機器の誤作動によって爆弾を投下し少なくとも子ども3人と女性2人含む12人死亡,25人負傷。(AP)(R)
7月9日 モスル南方地域で有志連合国軍の空爆により女性と子ども含む民間人15人死亡,7人負傷。(NINA)
7月11日 モスルで有志連合国軍の空爆により電力供給設備を破壊,女性7人と子ども3人含む民間人20人死亡,17人負傷。(NINA)
7月16日 ファルージャでイラク軍の空爆により民間人11人死亡。(IB)
7月20日 東部ロガール州バラキバラク地区でアフガン軍とタリバンとの戦闘中にNATO軍ヘリの誤爆によりアフガン兵8人死亡,5人負傷。(AP)(R)
8月3日 ラマディ東郊カリディヤとファルージャでイラク軍ヘリの空爆により民間人計8人死亡。(IB)
8月6日 ティクリート空港北東地域で民衆防衛隊とISの戦闘中の有志連合国軍の誤爆により民衆防衛隊旅団長含む隊員15人死亡。(NINA)
8月9日 アンバル州西部ルトバでイラク軍の空爆により民間人女性6人死亡,4人負傷。(IN)
8月13日 ファルージャ西部の病院でイラク軍の砲撃により女性と子ども25人死亡,30人負傷,イラク軍当局はISが民間人を人間の盾としていたと発表。(IN)
8月17日 ラマディでイラク軍ヘリの空爆により民間人8人死亡。(IB)
8月19日 モスル北郊マナッサ地域で有志連合国軍の誤爆により民間人18人死亡。(NINA)
8月21日 モスル南方ハマム・アルアリルで有志連合国軍の空爆により民間人家族9人死亡。(NINA)
8月24日 ニナワ州北西部シンジャルで有志連合国軍の空爆により民間人7人死亡。(IB)
8月30日 モスル西部地域で有志連合国軍の誤爆により女性4人と子供1人含む民間人12人死亡,4人負傷。(NINA)
9月3日 モスル南部の住宅地域で有志連合国軍の空爆により女性3人と子供7人含む民間人13人死亡,20人負傷。(NINA)
9月17日 イエメン南部サヌアでシーア派武装勢力フーシ運動標的のサウジアラビア軍主導の民間人9人死亡。(R)
9月23日 モスルで有志連合国軍の空爆により民間人家族4人死亡。(IB)
9月27日 キルクーク南方ダククで空爆により民間人8人死亡。(IN)
アンバル州とモスル地域での有志連合国軍の空爆により民間人計11人死亡。(IB)
9月28日 アンバル州中部ヒート西方クバイサで空爆と砲撃により民間人15人死亡。(IB)
キルクーク南方ラシャド地区の村で有志連合国軍の空爆により民間人家族7人死亡。(NINA)
モスル中心部の住宅地区への有志連合国軍の空爆により民間人16人死亡,3人負傷。(NINA)
イエメン南西部モカでサウジアラビア軍主導の連合軍の戦闘機が結婚式場を空爆し女性と子供含む少なくとも131人死亡。(AFP)
9月29日 モスル中心部のスンニ派基金本部施設への有志連合国軍の空爆により女性と子ども含む民間人29人死亡,16人負傷。(NINA)
10月3日 北部クンヅズ州クンヅズの「国境なき医師団(Medecins Sans Frontieres, MSF)」の医療施設への米軍AC-130対地攻撃機の誤爆によりMSF職員12人と子ども3人含む患者10人計22人死亡,37人負傷,30人以上行方不明。(AP)(AFP)
10月21日 モスルで有志連合国軍の空爆により民間人家族5人死亡。(IB)
10月22日 モスルで有志連合国軍の空爆により民間人9人死亡。(NINA)
10月31日 モスルで有志連合国軍の空爆により民間人家族4人死亡。(IB)
11月4日 モスル南方ハマム・アルアリルで有志連合国軍の空爆により子ども1人含む民間人5人死亡,4人負傷。(NINA)
11月8日 モスル南方カイヤラの住宅地域への有志連合国軍の空爆により子ども6人含む民間人11人死亡,5人負傷。(NINA)
11月9日 モスル南方カイヤラで有志連合国軍の空爆によりISメンバー4人と民間人13人死亡。(NINA)
11月11日 モスルで有志連合国軍の空爆により民間人7人死亡。(IB)
タルアファルで有志連合国軍の空爆により民間人7人死亡。(IB)
11月16日 モスル東部で有志連合国軍の空爆により民間人12人死亡,39人負傷。(NINA)

この「“対テロ戦争”における米軍主導の連合軍による民間人誤射・誤爆・過剰防衛事件(2015年)」の著作権は
慶應義塾大学 経済学部 延近 充が所有します。無断で複製または転載することを禁じます。

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