<資料> 終わらない「対テロ戦争」*ー年表 2003年2月〜

慶應義塾大学 経済学部 延近 充 編著
*2004年9月のこのサイトの開設以来,この年表の題名は「終わらないイラク戦争―イラク戦争関連年表2003年2月〜」としてきました。サイトの開設当初からイラク戦争はブッシュ政権の「対テロ戦争」の一環という認識は持っており,イラク以外のアフガニスタンなどの情勢も年表に組み入れていたのはそのためでしたが,本来なら年表の題名も「終わらない対テロ戦争」とすべきでした。
ただ,2004年時点でのアフガニスタンの状況は憲法制定,カルザイ大統領の選出と復興へのステップが進み,治安状況も安定していたこと,イラクの治安状況は悪化しつつあったことなどから,「対テロ戦争」の一環という認識はもちながらも,問題関心は主としてイラク情勢でした。

しかし,2007年秋以降,イラクの治安情勢はそれまでに比べて劇的に「改善」される一方(もちろんイラク戦争も「終わった」わけではないと考えていますが),アフガニスタンの治安情勢は2005年ごろからタリバンの勢力復活・拡大によって急速に悪化して,「対テロ戦争」の主舞台はアフガニスタンやパキスタンに移っていきました。年表でとりあげる事項もイラクだけでなくアフガニスタンやパキスタン情勢に関わる事項が増えていきました。
それにともなって,年表の名称をどうするか検討してきましたが,2010年8月末でイラクにおける米軍の戦闘任務が終了し,作戦名もOperation Iraqi Freedom( 「イラクの自由」作戦)からイラク治安部隊の訓練等目的のOperation New Dawn (「新しい夜明け」作戦)に変更されたことから,2010年9月以降の年表の名称を「対テロ戦争」関連年表とし,このトップページの題名も終わらない「対テロ戦争」に変更しました(2010年9月追記)。
アフガニスタン・イラク戦争を含む「対テロ戦争」がなぜ「終わらない」性格をもつのか,またブッシュ政権が国際社会の反対の中でなぜイラク攻撃を強行したのかについてのわたしの見解は,

2008年秋以降の世界的金融・経済危機の構造を国際政治や軍事面を含めて論じた『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(御茶の水書房,2012年2月,本書の構成と序論),

現在の世界経済の危機的状況と90年代以降の日本経済の構造変化を基礎理論から現状分析まで展開し,平易に説明した『21世紀のマルクス経済学』(慶應義塾大学出版会,2015年7月,本書の目次)

「対テロ戦争」は何をもたらしたのか(2017/3/25)

でお読みいただけます。2014年以降のIslamic State in Iraq and Levant(またはIslamic State,イスラム国)の台頭の問題,トランプ政権の対テロ政策は何をもたらすのかを考える材料にもなると思います。
イラク戦争関連の年表は主要新聞社や通信社などマス・メディアのウェブ・サイトに特集として掲載されているものがある。それらは一覧表としては簡単な見出しだけで,記事全文へのリンクがあるものの,記事の中には見出しとは異なる内容も含まれている。また限られたテーマの特集であるため,関連事項については別の特集や個別記事を検索・参照しなければならない。
また,個人・団体のウェブ・サイトやイラク戦争関連の文献に掲載されている年表は,収集されている事実の範囲が狭かったり,項目の分類がされていないため,事実の一連の経過や経緯を見るには不便なものがほとんどである。また,わたしの知るかぎり,出典を明記したものはなく記載事実の検証ができない。
私たちの年表は共同研究「イラク戦争を考える」の分析視角を反映させ,研究のための基礎資料として有意義なように作成している。特徴*は以下のとおり。
  1. 年表に掲載する事項を,狭い意味での「イラク戦争」にとどまらず,わたしたちの分析視角に照らして「イラク戦争」に関連すると考えられる事項に広げ,それらを[イラクの軍事情勢],[イラクの政治情勢],[日本の対応],[アメリカ政府の対応],[その他の国,国際機関の対応],[イラク周辺国情勢]の6つの項目に分類して掲載した。
  2. 原則として複数のソースで確認できた事実のみを収集し(一部例外あり),検証が可能なように主な出典を付記した。
  3. イラクや関係国情勢の概略把握のため,各月の主な出来事を冒頭にまとめて表示した。
  4. 日付は時系列参照の便宜のため日本時間で表示し,必要に応じて現地時間を併記した。
  5. 年表記載事項の参考資料として,【イラクおよび周辺地域の地図】,【語句説明(人名・地名・組織名等)】,【イラク戦争関連兵器】を各ページに付加した。
  6. 年表記載事項の理解のための基礎資料として,国連決議などの重要文書や合意事項,演説などの要旨や全文へのリンクを関係ページに設定した。
  7. 軍事情勢や政治情勢,憲法制定過程などの推移がわかりやすいように,年表記載事項を元にテーマ別資料を随時作成し掲載している。
*もちろん,年表に収集した事実は報道機関によって報道された事実や各国・国際機関によって公表された事実に限られるという限界ももっている。
これらの年表に示された事実は,2003年4月のサダム・フセイン政権崩壊,同年5月のブッシュ大統領の「大規模戦闘終結宣言」にもかかわらず,イラク国民の抵抗運動は根強く残り,周辺国や関係国での暴力の連鎖やイラク国内の内戦化傾向も加わって,この戦争が「終わらない」ことを如実に示している*。
【イラク戦争の犠牲者】のグラフが示すように,イラク新憲法に基づく正式政府が発足した2006年5月以降,イラク国内の宗派間・政治勢力間の暴力の連鎖がいっそう激しくなって民間人の死者が急増している。イラク戦争からの出口の見えない状況から,ブッシュ米大統領の支持率はさらに低下し,06年11月の米中間選挙で上下院とも共和党が敗北し民主党が過半数を占めるにいたった。11月下旬からは,イラク情勢を「内戦 Civil War」という表現を使って報道するアメリカ国内のテレビ・新聞の主要メディアが増加している。また,10月の米兵の戦闘行動中の死者が100人を超えるなど,米軍主導の多国籍軍への反占領勢力による攻撃も増加し高水準を維持している。(2006年12月2日追記)
2007年秋以降,イラク駐留米軍の死傷者,イラク民間人の死者は顕著に減少し,2008年11月にはイラク政府と米国との間で安全保障協定が締結されて,09年6月末までの米軍戦闘部隊の都市部からの撤退と11年末までの米軍のイラクからの完全撤退が決定した。このイラク治安情勢の「改善」の諸要因と今後の問題点については,【イラク情勢メモ】:イラク情勢の「改善」をどう見るか?をご覧ください。(2009年7月1日追記)
イラク情勢が不安定要因をはらみながらも一時に比べて急速に治安が改善されたのとは対照的に,アフガニスタン情勢は,現アフガニスタン政府の腐敗の横行と復興の停滞を背景としたタリバン勢力の巻き返しにともなって,2005年以降,加速度的に悪化している。さらに,アメリカがパキスタン北西部アフガニスタン国境付近の部族地域をタリバンやアルカイダ勢力の拠点とみなして,パキスタン政府を支援しながら武装勢力掃討作戦を実行させ,アメリカ自身もCIAの無人偵察機のミサイルによって越境攻撃を行なっている。パキスタン国内でもパキスタン・タリバンによる大規模爆弾テロ事件が頻発するようになって,パキスタン情勢も悪化している。
米軍・NATO軍の軍事行動にともなって住民・非戦闘員の死傷事件が多発し,そのことが犠牲者の親族や関係者の武装勢力への参加を促進し,イラクにおけるのと同様に,外国軍のアフガニスタン駐留およびその軍事行動が反政府・反外国軍武装勢力の勢力をかえって強める結果となっているのである。

私はこの<資料>を「終わらないイラク戦争」と題したが,その「終わらない」という性格付けの正しさが現実の事態の進行によって裏付けられていると感じている。「終わらないイラク戦争」をより明確に「終わらない対テロ戦争」とすべきではあったが・・・(私が対テロ戦争を「終わらない戦争」と性格づける理由については,「改善の兆しを見せないイラクの治安状況をどう見るか?」をご覧ください)。

2009年8月27日に,アフガニスタン駐留米軍のマックリスタル司令官が,米軍・NATO軍の個別の作戦行動における成功が治安情勢の改善をもたらさず,むしろ反政府・反外国軍武装組織の勢力拡大と攻撃の増大の結果を招いている現状について,米軍・NATO軍が10人の武装グループと戦い2人を殺害したとしても,死者の親族が復讐を望んで武装勢力に参加することによって,「この場合の計算式は10-2=8ではなくて10-2=20(以上)となる」という認識を示している。
米軍が殺害しているのは武装勢力だけではなく,多数の非戦闘員・民間人も殺害していることに言及していないことを除いて,この認識自体は正しいが,それにしても米軍のトップ・レベルがこの認識にたどり着くのに,アフガニスタン攻撃開始から8年!,イラク攻撃開始から6年半!とは・・・。
私がイラク戦争について収集した資料と私なりの分析を公表する場として,「終わらないイラク戦争」のサイトを開設したのは2004年9月であった。(2009年8月28日追記)
2003年2月〜2004年7月までの年表は共同研究の一部として延近研究会所属の学生(第12期〜第14期生)が分担して作成したが,事項の過不足や出典の確認不足があったため,延近が事項の確認・整理・追加等を行ない,ほぼ全面的に改訂した。
2004年8月以降は延近が作成し,現在ほぼ毎日更新中。テーマ別資料なども随時更新・追加中である。
すでに公表した部分についても事態の推移しだいで事項の追加など改訂している。改訂状況については更新履歴を参照されたい。(2003年分について,14期生の松崎禎夫君・山崎理絵君・田中広美君が事項や出典の確認作業に協力してくれた。)
*2006年6月〜08年7月の年表は,私の仕事上の都合と体調不良,および中東情勢の緊迫化による大量の情報の整理のため,部分的なものとなっています。今後,整理ができしだい随時更新していきます。
なお,毎日発生しているイラク民間人の死亡事件についてはIraq Body Count(IBC)のデータベースをご参照ください。IBCのデータを参照する場合の注意点についてはこちらをご覧ください
[参考資料] 【イラクおよび周辺地域の地図】 【用語集(人名・地名・組織名等)】 【イラク戦争関連兵器】
【イラク戦争の犠牲者数】 【アフガニスタン戦争の犠牲者数】 【原油価格の推移2003年〜】 
【日米株価の推移2008年9月〜】
[サイト内検索]
[出典]年表・資料作成のために現在 参照している主なウェブサイトは以下のとおりで,年表等の事項末尾の数字・文字に対応している。
各年の年表でこれらとは異なるニュース・ソースを使っている場合,その出典はその年の年表末尾に記載してある。
[出典]
(1)朝日新聞データベース:http://dna.asahi.com
(2)asahi.com:http://www.asahi.com/
(3)共同通信:http://www.47news.jp/
(4)産経新聞:http://www.sankei.co.jp/
(5)日本経済新聞:http://www.nikkei.co.jp/
(6)毎日新聞:http://mainichi.jp/
(AK)Kurdistan News Agency:http://www.aknews.com/
(AP)AP通信:http://www.ap.org/
(BBC)BBC放送:http://news.bbc.co.uk
(C)米中央軍司令部:http://www.centcom.mil/
(D)米国防総省:http://www.defense.gov/
(DOC)米商務省:http://www.commerce.gov/
(DOT)米財務省:https://www.treasury.gov/
(DUK)英国防省:http://www.mod.uk/
(DC)カナダ国防省:http://www.forces.gc.ca/
(DAU)豪国防省:http://www.defence.gov.au/
(IB)Iraq Body Count:http://www.iraqbodycount.net/
(IC)iCasualties:http://icasualties.org/
(IN)Iraq News:http://www.iraqinews.com/iraq-war/
(ISAF)アフガニスタン国際治安支援部隊:http://www.isaf.nato.int/
(K)Afghan Online Press:http://www.khaama.com/
(NINA)National Iraqi News Agency:http://www.ninanews.com/
(R)ロイター通信:http://www.reuters.com/
(RS)NATO Resolute Support Afghanistan:http://www.rs.nato.int/
(U)イラク駐留米軍:http://www.usf-iraq.com/
この他に以下のようなイスラム側,イラク・レジスタンス側からの情報も随時参照しているが,
信頼性について判断できないので上記各サイトの情報と食い違うものは年表に掲載していない。
Information from occupied Iraq:http://www.uruknet.info/
Iraqi Resistance:http://www.albasrah.net/moqawama/english/iraqi_resistance.htm
Islamic-World.Net:http://www.islamic-world.net/
イラク戦争を題材とした映画
ドキュメンタリー映画「アメリカばんざい - crazy as usual -」
イラクで死んだ兵士の家族,イラク派遣を拒否した兵士,ベトナム・アフガニスタン・イラクからの帰還兵,現役海兵隊員へのインタビューや海兵隊員養成のブート・キャンプの取材などで構成されたドキュメンタリー映画。2008年7月26日から公開。私も協賛しています。
「リダクテッド 真実の価値」
2006年にイラク・サーマッラで起きた米兵によるイラク人少女レイプ殺人事件を題材としたブライアン・デ・パルマ監督の作品。フィクションとインターネット上で公開されている実際の映像をミックスして,Redacted−情報の事前削除・編集:アメリカの情報操作・報道規制や偏向報道を描いている。2008年10月25日から公開。この映画のサイトでは中東研究者の酒井啓子氏を講師とするシンポジウムなどの情報あり。
解放軍として歓迎される期待が裏切られ,泥沼化するイラク戦争下,「テロ」を恐れて心理的に追い詰められる米兵たち。イラクで何が起こっているのか,イラクに派兵したアメリカ社会では何が起こっているのかを考えさせる映画。
イラクと同様に泥沼化するアフガニスタンへ日米同盟のために自衛隊派遣を模索し続ける日本政府。
これは「ひとごと」の話ではない。無知は免罪符とはならないのである。

「対テロ戦争」の最前線の実態を知るための手がかりとなるこの2つの映画についての私のコメントをアップしてあります。

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