延近研究会での学習について


I.輪 読

 (1)目 的

 高校までの学習が,基本的には決められた教科書をもとに教師によって与えられる知識を理解することが中心であったのに対して,大学での学習・研究の中心は,学生が自らテーマを設定し,その解答をさまざまな手段によって主体的に探究していくことにある。

 講義や学術文献などは絶対的なものとして受容されなければならないものではなく,むしろ,学生が疑問と検証の対象とすべきもの,乗り越えられるべきものとも言える。もちろん,講義や学術文献は,過去の研究の蓄積と教師や著者の研究を基礎としているのであるから,乗り越えるためにはまずこれらを理解しなければならない。

 しかし学生個々人の学習では,知識不足や研究方法の未熟によって,不十分な理解や偏った理解になりがちである。研究会は,共通のテーマを設定し,ゼミ員個人だけではなく共同の学習や各々の見解をぶつけ合う討論によって,他者の意見を理解し,自らの意見をまとめ表現するトレーニングを行ないながら,当該テーマの理解を深めていくことを目的としている。このためにテキストの輪読という方法を採る。

 (2)方 法

  報告者(レポータ)の役割

   1)報告レジュメの作成

         以下の内容を文章化してゼミでの報告・討論の基礎となるレジュメを作成する。

        (a)要約:

 テキストの担当箇所(1つの章や複数の節)の内容についてレポータ間で共同して理解する。著者の主張・内容が明確になるように要約する。
        (b)疑問点の提示:
 内容を理解する過程で生まれた疑問点について,輪読書の(注)・図表の出典や関連する文献にあたって解決するよう努力する。解決しきれなかった疑問点を提示する。また,解決できた疑問点についても内容の理解上必要と思われるものについて,ゼミ員に出題する形で提示する。
        (c)論点の提示:
 担当箇所の内容の一応の理解の上で,著者の主張に対する批判別の見解との対比,著者にはない視点の提示,著者の主張にそってはいるが時系列的な再整理国際比較など,そのテーマのより深い理解・展開のための論点を提示する。その場合,論点のみの提示ではなく,議論のたたき台となるようにレポータの見解を具体的に展開しなければならない。
   2)報告レジュメの形式上の注意
 要約は,担当箇所の分量にもよるが,参加者全員が輪読書を読んできているのが前提だからB4用紙1枚程度(2000字程度)にまとめる。まとめ方はレポータの理解と提示する論点を反映させて強弱(小テーマごとの内容の詳しさの程度,分量の多少)をつける。輪読書との照合に便利なように小テーマごとに輪読書のページ数を付す。

 疑問点や論点の提示の際にも同様に輪読書の関係ページ数をつける。参照した文献や参考文献がある場合や文章や資料を引用する場合にも必ず出典を明示すること。その方法は別に配布する「冬休みレポート・卒業論文執筆上の注意事項」に準ずること。

   3)レジュメの配布とゼミでの報告・討論

        (a)レジュメの配布:

 レジュメは,ゼミ員(および延近)の人数分をコピーして報告予定日の前週までに配布すること。
        (b)報告・討論:
 本ゼミ(4時限=3年のみ,5時限=3・4年合同)では,20分前後でレポータの担当箇所の内容の要約の報告,その後疑問点の説明と一般ゼミ員からの質疑に対する解答,論点の説明と討論の順で進める。これらの司会進行はレポータが行ない,指導教員は必要に応じてコメントするが,主体はあくまでレポータ・ゼミ員である。
   4)役割分担
 レジュメへの文章化や報告・司会はレポータ間で分担してよいが,要約・疑問点・論点の決定は必ずレポータ全員で協力して行ない,分担してはいけない
 一般ゼミ員(レポータ担当以外のゼミ員)の役割
 本ゼミまでにやっておくことは,レジュメの作成・配布以外はレポータと同じである。輪読書の内容を理解するために熟読し,疑問点を解決するよう努力し,論点を考えておくこと。

 本ゼミでは,レポータのレジュメや報告と自分の理解とを比較し,輪読書の内容やレジュメ・報告・疑問点の説明について疑問が残れば質問する。提出された論点以外に重要な論点があると思った場合には,新しい論点を提起することも重要である。

 討論においては,積極的に発言することはもちろん重要であるが,他者の意見を理解して討論が発展するような発言がなされるべきである。討論の流れを無視して自分の意見だけを言い合うことになれば,発言がいかに多くともそれは討論ではない。この意味で,自分独自の意見ではなくとも,討論の交通整理をする発言は(サーベイ論文のように)有意義である。

II.夏合宿と三田祭発表

 (1)夏合宿

        日程:

 7月下旬または9月上旬に2泊3日または3泊4日で,原則として3・4年生合同,全員参加で行なう。就職活動などにより,4年生全員参加が困難な場合には2回に分ける場合もある。
         内容:
 3年生は三田祭発表テーマに関する報告・討論(ディベート形式)
 4年生は卒論中間発表
 いずれも3・4年生合同で相互に質疑・コメント・アドバイスし合うこと。
         その他:
 全員が合宿し,学習し(当然!)・遊び(テニス!?)・飲み(酒!!)・語り合う(テーマは自由),まさに私のゼミの1期生から一貫する基本コンセプト;「よく学び,よく遊び,よく飲み,よく議論する」を実践する機会である。
 (2)三田祭論文
 最近では,本来の研究成果の発表の場というよりは入ゼミ案内・相談窓口化しているようであるが,学生主体で1つのテーマを設定し,全員が協力して報告書をまとめて研究発表をするというよい機会である。この原則を最重要のものとしてできるだけ良いものになるように努力してもらいたい。

三田祭論文はゼミの学習の中でもっとも学生の自主性を尊重しているが,報告書作成の過程で最低1度は報告書原稿のチェックを私に依頼すること(10月中)。もちろん求められれば何回でもアドバイスはする。

過去の三田祭論文のテーマは以下のとおり。
2003年度〜2004年度 「イラク戦争を考える」
2005年度「グローバリゼーション」
2006年度「格差社会」
2007年度「少子高齢化社会」
2008年度「新自由主義批判」
2009年度「小泉構造改革批判」
2010年度「EUソブリン危機の根源」
2011年度「国家債務危機」
2012年度「原子力発電と日米関係」
2013年度「在日米軍基地問題への視点」
2014年度「日本の安全保障」
2015年度「日本経済の構造変化」
2012年度の三田祭論文は経済学部ゼミナール委員会主催の三田祭論文コンクールで審査員特別賞を授与されました。審査委員長(名誉教授)が「すべての経済学部の学生が読むべき論文」高く評価されたためです。
III.冬休みレポートと卒業論文

 (1)冬休みレポート

 3年生は冬休み中にレポートを書き,1月の最初の本ゼミの時間に提出しなければならない。テーマは自由。ただし,私のゼミは現代資本主義論であって現代資本主義の抱えるさまざまな問題点を明らかにすることが基本テーマである。

どんなテーマであっても,それが何がしか現代資本主義の持つ問題点の一端を明らかにするものであることを期待する。卒業生名簿には卒論テーマを収録(Webサイト上には,各期卒業生の卒論テーマのほかに卒論の概要や参考文献も掲載)してあるので多少の参考にはなるかもしれない。形式等の詳細は別に配布する資料を参照。

 (2)卒業論文
 研究会の単位を取得するためには学則にあるように卒業論文を提出しなければならない。私の研究会では,さらに3年生の冬休みレポートの提出,4年生の4月の卒論テーマの提出,夏合宿での卒論中間報告・11月頃の最終報告,評価に値する水準の卒業論文の提出,以上がなければ単位は取得できないし,研究会を卒業したとは認められない。したがって,入ゼミ名簿に名前はあっても卒業者名簿には掲載されないことになる(実際に複数名存在する)。テーマや形式等については(1)と同じ。

冬休みレポート,卒業論文ともに,レポート・卒業論文執筆マニュアルにしたがって作成すること。
より具体的には,私の論文や著書を参考にすることを推奨する。

IV.その他:3分間スピーチ
 学習・討論だけではなく,とにかく人前で発言するトレーニング。それも短時間で自分を表現し,相手に印象づけることができるようになりたい。コンパや合宿では全員が短時間のスピーチをすることが慣例になっている。

内容は硬軟取りまぜて自由であるが,スピーチの間に少なくとも1度はウケル(笑わせる,感心させる,納得させる,泣かせるetc.)ことが条件。ただし,仲間オチ,下ネタ,差別ネタ,イッキ飲みなどは反則技として厳禁


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