平成23年7月5日 福祉のまちづくり学会情報障害特別研究委員会平成23年度第1回勉強会
「節電が視覚障害者の移動に及ぼす影響」
東京都盲人福祉協会 金澤 真理
東日本大震災で被害にあわれたり、困難を強いられている方々に心よりお見舞い申し上げます。首都圏では福島の原発の事故で電力不足のため節電を求められており、駅や建物で消灯や一部の経路しか使えないなど単独歩行する視覚障害者にかなりの影響が出ています。当初よりは改善が図られてきましたが真夏の電力不足からさらに厳しい状況が予想されます。節電の重要性も理解しますし必要性を拒むものではありません。「どう節電をしたらいいのか」を探るために視覚障害者が危険を感じたり、不安になったり、外出しにくくなっている事例を紹介します。
1.視覚障害者の移動について
視覚障害者と一言でいっても白杖を持っていても視覚活用しながら移動したり、白杖を持っていないロービジョンの人もいます。白杖を持っていても照明や内照式サインの掲示などを手がかりに方向や階段などの位置を確認しながら歩いている人がいます。また、視覚活用できなくてもいつも使い慣れた経路なら問題なく移動しています。このようにそれぞれがアクセスしていますが視覚障害者は「突然の変化」には対応できずにいつもの経路が閉ざされたり、照度が落ちたりすると動けなくなってしまいます。一方、白杖を持っていないロービジョンの人でもいつもの明るさなら問題がありませんが、照度がおちるとたちまち分からなくなって身動きが取れなくなることもあります。外部にも気づかれず、大きな困難を抱えています。特に網膜色素変性症のような病気はちょっとでも暗くなると見えにくくなるという症状があり、少しでも照度が落ちると一般の人には考えられないほど極端に見えなくなってしまう人も多くいます。
2.重度視覚障碍者の等級
- 1級:両眼の視力の和が0.01以下のもの。
- 2級:両眼の視力の和が0.02以上0.04以下あるいは両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの。(視力いついては屈折異常がある場合は矯正視力で測ったものをいう)
- (3級〜6級は省略)
このように視覚障害者の等級で最重度でも0だけでないことがわかります。
3.駅や建物などの困っている事例
(1) エスカレータ
- いつも使っていたエスカレータが突然動かなくなっていても気づかずロープに
前のめりに倒れそうになったり、コーンに気づかずつまづき危険だった。
- 同じ経路しか使っていなかったので、エスカレータが動いていないとどこに階
段があるのか分からず困った。
- 行きは動いていたので帰りも乗ろうとしたら動いていないので困ってしまった。
- エスカレーターが動いていたり、止まっていたり、どこが使えるのか分からず
困った。
(2) 階段
- 階段の位置が消灯や明かりが目減りしているので分からず困った。
- 階段の始まりと終わりはせめて明るくして欲しい。暗くて怖い。
- 特に地下鉄の構内の階段の始まりが分かりにくく、上りも下りも踏み外しそう
になって危ない。
- 区役所や公共施設でも電気が間引いて階段の発見ができず困っている。
- いつもの黄色い線が見えなくなって怖い。
(3) エレベータ
- エレベータを使おうと思って待っていても来なかった。止まっているのに気づかなかった。
- エスカレータが動いていなかったのでエレベータに案内されたが降りたら自分がどの位置にいるのか分からず困った。
(4) 改札
- いつもなら改札の位置が明るさで分かるのに、暗くて位置が分からず困った。
- 暗くて自動改札の使えるものが分からず困った。
(5) その他
- 蛍光灯の明かりを頼りに方向をとって歩いているが、蛍光灯が数本おきにしかついておらず、方向がとりにくく困っている。
- 内照板の宣伝を手がかりに歩いていたのに消えてしまったので方向や位置が確認できなくてうろうろしたり迷ったりすることが多くなった。
- 照明を手がかりに歩いていたのに・コンコースが暗くて方向がつかめず、恐る恐る歩いている。
- ホームは危険なのでなるべくホームを歩かないようにしていたが、いつものエスカレータが使えずホームを歩かなくてはならなくなった。
- 暗くなってますます入り口の位置がわからなくなった。
- 通路が暗くてこのまま歩いていていいのか不安になる。
- 地下鉄の通路が暗くて困る。
- 内照板のサインが見えなくなって困った。
- いつも使っていたサインが見えなくなって困った。
- 限られた通路しか使えないので人が殺到して怖い。
- 日中でホームが外など明るい所から、消灯された電車に乗ると人がどこにいるのか、手すりが空いているのか、出口が分からず困った。
- 暗いのと不注意で階段から落ちた。
- 今まではそんなことはなかったのに暗くて柱にぶつかった。
<戻る>