「対テロ戦争」における米軍主導の連合軍による民間人誤射・誤爆・過剰防衛事件(2013年)

「誤射・誤爆」事件においては,死傷者が民間人(非戦闘員)であるか反政府・反外国軍武装勢力であるか,外国軍当局と現地政府や地域住民の主張が異なることが多い。下記では「誤射・誤爆」の可能性が高いと思われる事件を集計した。また,これらはウェブ上の主要メディアの報道や国際機関等の発表を集計したに過ぎないため,現実には,この種の事件はさらに多数発生していると思われる。
下記の表が示すように,“対テロ戦争”において,「誤射・誤爆・過剰防衛」やコラテラル・ダメージ(軍事行動に付随する犠牲)によって,多数の民間人死者が発生している。この問題については,08年末からのイスラエルのガザ地区攻撃にともなう多数の民間人死者発生の問題とあわせて,私が論じたCollateral Damage ― “対テロ戦争 War on Terror”の非人間性をお読みください。
“対テロ戦争”の原点とも言うべきパレスチナ問題の起源と経過については,「イラク戦争前史― パレスチナ問題」をご覧ください。
また,「対テロ戦争」の最前線を知るために:アフガニスタン戦争・イラク戦争という「対テロ戦争」の最前線の状況と日本の関与をどう考えるかについて,映画を素材としたエッセイ集,「アメリカはなぜ戦争をし続けるのか」(ドキュメンタリー映画「アメリカばんざい-crazy as usual」),「無知は免罪符とならない」(映画「リダクテッド 真実の価値」)もご参照ください。
国・地域 アフガニスタン パキスタン パレスチナ
種別* 検問等 誤射・誤爆 検問等 誤射・誤爆 検問等 誤射・誤爆
民間人死者数** 3 83
* 「検問等」:連合軍検問所における検問や連合軍部隊・車列に接近した民間人に対して,軍の指示や停止命令に従わなかったとして,兵士が自爆攻撃等を誤認して民間人に発砲した事件等。
「誤射・誤爆」:連合軍の武装勢力掃討作戦や武装勢力の攻撃に対する応戦等において,民間人が死傷した事件。イスラエル軍のガザ地区攻撃においては意図的と思われる民間人殺傷事件を含む。
** 現地治安部隊員や警官の死者を含む。

日付は現地時間

月日 アフガニスタン パキスタン パレスチナ
1月13日 東部ワルダク州サイエダバードでNATO軍・アフガン軍の作戦行動により武装勢力4人死亡,住民が遺体を片付けようとした際にNATO軍の空爆により住民7人死亡,住民の証言,州政府報道官は武装勢力着用の自爆ベストの爆発が原因の可能性を指摘。(AP)(K)
1月27日 東部ロガール州バラキバラク地区でNATO軍の夜間の作戦行動により民間人3人死亡,州警察副本部長発表,NATO軍報道官はアフガン治安部隊の発砲により爆弾設置中の武装勢力3人死亡と発表。(AP)
2月12日 東部クナール州シギャル地区の村の民家2軒をNATO軍が空爆しタリバン上級指揮官4人の他に女性と子ども含む民間人10人死亡,4人負傷,州議会議員発表。(AP)
3月2日 東部クナール州シギャル地区の村の民家2軒をNATO軍が空爆しタリバン上級指揮官4人の他に女性と子ども含む民間中部ウルズガン州サヒド・アサス地区でNATO郡の誤射によりアフガン人少年2人死亡。(AP)人10人死亡,4人負傷,州議会議員発表。(AP)
3月11日 カブール近郊で米軍部隊に接近したトラックへの米兵の発砲によりアフガン民間人2人死亡。(AP)
3月26日 東部ロガール州でタリバン武装勢力に拉致されたアフガン兵2人のNATO軍・アフガン軍による救出作戦によりタリバン地域指揮官含む武装勢力24人死亡,州政府報道官発表,作戦行動に巻き込まれた子ども4人死亡。(AP)(R)
3月30日 東部ガズニ州でNATO軍ヘリの空爆により子供2人死亡,7人負傷,州政府報道官発表。(R)(K)
4月4日 東部ガズニ州デヤク地区の警察検問所近くでNATO軍ヘリからの銃撃によりアフガン地方警官(ALP)4人と民間人2人死亡。(AP)(R)
4月6日 東部クナール州シンガル地区で米軍・アフガン軍部隊と武装勢力との戦闘中のNATO軍の空爆により子ども12人と女性4人含む17人死亡,10人負傷,政府高官発表と地元住民の証言,政府調査団が11日に確認。(AP)(R)(K)
4月10日 西部ヘラート州アドラスカン地区のカブールに向かう高速道路上で米軍部隊に接近したバスへの米兵の発砲により民間人1人死亡,1人負傷。(K)
4月16日 南東部パクティア州の民家に対するNATO軍単独の夜間の作戦行動により民間人1人死亡,妻1人負傷。(K)
4月28日 東部ナンガルハル州で米軍車列を武装勢力が攻撃し銃撃戦中に民間人4人死亡。(AP)
5月12日 南部カンダハル州アルガンダブ地区でNATO軍の夜間の作戦行動により民間人2人死亡,民間人4人を拘束,地区当局者発表と住民の証言,NATO軍は死者・拘束者ともに武装勢力と発表。(K)
6月6日 東部クナール州マノギ地区の住宅街でNATO軍無人偵察機からの空爆により少年2人と少女1人死亡,女性2人含む6人負傷,州知事発表,ISAFは州知事の主張を否定。(AP)(K)
6月9日 北部バダクシャン州ワルドジ地区でNATO軍の空爆により子ども2人死亡,地区首長発表,ISAFは空爆はタリバン指導者標的の精密爆撃として子どもの死亡を否定。(K)
8月1日 東部ナンガルハル州バティコット地区の警察検問所を武装勢力が攻撃,警官が要請したNATO軍ヘリの誤爆により警官5人死亡,1人負傷。(AP)(K)
9月8日 東部クナール州ワタプール地区でピックアップ・トラック標的のNATO軍の空爆により民間人9人含む15人死亡,州警察長官発表,NATO軍報道官は空爆により武装勢力10人死亡と発表。(AP)(K)
10月4日 東部ナンガルハル州でNATO軍の空爆により子ども3人含む民間人5人死亡,州政府報道官発表。(AP)(K)
10月17日 中部ウルズガン州タリンコットで9月にオーストラリア軍の夜間の作戦行動により民間人父子2人が死亡していたことが判明。(K)
11月29日 南部ヘルマンド州で武装勢力標的のNATO軍無人偵察機の空爆により子ども1人死亡,女性2人負傷。(AP)(K)

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慶應義塾大学 経済学部 延近 充が所有します。無断で複製または転載することを禁じます。

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