マルクス経済学 II(2019年度)
学習のための課題と論述ポイント
[レポート提出方法]
課題レポートは,下記の1〜6に記された方法でEメールで送ってください。下記の方法以外で送られた場合,提出は無効です。
- *提出無効リスト
- レポート出題後,提出期限までは,ほぼ毎日更新しています。自分のレポートが提出無効でなかったか確認してください。
提出方法を指定する意味は,300名前後の履修者から提出されるレポートを確実にスムーズに採点・集計するため,および不正行為をできるだけ予防するためです。その意味を理解し,必ず指定された提出方法を守ってください。無効だった場合でもそのことを個別に返信することは物理的にできません。
- Eメール送付先:
- 件名:marx課題番号-(ハイフン)学籍番号
例:課題番号6を学籍番号21812345の学生が送る場合,件名をすべて半角英数字で,marx6-21812345 と入力する。
指定以外の件名,例えば marx(6)-,marx06-,marx6‐(ハイフンが全角)などは無効です。
件名には,指定された事項以外,何も記入しないこと。
- 送付元:大学から与えられたメールアドレス( keio.jp)。
差出人名は本名(漢字またはローマ字でフルネーム)。ニックネームを使用したものは無効です。
keio.jp のウェブ・メールの初期設定では,差出人名がアカウント名になっています。自分の本名に変更して送付してください。
yahooやgmailなどのウェブ・メールや民間プロバイダのメールアドレスからの送付は無効です。
指定されたメールアドレスを利用できない場合は,その理由を上記のアドレス宛てにメールで送り,私の許可を受けてください。
- 本文:メールの本文の冒頭に,課題番号・課題テーマ・学年・クラス・氏名を記し,その後にレポート本文(1,200字以内)を入力してください。MS Wordなどで作成したファイルを添付したものは無効です。
文字化けしたものは読めないのでレポート提出とは認められません。
- 半角カタカナや機種依存文字(丸で囲んだ数字,ローマ数字,特殊な記号など)は使わないこと。これらの文字を使うと文字化けする可能性大です。
- MS Wordで作成した文章をコピーし,メール本文に直接ペーストすると,文字化けの可能性が高まります。下書きをしたい場合は,メモ帳(Note Pad)などのテキスト・エディタで作成した方が安全です。
- 1行の文字数が多すぎると文字化けが発生しやすいようです。1行35字(全角)程度で改行してください。
- 提出期限:課題の末尾に赤字で記された提出期限(基本的に出題日の翌週の講義)日の13:00まで。
なお,提出期限の1週間後の13:00まではレポート提出を認めます。ただし,期限後提出は期限内提出の5割程度の評価とします。エラーによる再提出期間も提出期限後1週間以内です。
- その他:
a. 同じ日に複数の課題レポートが課された場合は,それぞれ別のメールで送付してください。
b. メールを受け取った旨の返信はできません。送信済みメールは各自保存しておいてください。
c. 他人のレポートやウェブ上の情報の盗用(コピー&ペースト)による提出などは,不正行為として経済学部から処分されることになります。
(実際に,2012年度にウェブ上の記述をほぼ全面的に盗用した不正行為があり,学部としての処分の手続きが開始され,当該学生を呼び出して日吉主任が事情聴取しました。2014年度と2015年度には友人のレポートをほぼそのままコピペして提出した不正行為がありました。いずれも真摯な反省の態度が見られたため,正式処分は見送りましたが,今年度の履修者にもこのような恥ずべき行為をしないよう,注意喚起しておきます。)
課題 9「1990年代以降の日本経済の停滞傾向の基本的性格について,独占段階の停滞基調論に基づいて論じなさい。停滞基調論自体を説明する必要はありません。」(出題日1月8日,提出期限1月15日,この課題の期限後提出は1月20日午後1時までとします)
【論理展開】
- 1980年代までの輸出依存的な経済構造の形成
- 1990年代以降の設備投資の低迷
- 日本企業の賃金コスト削減至上主義
- 金融緩和効果の減衰
【論述ポイント】
- 1. 1980年代までの輸出依存的な経済構造の形成
- 停滞基調のもとでの急速な経済成長の要因
1. 朝鮮特需で獲得した外貨に基づく合理化投資:素原料以外の生産手段の国内生産体制
2. 高度成長前半期:新生産部門形成投資
3. 後半期:対外膨張
4. 1970年代:対外膨張
5. 1980年代:対外膨張と新製品開発・新生産方法導入- →輸出増大を経済成長の不可欠の要素とする経済構造の形成=潜在的な過剰生産能力
- 2. 1990年代以降の設備投資の低迷
- 1. 対外膨張の限界と新生産物・新技術開発の国際競争での敗北⇒過剰生産能力の顕在化
2. 日本企業の多国籍化と産業の空洞化
⇒国内での設備投資の低迷
- 3. 日本企業の賃金コスト削減至上主義
- 賃金切り下げ・雇用の不安定化
⇒個人消費抑制
⇒不況の深刻化
⇒賃金コストの削減の悪循環
- 4. 金融緩和効果の減衰
- 1) アメリカ主導の金融の自由化・国際化
2) 金融緩和による資金は金融市場での投機的取引によるキャピタル・ゲイン獲得へ
課題 8「競争段階の資本主義における景気循環のメカニズムを説明しなさい。」(出題日12月4日,提出期限12月11日)
【論理展開】
- 市場停滞下での個別資本の行動
- 固定資本投資と需要の加速度的波及
- 生産と消費の矛盾の累積と成熟:全般的過剰生産恐慌
【論述ポイント】
- 1. 市場停滞下での個別資本の行動
- 1) 競争的市場の特徴(価格支配の可能性)
2) 新生産方法の導入・普及と特別M
3) 設備投資の集中的展開
- 2. 固定資本投資と需要の加速度的波及
- 1) 関連部門への需要の加速度的拡大
2) 関連部門での生産・投資拡大の相互誘発
3) 好況過程:I 部門の不均等的拡大の内実
- 3. 生産と消費の矛盾の成熟:過剰生産恐慌
- 1) 生産手段需要の変化
2) 好況末期の個別資本の生産・投資行動の変化
3) 恐慌の機能
「資本蓄積の進展と相対的過剰人口との関係について論じなさい。」(出題日11月6日,提出期限11月13日)
【論理展開】
- 資本の有機的構成の高度化
- 資本蓄積の進展過程の特徴
- 資本蓄積・生産力向上と労働力需要
- 相対的過剰人口の累進的生産
- 景気循環と相対的過剰人口
【論述ポイント】
1.生産力向上と資本の有機的構成の高度化
生産力向上は,一般的傾向として資本の技術的構成を高度化し,資本の有機的構成を高度化する。
2.資本蓄積の進展過程の特徴
資本蓄積過程は,資本蓄積と生産力向上とが,それらを個別資本に累進的に拡大するよう促進し強制する社会的機構によって,相互促進的に進展する過程である。
3.資本蓄積・生産力向上と労働力需要
- 1)相対的過剰人口の創出
- 資本の有機的構成の高度化は,一定量の投下資本によって充用される労働者数を減少させる。
- 2)相対的過剰人口の吸収
- 資本蓄積は,投下資本量の増大を通じて,雇用労働者数を増加させる作用をもつ。
4.相対的過剰人口の累進的生産
資本蓄積過程の一般的特徴として,相対的過剰人口を累進的に生産するメカニズムがある。
- 1)労働力供給総量が一定の場合
- 生産力向上をともなう資本蓄積は,そうでない場合に比べて労働力需要を減少させる。
- 2)労働力供給の増加
- 資本蓄積過程は,一般的傾向として就業可能な労働者数を増大させる作用をもつ。
5.景気循環と相対的過剰人口
- 1)相対的過剰人口の吸収と賃金上昇
- 相対的過剰人口の創出作用以上のテンポでの追加投資→賃金上昇・利潤率低下の可能性→労働節約的生産方法の導入・開発の促進,または資本蓄積の停止
- 2)市場の制限
- 資本蓄積過程は産業循環(景気循環)の運動を通じて進展する。相対的過剰人口は,産業循環過程において潜在的に累進的に生産されつつ,ある期間は労働者が大量に吸収されその後は一挙に過剰化するというように,景気循環にともなう労働者の吸引と排出の繰り返しの運動の中で把握されなければならない。
「競争の支配的な資本主義における資本蓄積の進展過程の特徴について論じなさい。」(出題日10月23日,提出期限10月30日)
【論理展開】
- 競争的市場の特徴
- 市場停滞下での利潤最大化
- 資本蓄積強制の社会的機構
- 関連部門への需要の波及
- 市場構造の変化
【論述ポイント】
1. 競争的市場の特徴―多数の競争者の存在
1)個別資本の生産量調整による価格操作の可能性
2)協定による生産調整の可能性
3)参入可能性
2. 市場停滞の下での利潤最大化
1)総資本と個別資本
2)生産力向上による特別Mの獲得と販売量増大
3. 資本蓄積の強制の社会的機構
1) 新生産方法の普及と特別剰余価値
2) 競争の強制による新生産方法の導入
4. 生産拡大・設備投資需要の関連部門への波及
1) 新生産方法の導入にともなう設備投資の群生
2) 関連部門への需要の波及とそれら部門における生産・投資拡大の誘発
3) 市場の全般的拡大=景気の自動的回復メカニズム
5. 市場構造の変化
1) 最低必要資本量の増大(生産力向上にともなう生産の大規模化)
2) 資本の集積・集中(競争と信用)
「剰余価値の本質を隠蔽する諸関係のうち,以下の3点を説明しなさい。」
(出題日10月2日,提出期限10月9日)
(1) 賃金の多様な支払形態
(2) 価値の生産価格への転化
(3) 擬制資本
[論述ポイント]
(1) 賃金の支払形態による隠蔽
- 1. 時間賃金:労働力の1日の価値を,標準的労働時間で除して労働の単価を計算
- 1) 不況時の賃金支払額削減の手段
2) 長時間労働の動機付け3.いずれの支払い形態も賃金が労働全体に対して支払われているという外観⇒剰余価値の本質の隠蔽
- 2. 出来高賃金;労働力の1日の価値を,標準的生産量で除して労働の単価を計算
- 1) 労働の質・強度の制御
2) 労働強化と時間延長
3) 収入の差→労働者の分断
4) 損失負担の転嫁
(2) 価値の生産価格への転化による隠蔽
1.剰余価値と利潤率:資本家の関心事は投下資本の増殖率
2.部門間資本移動と平均利潤率の成立:より高い利潤率を求める資本家間の競争
3.生産価格:費用価格+平均利潤
4.価値と生産価格との関係
- 個々の商品では,価値≠生産価格,剰余価値≠利潤⇒剰余価値の本質の隠蔽
- 総価値=総生産価格,総剰余価値=総利潤
- 生産価格は価値によって根底的に規定
(3) 擬制資本
1.平均利潤率の成立→投下資本額に応じた平均利潤の獲得
2.定期的に利得を生むもの⇒資本としての性格=擬制資本
3.擬制資本の価格=定期的な利得の資本還元額