公共経済学 2000年度秋学期試験問題

担当:土居丈朗

 ※ 試験時間:60分、持込不可

1.公共経済学で重要である次の専門用語について、それぞれの内容(定義)を答案用紙2行以内で説明せよ。
  1. パレート最適
  2. 排除性
  3. 競合性
  4. (純粋)公共財
  5. 地方公共財供給のパレート最適条件


2.2人の家計がいる経済で、1種類の私的財と純粋公共財があるとする。このとき、家計の効用関数が、
    家計Aの効用関数: UA(xA, G)=5xAG
    家計Bの効用関数: UB(xB, G)=3xBG
       ただし、xA:家計Aの私的財消費量
            xB:家計Bの私的財消費量
            G:公共財供給量
であったとする。公共財を生産するために私的財が必要で、その生産可能曲線が、
    G=x/8
       ただし、xは公共財供給に用いるための私的財の量
(公共財と私的財の限界変形率が8で一定)であったとする。このとき、次の@〜Dの問いについて答えよ。

@この経済全体で私的財が960単位あったとする。すなわち、
    xA+xB+x=960
である。この経済での公共財の最適供給量はいくらになるか答えよ。
Aいま、家計Aの所得が360、家計Bの所得が600であったとする。そこで、公共財を2人の家計が自発的に供給しようとしていて、公共財と私的財の限界変形率(P)が8で一定であるとする。このとき、公共財供給量はいくらになるか答えよ。
B家計Aの所得が360、家計Bの所得が600であったが、政府が家計Bの所得から120だけ徴税し、これをそのまま家計Aに120だけ給付したとする。今、公共財を2人の家計が自発的に供給し、公共財と私的財の限界変形率(P)が8で一定であるとする。このとき、経済全体での公共財の供給量はいくらになるか答えよ。
CAとBの計算結果から、次のような命題が示唆される。その命題について述べた次の文章を読み、文章中にある空欄T〜Vに、当てはまる語句をそれぞれ答えよ。
当初家計間で所得格差がある状態で両家計が自発的に公共財を供給した場合の公共財供給量(Aの公共財供給量)と比べて、政府による所得再分配政策を行った場合の公共財供給量(Bの公共財供給量)は[ T ]。さらに、各家計の私的財消費量は両者の場合で同じになっている。このように、公共財を自発的に供給する状況([ U ]均衡)の下では、所得再分配政策が公共財供給量に影響を与え[ V ]ことを、公共財の中立命題という。
Dいま、家計Aの所得が360、家計Bの所得が600であったとする。今、公共財を政府が供給し、これに対して2人の家計に(偽りなく)費用の負担を求めるものとする。公共財と私的財の限界変形率(P)が8で一定であるとする。このとき、家計Aの負担比率hA、家計Bの負担比率hBはそれぞれいくらになるか答えよ。


3.公共経済学に関する次の@〜Dの文章について、正しいものに○、誤っているものに×、どちらとも言えないものに△を付けなさい。また、その理由も説明せよ。
@国から地方への補助金は、使途を定めて一定の率で配分する特定定率補助金の方が、使途を定めずに配分する一般定額補助金よりも、超過負担が生じない点で効率的である。
A各財の需要が相互に独立である場合、同じ税率(1単位あたり税額)で課税したとして、需要の(自己)価格弾力性が小さい財に課税する方が、需要の(自己)価格弾力性が大きい財に課税するよりも、超過負担が生じない点で効率的である。
B比例所得税(限界税率が一定の所得税)を課税する場合、その税率は100%にする時が最も超過負担が生じない点で効率的である。
C低所得者に補助金を給付する場合に、ある水準以下の所得しか得られない人に対して一定額(最低生活水準)に達するように生活保護給付を与えるよりも、負の所得税制度を導入して補助金を給付した方が、超過負担が小さくなる意味でより効率的である。
Dクラーク=グローブス・メカニズムによる公共財供給は、財政収支が均衡するが、パレート最適にはならない。

試験問題の正解


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