研究会案内 研究会での学習 入会実績 卒業生の情報 研究会の風景
I.研究分野:現代資本主義論・日米経済関係
サブプライム・ローン問題を発端として2008年秋以降,アメリカ発の金融危機が世界中に拡大していきました。実体経済の面でも,クライスラーやGMといったアメリカ経済を代表する巨大企業が実質的に倒産するような深刻な事態に陥り,世界経済は「百年に一度」の経済危機に陥っていると言われています。
危機回避のために各国政府が膨張的な財政・金融政策や大規模な公的資金投入を実行したことによって,激烈な世界恐慌爆発の悪夢は回避されましたが,依然として,本格的な景気回復の兆しは見えず停滞は長期化の様相を呈しています。
さらに,巨額の財政支出増と景気後退による財政収入減などによって各国中央政府の債務残高は急増し,ギリシャの財政赤字粉飾問題に端を発した09年末以降のEU諸国のいわゆるソブリン債務危機が拡大し,世界経済はいっそう不安定化しています。
日本経済も,世界的な経済停滞にソブリン債務危機の影響による異常円高が加わって,自動車産業をはじめとする基幹的な産業や輸出産業で生産が落ち込みました。さらに2011年3月の東日本大震災と福島原子力発電所の重大事故の影響も重なって,もともと先進国中で最悪だった財政赤字がさらに悪化して危機的な状況となっています。
一国の金融危機が他国や世界経済に多大な影響を与えることは,1990年代後半のアジア通貨危機やロシア経済危機などの一連の危機にもみられたのですが,今回はその震源地がアメリカであったためにその影響の広がりと深刻さは特別の意味をもっています。80年代末の冷戦終結とその後のソ連・社会主義圏の崩壊以降,文字通りのグローバリゼーションが急速に進展し,とりわけ膨大な資金が投機的な金融取引の発達によってグローバルに瞬時に駆け巡る構造が成立したことが,90年代後半以降の金融危機の頻発と世界経済の不安定化という事態の背景にあると考えられます。
このような構造は,第2次世界大戦後に,冷戦・社会主義との対抗の必要性からアメリカが主導して戦後資本主義世界体制を構築し,その覇権と「繁栄」の維持のために採った世界戦略と諸政策によって形成されてきたものなのです。今回の危機はそのアメリカを震源地として,各国にも深刻な影響をもたらしただけでなく,各国政府や国際的協調によってその危機が一時的・部分的に緩和できたとしても,そのことがまた新たな解決困難な危機を生み出しつつあるのです。
また, 9.11同時多発テロからアフガニスタン・イラク戦争の過程に見られるように,冷戦期に起源をもつ民族紛争や宗教対立が噴出し,これらも欧米諸国によって大きな負担となり,世界の不安定化を倍加しています。これは,アメリカの覇権とその基盤自体が脆弱化することによって戦後資本主義世界体制自体が脆弱化し,危機に直面しているということを意味しています。現代経済の諸問題を考える際には,こうした国際政治・軍事的な諸要因も考慮する必要があるのです。
研究会の基本テーマは,以上のような基礎視角から現代資本主義の抱える諸問題や日米経済関係を分析することですが,ゼミ員個々の研究テーマについては,基礎視角は共有しながら,身近な問題や個別産業,環境問題など広く現代経済の抱える問題に関心をもって研究してもらいたいと考えています。
- 輪読書
- 研究会では,3年生は延近 充『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(御茶の水書房,2012年)を輪読することにより,現在の世界的金融・経済危機の根源と構造,実態について分析し,3,4年生合同で,日本経済やアメリカ経済の現状について,実証的な分析を行ないました。
参考までに,2005年度以降の3,4年生合同の輪読書を掲げておきます。
年度 輪読書 2005 藤岡 惇『グローバリゼーションと戦争』大月書店 2006 井村喜代子『日本経済―混沌のただ中で』(勁草書房,2005年) 2007 吉川洋『転換期の日本経済』(岩波書店,1999年),
同『構造改革と日本経済』(岩波書店,2003年)2008 中尾武彦『アメリカの経済政策』(中公新書,2008年),
伊東光晴『日本経済を問う― 誤った理論は誤った政策を導く』(岩波書店,2006年)2009 吉川元忠『マネー敗戦』(文春新書,1998年),
中空麻奈『早わかり サブプライム不況』(朝日新書,2009年)2010 井村喜代子『世界的金融危機の構図』(勁草書房,2010年) 2011 吉川元忠『マネー敗戦』文春新書,岩本沙弓『新・マネー敗戦』文春新書 2012 延近『薄氷の帝国 アメリカ―戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(お茶の水書房,2012年2月) 2013 春学期:萩原伸次郎『米国はいかにして世界経済を支配したか』(青灯社,2008年)
秋学期:アベノミクスをめぐる諸見解のサーベイ2014 井村喜代子『現代日本経済論〔新版〕』(有斐閣,2000年) 2015 須藤時仁・野村容康『日本経済の構造変化』(岩波書店,2014年) 2016 井村喜代子『現代日本経済論〔新版〕』(有斐閣,2000年) 2017 延近 充『21世紀のマルクス経済学』(慶應義塾大学出版会,2015年)
- 延近研究会共同研究 「イラク戦争を考える」
- 2003年度と2004年度は,3,4年生とわたしの共同研究として「イラク戦争」についての資料収集・記録と分析を行ない,論文にまとめました。2003年3月に始まった「イラク戦争」を多面的・歴史的視点から考察し,イラク戦争は現代世界にどのような影響を与え,世界史の中でどのような意味を持っているのかを探り,その研究成果の一部はこのサイト内で公表しました。
国際情勢や基礎資料を立体的に構成したイラク戦争(「対テロ戦争」)関連年表は,現在は私が作成し,ほぼ毎日更新中です。
2015年9月に集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案が成立し,16年3月に施行されたのにともない,この研究に関連してBS-TBSのインタビューを受けました。そのうち放送された部分を見られるようにしておきます。
この共同研究から始まった私の研究成果をまとめて,延近 充『対テロ戦争の政治経済学― 終わらない戦争は何をもたらしたのか』(明石書店,2018年)として出版しました。
- 著書の誤植・訂正のお知らせ
- 拙著『薄氷の帝国 アメリカ』中に誤植や誤り・不正確な部分がありました。恐縮ですが,すでにご購入の方は訂正をお願いいたします。
II.学生への要望研究会では,基本テーマに関連する本を輪読し討論をしていくことによって現代資本主義について理解を深めると同時に,人の意見を理解し自分の考えをまとめ表現していく能力を養うことも重要な目的としています。
さらに自分の興味のある分野に関する(少なくとも)数冊の専門的な本を読むことをつうじて,現代経済に対する何らかの問題意識をもって勉強に取り組んでおいてほしいものです。
そのためには,経済学の基礎的な素養や知識の集積も当然必要となりますから,日吉での専門教育科目の学習は重要です。とくにマルクス経済学T・Uの履修と理解は必須です。
私の専門分野や研究内容の詳細については,私の『薄氷の帝国 アメリカ―戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(お茶の水書房,2012年2月)や私のウェブサイト内のコンテンツを見てください。
- 私は2018年3月で定年退職しましたので,研究会の募集はしていません。
年度によって入会選考が1回の場合と2回以上の場合があるため,表は入会応募者総数と合格発表時点での許可者総数。
また,入会辞退者のため実際の入会者数が異なる年度もある。
|
|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
*( )内は男/女の内訳。 |
1〜5期生については「テーマのねらい」と主要参考文献,6期生以降については「卒業論文の概要」と主要参考文献がついています。(いずれも本人作成のものを原文のまま掲載)
2.卒業者数と卒業後の進路☆☆
☆ 研究会卒業生とは卒業論文を提出し研究会の単位が認定された者で,学位取得・大学卒業とは直接関係しない。
☆☆卒業後の進路(50音順)は卒業時のもので,その後の変更は反映していない。
卒業期 | 卒業者数 | 卒業後の進路 |
---|---|---|
1期(1993年卒) | 18名(男18/女0) | 伊勢丹,協栄生命,参議院事務局,第一生命,電通(2名),東急不動産,東京海上火災,日興證券投資信託,日商岩井(2名),日本航空,日本生命,富士ゼロックス,北海道拓殖銀行,三越,三井生命,矢作建設 |
2期(1994年卒) | 15名(男14/女1) | アイロベックス,アンダーセン・コンサルティング,大林組,第一生命,大日本印刷,大和證券(2名),東京電力,藤和不動産,豊田自動織機,南海電鉄,日産火災,日本興業銀行,日本債券信用銀行,三菱銀行 |
3期(1995年卒) | 14名(男13/女1) | 足利銀行,関西電力,近畿コカコーラ・ボトリング,セゾン生命,全日本空輸,大正製薬,大東京火災,日本アイ・ビー・エム,農林中央金庫(2名),野村證券,三井信託銀行,三菱信託銀行,吉岡税理事務所 |
4期(1996年卒) | 16名(男14/女2) | NTT,オリックス,全国地方銀行協会,住友クレジット,第一生命(2名),第二電電,電通,東京生命,東京電力,藤和不動産,日本生命,博報堂,富士通ゼネラル,三井生命,三菱商事 |
5期(1997年卒) | 17名(男13/女4) | LG電子ジャパン,大林組,サントリー,シティバンク・エヌ・エイ,スルガ銀行,第一勧業銀行2名,千葉興業銀行,中学校教諭,テトラ,電通,東芝,日本オラクル,博報堂(2名),村田製作所,安田火災海上 |
6期(1998年卒) | 15名(男10/女5) | NTTデータ通信,SAPジャパン,キヤノン,住友海上火災,デロイト・トーマツ・コンサルティング,東京スタイル,東京通信ネットワーク,東レ,凸版印刷,トヨタ自動車,日本石油,ポーラ化粧品,三井海上火災,村田製作所 |
7期(1999年卒) | 15名(男10/女5) | 朝日新聞,アンダーセン・コンサルティング,石川島播磨重工業,クラレ,講談社,国際デジタル通信,サントリー,GEキャピタルエジソン生命,JCB,大日本印刷,日商岩井,日本航空,日本電気,P&G,(英国留学1名) |
8期(2000年卒) | 15名(男11/女4) | アサヒビール,NTTドコモ,EBARA Engineering Singapore,KDD,興和火災海上,興和不動産,住友商事,ダイムラー・クライスラー日本,東京海上火災,藤和不動産,日本IBM,富士銀行(2名),本田技研工業,三井海上火災 |
9期(2001年卒) | 13名(男11/女2) | AFLAC,NHK,キーエンス,JTB,住友生命,電通,永谷園,プライスウォーターハウスクーパーズ,みずほフィナンシャルグループ,三菱商事,明治生命 |
10期(2002年卒) | 10名(男9/女1) | 伊勢丹,鹿島建設,七十七銀行,信金中央金庫,大和證券,大和證券エスエムビーシー,ダイトーコーポレーション,ディスコ,三菱商事,リクルート |
11期(2003年卒) | 13名(男11/女2) | 伊勢丹,スタッフサービス・ホールディング,電通テック,東急不動産,東京海上火災,日清食品,日本NCR,日本航空,日本通運,日本ユニシス(2名),三井住友銀行,リクルート |
12期(2004年卒) | 10名(男6/女4) | キリンビール,住友生命,損保ジャパン,大和ハウス工業,テレビ西日本,東京海上火災,東京電力,日本航空システム,三菱レイヨン,山崎製パン |
13期(2005年卒) | 13名(男10/女3) | インテック,インテリジェンス,オリックス,スパークスアセットマネジメント投信,デンソー,東京海上日動火災,凸版印刷,博報堂,ブリヂストン,リクルート・マネージメント・ソリューション,慶應義塾大学大学院経営管理研究科進学,日本航空,武田薬品工業 |
14期(2006年卒) | 14名(男9/女5) | あずさ監査法人,NTTデータ,慶應義塾大学大学院経済学研究科進学,ソフトバンクBB,千葉銀行,日本興亜損保,三井不動産販売,みずほインベスターズ証券(2名),みずほ銀行(2名),みずほフィナンシャルグループ,メタルワン,リクルートスタッフィング |
15期(2007年卒) | 11名(男9/女2) | IBMビジネスコンサルティングサービス,アクセンチュア,アジア・パシフィックランド・ジャパン・リミテッド,伊藤忠丸紅鉄鋼,キヤノン,住友ベークライト,積水ハウス,東京海上日動火災保険,日本ビジネスシステムズ,フジテレビジョン,三井住友銀行 |
16期(2008年卒) | 12名(男9/女3) | ウェザーニューズ,新日本製鐵,大和証券SMBC,東京海上日動火災(2名),博報堂,百五銀行,みずほフィナンシャルグループ,三井倉庫,三菱UFJ信託銀行,リクルート,リコー |
17期(2009年卒) | 15名(男7/女8) | インテリジェンス,シャープ,住友軽金属工業,住友不動産,損害保険ジャパン,大和証券(2名),大和証券SMBC(2名),東京海上日動火災保険,三井住友海上火災保険,三菱東京UFJ銀行,進路未定(公認会計士受験準備等3名) |
18期(2010年卒) | 12名(男10/女2) | NTT東日本,教員免許取得準備,慶應義塾,JR東日本,商船三井,住友商事,双日,東京海上日動火災,東北大学公共政策大学院進学,日本生命保険,三井物産,三菱UFJリース |
19期(2011年卒) | 7名(男7/女0) | NTT東日本,味の素,全国農業協同組合連合会,大和証券,野村證券,三菱東京UFJ銀行,三菱UFJモルガンスタンレー証券 |
20期(2012年卒) | 8名(男8/女0) | クオール,第一生命保険,蝶理,マツダ,三菱電機ビルテクノサービス,三菱プレシジョン,菱光産業 |
21期(2013年卒) | 6名(男6/女0) | 新日鐵住金,ソフトバンクテレコム,東京流通センター,日立ビルシステム,日野自動車,北陸銀行 |
22期(2014年卒) | 10名(男9/女1) | エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ,監査法人トーマツ,慶應義塾,商工組合中央金庫,全国農業協同組合連合会,日本トラスティ・サービス信託銀行,野村證券,富士通,みずほフィナンシャルグループ,りそなホールディングス |
23期(2015年卒) | 10名(男9/女1) | アイネス,SMBC日興証券,鹿島建設,公務員採用試験準備,東京海上日動火災保険,東京都庁,日本政策金融公庫,日本トラスティ・サービス信託銀行,楽天,りそなホールディングス |
24期(2016年卒) | 12名(男9/女3) | 海外大学留学,慶應義塾,さわやか信用金庫,GCAサヴィアン,スカイマーク,東京海上日動火災保険,凸版印刷,日本政策金融公庫,不二越,みずほフィナンシャル・グループ,三井住友銀行,三菱UFJリース |
25期(2017年卒) | 8名(男4/女4) | アビームコンサルティング,イーギャランティー,JR東海,本田技研工業,三菱電機,三菱東京UFJ銀行,三菱UFJニコス,留学(UC Irvine) |
26期(2018年卒) | 10名(男8/女2) | MJE,かんぽ生命保険,損害保険ジャパン日本興亜,第一生命保険,大同生命,野村證券,パナソニック,三菱東京UFJ銀行,留学(ベルビュー),ワークスアプリケーションズ |