第3回 拡大教科書の在り方に関する公開シンポジウム

弱視教育における拡大教科書の役割と課題を考える

中野 泰志(慶應義塾大学経済学部、自然科学研究教育センター)


開催趣旨

 2008年6月10日「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(教科書バリアフリー法)が国会において成立し、同年9月17日に施行されました。この法律の目的は、拡大教科書等の障害のある児童生徒が検定教科書に代えて使用する「教科用特定図書等」の普及促進を図り、児童生徒が障害その他の特性の有無にかかわらず十分な教育が受けられる学校教育の推進に資することです。拡大教科書の普及促進に関しては、文部科学大臣がその標準的な規格(標準規格)を策定・公表することとし、各教科書発行者は、それに適合する標準的な拡大教科書を発行する努力義務を負うこととなりました。また、教科書デジタルデータの提供については、教科書発行者に文部科学大臣等へのデータ提供義務が課され、当該提供されたデータをボランティア団体等へ円滑に提供する仕組みを構築することとなりました。そして、教科書発行者やボランティア等のご尽力により、義務教育段階ではほとんどの教科書に対応する拡大教科書に作成され、小・中学校に通う視覚に障害のある児童生徒への拡大教科書等の給与実績は、飛躍的に増えてきています。

 上述のように、現在、弱視教育において拡大教科書は注目されていますが、どのような拡大教科書を作成すればよいかに関しては、児童・生徒の視機能、発達段階、将来の進路等に応じたきめ細かな議論が必要です。また、児童生徒が十分な教育を受けることができるかどうかは、児童生徒の障害特性や発達段階等の個人特性と教材等の種類、教材等の活用方法、指導方法、環境整備等の環境特性との交互作用で決まると考えられます。そのため、様々な観点から総合的にこの問題を考えていく必要があります。私達の研究室では、一昨年度から、これらの問題を考えるために、文部科学省及び関係機関の協力により、基礎データを収集してきました。例えば、昨年度は、盲学校教員1,848人、弱視児童生徒1,209人(盲学校338人、通常学級636人、弱視特別支援学級138人、弱視通級指導教室97人)、教科書発行者25社(小中学校15社、高等学校10社)、ボランティア72団体、発達障害者8人の調査を実施しました。本シンポジウムでは、これらのデータの紹介した上で、今後の弱視教育と拡大教科書の在り方について意見交換を行いたいと思います。ぜひ、多くの関係者にご参集いただきたいと思います。なお、本シンポジウムは、文部科学省科学研究費「拡大教科書選定のための評価システムの開発」(課題番号:22330261)の研究の一貫として実施いたします。

内容

資料

その他


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