マルクス経済学 I (2019年度)
学習のための課題と論述ポイント
[レポート提出方法]
課題レポートは,下記の1〜6に記された方法でEメールで送ってください。下記の方法以外で送られた場合,提出は無効です。
提出方法を指定する意味は,300名前後の履修者から提出されるレポートを確実に効率的に採点・集計するため,および不正行為をできるだけ予防するためです。その意味を理解し,必ず指定された提出方法を守ってください。
無効だった場合でもそのことを個別に返信することは物理的にできません。自分で提出無効リストを確認してください。
- 無効提出該当者でレポート提出を希望する者は,指定された送信方法で早急に再送信してください。
再送信する場合,本文の冒頭に再送信である旨を記すこと。
再送信が提出期限後の場合は,期限後提出扱いとなります。- やむをえない理由で指定された方法で送信できない場合は,理由を付して,下記送付先宛てに送信方法変更をメールで申請してください。
- 【メールのマナー】
要望や質問のメールに対して返信のメールが届いたら,相手に貴重な時間を使わせているのですから,(形式的であっても)謝辞のメールを送るのが社会的マナーです。回答のメールを返信しても何のリプライもない学生が多いことにあきれています。
また,送信後に自分で提出方法の誤りに気付いて,訂正したものを再送信する場合,その旨を本文冒頭に記すのもマナーです。そうした断り書きがないと,レポートを採点して履修者名簿に入力しようとしたら,すでに採点処理済みだったのに気付き訂正する,という二度手間をしなければならないのです。
その他,本文に,レポートを送るので「ご確認のほどよろしくお願いいたします」という趣旨の文章を記す学生も少なくありませんが,これは敬語を使っていても「確認」という行為を相手に指示する意味になりますし,確認したらその旨を返信することを期待することになるので,目上の人にメールを送る場合には望ましくない表現です。
- Eメール送付先:
- 件名:marx課題番号-(半角ハイフン)学籍番号
例:課題番号3を学籍番号21812345の学生が送る場合,件名をすべて半角英数字で,marx3-21812345 と入力する。
指定以外の件名,例えば marx(3)-,marx03-,marx3‐(ハイフンが全角),marxIII(ローマ数字)などは無効です。
件名には,これ以外に何も記入しないこと。
- 送付元:大学から与えられたメールアドレス( keio.jp)。
差出人名は本名(漢字またはローマ字でフルネーム)。ニックネームを使用したものは無効です。
keio.jp のウェブ・メールの初期設定では,差出人名がアカウント名になっています。自分の本名に変更して送付してください。
yahooやgmailなどのウェブ・メールや民間プロバイダのメールアドレスからの送付は無効です。
指定されたメールアドレスを利用できない場合は,その理由を上記のアドレス宛てにメールで送り,私の許可を受けてください。
- 本文:メールの本文の冒頭に,課題番号・課題テーマ・学年・クラス・氏名を記し,その後にレポート本文(1,200字以内)を入力してください。MS Wordなどで作成したファイルを添付したものは無効です。
文字化けしたものは読めないのでレポート提出とは認められません。
- 半角カタカナや機種依存文字(丸で囲んだ数字,ローマ数字,特殊な記号など)は使わないこと。これらの文字を使うと文字化けする可能性大です。
- MS Wordで作成した文章をコピーし,メール本文に直接ペーストすると,文字化けの可能性が高まります。下書きをしたい場合は,メモ帳(Note Pad)などのテキスト・エディタで作成した方が安全です。
- 1行の文字数が多すぎると文字化けが発生しやすいようです。1行35字(全角)程度で改行してください。
- 提出期限:課題の末尾に赤字で記された提出期限(基本的に出題日の翌週の講義日)の13:00。
なお,提出期限の1週間後の13:00まではレポート提出を認めます。ただし,期限後提出は期限内提出の5割程度の評価とします。エラーによる再提出期間も提出期限後1週間以内です。
- その他:
a. 同じ日に複数の課題レポートが課された場合は,それぞれ別のメールで送付してください。
b. メールを受け取った旨の返信はできません。送信済みメールは各自保存しておいてください。
c. 他人のレポートやウェブ上の情報の盗用(コピー&ペースト)による提出などは,不正行為として経済学部から処分されることになります。
(過去には,ウェブ上の記述をほぼ全面的に盗用したり,友人のレポートをほぼそのままコピペして提出した不正行為があり,学部としての処分の手続きが開始され,当該学生を呼び出して日吉主任が事情聴取したことがありました。このような恥ずべき行為をしないよう,注意喚起しておきます。)
「資本主義の本格的確立と産業革命との関連について論じなさい。」
(出題日7月3日,このテーマの理解のための出題と論述ポイントですので,提出不要です。送信されても採点の対象外です)
[論述ポイント]
1. 産業革命=機械制大工業による生産力の飛躍的発展
1)機械による生産=それまでの手工業的熟練に基礎をおく生産力の発展の制約の打破
2)自然科学の発展とその意識的応用との相互促進的進展
- 3)資本の生産力としての生産力の発展
- a) 相対的剰余価値(生活手段の価値,育成費,家族費の低下)
b) 絶対的剰余価値(無形の損耗,投下資本価値の早期回収の必要性)
2. 機械制大工業の成立による労働支配の完成
1)工場内における手工業的熟練の解体→単純・部分労働化,女性・子供の労働力化
- 2)同一産業部門内での生産力の圧倒的優位による劣弱資本・小生産者等の駆逐
- 特別剰余価値獲得をめぐる競争の作用
→賃労働者化,就業者への競争圧力
3)労働者の独立可能性の喪失・資本への絶望的従属の完成
3. 関連生産部門の機械制大工業化
全社会的な機械制大工業化⇒社会全体の資本主義的商品生産化
⇒資本主義の本格的確立
「流通における等価交換の前提のもとでも資本の価値増殖が可能となることを説明したうえで,剰余価値の3つの形態を説明しなさい。 」
(出題日6月5日,提出期限6月12日)
【注意】
(a) 剰余価値を「余剰価値」と書いたレポートがいくつかありました。英語ではsurplus valueなので「剰余」と「余剰」の区別はありませんが,経済学用語としては剰余価値であって,「余剰価値」は誤りです。レポートや試験の答案で余剰価値という表記があれば減点します。
(b) レポート課題の要求に対して,講義での私の話や講義資料の論理展開に基づかずに,レポート提出者が教科書の該当部分と思われる文章をいくつかを抜き書きしつなぎ合わせたものが少なくありませんでした。おそらく授業に出席していなかった学生でしょうが,その多くが,抜き書きした文章どうしの接続が稚拙なために,論理がつながっていないもの,下記の[論理展開]を踏まえていないために的外れの抜き書きとなっていました。
下記の[論述ポイント]はこの課題への解答として必要十分なポイントですが,ただし各ポイントを文章化して並べただけでは,レポートとしても答案としても不充分です。内容の理解に基づいて,それを文章として論理的に展開することが不可欠です。
[論述ポイント]
1. 流通における等価交換の前提
流通過程における不等価交換:社会全体では価値増殖なし→価値増殖の秘密は生産過程にある
2. 労働力商品の特殊性
- (a) 労働力商品の価値:労働者階級の維持・再生産必要な生活手段の価値
(b) 労働力商品の使用価値:労働力の消費が同時に労働の対象化であり価値の創造
3. 価値増殖の秘密
(a) 労働力の価値と労働が生み出す価値とは無関係
(b) 労働によって生み出される価値>労働力の価値⇒価値増殖
4.絶対的剰余価値
(a) 定義:必要労働時間を超えて労働日が延長されることによって獲得される剰余価値
(b) 特徴:労働支出量増大,労働強度の強化を含む
2.相対的剰余価値
(a) 定義:生産力の発展→必要労働時間の短縮・剰余労働時間の相対的延長によって獲得される剰余価値
(b) 特徴:労働支出量・実質賃金不変
3.特別剰余価値
(a) 定義:ある商品の[社会的価値]とそれを平均以上の優れた生産方法によって生産した場合の[個別的価値]との差額
(b) 発生→消滅のメカニズム
1. 新生産方法導入による「個別的価値」の低下
2. 「個別的価値」の加重平均である「社会的価値」との差額=特別剰余価値
3. 特別剰余価値の獲得を目標とする新生産方法の率先的導入競争
4. 新生産方法の普及→「社会的価値」の低下=特別剰余価値の減少
5. 旧生産方法による生産物の「個別的価値」>「社会的価値」→マイナスの特別剰余価値が発生・増大
6. 損失を免れるために新生産方法導入を強制される競争へと転化
(c) 相対的剰余価値の増大との関係
1. 特別剰余価値の発生→消滅のメカニズム:この生産部門の生産力上昇→生産物の価値低下
2. このメカニズムが労働力の維持・再生産に必要な生活手段を直接・間接に生産する部門で発生
→社会全体の相対的剰余価値の増大
「商品の2要因を,一般商品と貨幣商品との違いが明らかになるように説明しなさい。」
(出題日5月22日,提出期限5月29日)
[論述ポイント]
- 1. 使用価値
- (a) 有用性
(b) 他人にとっての使用価値
(c) 労働生産物
- 2. 価値
- (a) さまざまな他の商品と交換が行なわれる=一定量の交換価値をもつ。
(b) 価値の実体=労働の具体的形態を取り払った抽象的人間労働の対象化
(c) 価値量:その商品の生産に必要な社会的平均的労働時間
3. 貨幣形態の成立
- (1)交換の際の価値表現
- (a) 相対的価値形態:右辺においた他の商品の姿で自分の価値を表現
(b) 等価形態:自然の姿のままで左辺の商品の価値を表現=直接的交換可能性をもつ
- (2)貨幣商品の特殊性
- (a) 貨幣商品の自然的属性そのものが価値の結晶・一般的等価物として現れる
(b) そのものの使用価値のほかに貨幣商品としての形態的使用価値をもつ
(c) 貨幣商品のもつ全面的な直接的交換可能性をもとめて,商品所持者は貨幣を欲するようになる
「アベノミクスの理論的支柱であるリフレ派の主張の特徴を説明し,理論と統計的事実の両面からリフレ派の主張を論評しなさい。」
(出題日4月24日,提出期限5月1日,上記の提出方法を厳守して送付すること!特に差出人名を本名にすること,文字化けを避けるために改行することを忘れずに。)
[論理展開]
1.リフレ派の主張の特徴
2.リフレ派の主張の理論的基礎
3.リフレ派の主張の理論的検討
4.リフレ派の主張の統計的事実による検討
[論述ポイント]
- 1.リフレ派の主張の特徴
- 90年代以降の日本経済の長期停滞とデフレ傾向に対して,金融政策にすべての問題の原因とその解決策を求める。
(1) 日銀が充分なマネタリーベースの増加を怠った→デフレの進行→長期停滞
(2) 解決のための政策:金融の大幅な量的緩和とインフレ・ターゲット政策
- 2.リフレ派の主張の理論的基礎
- (1) 貨幣数量説
(2) クルーグマン・モデル:合理的期待形成説にもとづくインフレ期待
- 3.リフレ派の主張の理論的検討
- (1) 貨幣数量説の欠陥
貨幣は流通手段だけでなく蓄蔵手段としての機能をもつ
設備投資においては販売と購買の分離は必然
(2) クルーグマン・モデルの非現実性
(3) 個人消費や設備投資は実質利子率の変化だけで決定されるものではない
- 4.リフレ派の主張の統計的事実による検討
- 90年代以降,マネタリーベースの増減とマネーストックおよび消費者物価指数の変化には直接的な関係なし