管理者:中野 泰志(慶應義塾大学)
東日本大震災をきっかけに、災害時の障害者への支援の在り方が議論されている。特に、東日本大震災の際に、個人情報保護や行政機関の守秘義務が壁となり、避難・誘導や安否確認等が出来なかった反省に基づき、要援護者登録の必要性等が指摘されている。しかし、適切な支援システムを構築する際には、緊急時に、障害当事者がどこで、どのような活動をしており、どんな支援を必要としていたか等に関するエビデンス等を考慮する必要がある。本シンポジウムでは、震災当時、情報・コミュニケーション面で多くの課題に遭遇した視覚障害に焦点を絞り、当事者のニーズに基づいた支援の在り方に関して、実態調査、当事者運動、ICT支援の3つの観点から議論を行う。
我々は、東日本大震災時に、視覚障害者がどこでどのような活動をしており、どんな支援が必要だったのかについて、日本盲人会連合と日本網膜色素変性症協会の協力を得て、大規模な全国調査を実施した。1,252人の有効回答を分析した結果、援護者登録を行った人の割合が低いことや日中の活動場所が居住地域と異なっているケースが多いことがわかった。本報告では、調査結果の概要を紹介すると共に避難や安否システムを構築する際の留意点について話題提供する。
視覚障害者にとって防災対策は、なんとかしたいがどうにもしがたいやっかいものである。その本音を探り、当事者視点から具体的提案をしたいと考え、セミナーを開催した。今回は、セミナーの場で語られた当事者の声から代表的なものをピックアップし、提言としたい。
災害発生時に自力で避難、帰宅することが困難な視覚障害者が存在する。 本研究ではIndoor Message System (屋内GPS)とGPSを利用し、災害時に支援が必要な視覚障害者の位置情報を救援者に知らせるシステムをデザインする。これにより、円滑に支援を受けられる様にすることを目標にしている。また、今回のシステムでは救援者として消防や救急だけではなく、施設管理者や家族や友人も対象としている。本報告では、現状のシステム設計と、実証実験の予定、課題について説明する。
障害当事者が望む災害時の支援のあり方