〜 第9回 alsは「アルツ」 〜

 
 

 

♪ ポーズを置こう! ♪
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 前回は,ドイツ語ではアクセントのある音節を核とした意味のひとかたまりごとに発音されるということを踏まえて,短文におけるポーズの置き方を学びました。今回はそれを発展させて,やや長めの文でのポーズの置き方と読み方を勉強しましょう。
 まずは前回の復習から。

 
1. In einer kleinen Stadt / wohnen sie sehr ruhig.
 この文は「ある小さな町で」と「彼らはとても静かに暮らしています」という二部分からなっていて,前回勉強したように,これら2つの意味単位の間でポーズを置きます。これを別の角度から見ると,テーマと定形の間でポーズを置くということになります。テーマとは定形の前に置かれた部分で,後続部分はこのテーマについて語ります。この文ではまず,「ある小さな町で」というテーマを掲げ,聴く人が「そこでどうしたの?」という疑問を持ったところで「彼らはとても静かに暮らしているんだよ」というテーマについての叙述が行われるのです。テーマに名詞が含まれる場合はたいていポーズが置かれます。上の文のような副詞句ばかりでなく,主語である名詞ももちろんよくテーマになります。
 2. Picasso/ erfreute sich bis ins hohe Alter/ einer guten Gesundheit.

 例文2では定形erfreuteの前にあるのは主語Picassoです。つまりこの文では主語が同時にテーマであり,残りの部分はPicassoについての叙述です。この場合テーマPicassoはたった1単語ですが,「何について語っているのか」を明らかにするために定形との間にポーズを置くのが良いでしょう。もし主語がPicassoがErという人称代名詞であれば,ポーズは置かれません。

 さて,それでは今まで勉強したことを元に,次の練習問題に取り組んでください。

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♪ 発音クリニック ♪
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 前回は連続する子音の発音を練習しました。今回は連続する2つの子音のうち,注意すべきものを勉強します。まず次の単語を下線部に注目して発音してみてください。

Tanz, abseits, bereits, nachts, nichts, abends, zusehends, eilends,
eins, Hans, ins, als, damals, Hals

 実はここで下線が引かれている部分は,つづりこそ違え,みんな同じ「ツ」の音が含まれているのです。zが「ツ」の発音であることはみなさんおわかりでしょう。実は「ツ」の音は,舌先が破裂音tを発音して歯茎から離れ,すぐに同じ位置で狭めを作り摩擦音sを発音するという連続子音なのです。ですからつづりが-ts-の時この発音となるのは当然ですね。さらにdも語末ではtの音ですから,-ds-も「ツ」と発音されます。

 それでは-ns-がどうして「ツ」を含むのでしょう。それは,nを発音した舌先が続いてsを発音するために歯茎から離れるときにtの音が発生するからです(わたり音のt)。このtと次のsが連続して,結果として「ツ」の音が生じるのです。したがって,einsは「アインツ」,Hansは「ハンツ」のように聞こえるはずです。

 また-ls-も同様で,英語よりもべったりと歯茎についたlの舌先が離れるときにtの音が生じ,sと結びついて「ツ」の音になります。alsは「アルツ」,Halsは「ハルツ」に近く聞こえます。この点に気を付けると,あなたのドイツ語が一層ドイツ語らしくなりますよ。

 

 
 
 
 

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