公共選択論 2000年度秋学期試験問題

担当:土居丈朗

 ※ 試験時間:60分、テキスト、配付プリント、自筆ノートのみ持込可

1.経済政策を公共選択の理論を用いて考える上で重要な、次の専門用語について、それぞれの内容(定義)を答案用紙2行以内で説明せよ。
  1. 合意の計算
  2. 党派的景気循環
  3. デュベルジェ(Duverger)の法則
  4. 投票のパラドックス
  5. 是認投票(制度)
  6. 公債の中立命題


2.公債の持続可能性について、次の問いの答えよ。
@公債の持続可能性を考える上で重要な概念である、基礎的財政収支とは何か、その定義を述べよ。
A基礎的財政収支が黒字になることは、どのような財政状態であることを意味するか答えよ。また、基礎的財政収支が赤字になることは、どのような財政状態であることを意味するか答えよ。
B公債の持続可能性について述べた次の文章を読み、文章中にある空欄T〜Zに、当てはまる語句をそれぞれ答えよ。
 公債が持続可能であるとは、経済学の定義では、政府保有財産の売却収入を用いず、租税を公債の利払い・償還財源として、今後も従来の財政運営のままで公債を発行し続けても、無限先の将来において公債残高が[ T ]しない、ということである。公債残高が将来無限に[ T ]しないということは、将来的には財政が破綻しないことを意味する。逆に、公債残高が将来無限に[ T ]するということは、将来のいずれかの時点で財政が破綻してしまうことを意味する。
 近年提示された政府債務の持続可能性の条件とは、前年度末公債残高対GDP比が上昇したときには、基礎的財政収支対GDP比を[ U ]させる財政運営を行う、という条件である。これが直観的に意味することは、公債残高がそれほど多くないときに基礎的財政収支が赤字であったとしても、公債残高がある水準以上大きくなったときには、原則として[ V ]を改善する(赤字を減らす、あるいは収支を黒字化する)ように財政運営し、かつその運営ルールから大きく逸脱しなければ、公債は持続可能である(財政は破綻[ W ])いうことである。
 もし前年度の財政運営で公債残高対GDP比が上昇するだけ公債残高が増加した場合、政府は今年度の財政運営をどうすればよいか、を考えたい。前年度末公債残高対GDP比が大きくなったにもかかわらず、今年度の基礎的財政収支の赤字幅が[ X ]するような財政運営をとれば、前年度よりもさらに公債を多く発行することになり、公債残高はさらに増加する。このような運営を続ければ、やがて公債残高が返済しきれないほどまで累増して、財政は破綻する(政府債務は持続可能でない)ことになる。
 逆に、前年度末公債残高対GDP比が上昇したのに対して、今年度の基礎的財政収支の赤字幅を[ Y ]するような財政運営をとれば、公債発行の増加が抑制される(ただし、基礎的財政収支が赤字である以上、公債残高の[ Z ]は避けられない)。これを継続する財政運営をとれば、基礎的財政収支は改善して、やがて黒字になり、公債残高はこれ以上[ Z ]しなくなるため、財政は破綻しない(政府債務は持続可能である)といえる。
CBの文章を踏まえれば、現時点での日本の財政運営はどのような状態にあるといえるか答えよ。また、その理由を述べよ。(注意:財政運営の実情を問うのであって、財政運営のあるべき姿について、ここで答える必要はない)


3.日本の政治・経済の現状を鑑み、今すぐに取り組むべき最も必要な改革は何か、この講義で学んだことを踏まえて、あなたの考えを次の条件を満たすように述べよ。
@最初に、「今すぐに取り組むべきだとあなたが考える最も必要な改革」を1つだけ書きなさい。例えば、財政構造改革、消費税率の引上げ、定数是正、日本銀行の独立性の強化、公的年金の民営化、地方自治体への税源移譲、というように示すだけでよい(これら以外も可である)。それは、あなたが後に書くその内容と理由とに合致したものでなければならない。
Aただし、政治家のモラルの向上、官僚の意識改革、民間企業での社内賃金格差の是正、というように、それ自体が法律・制度の改正や政策の変更とは直接関係のないものは不可とする。
B次に、「今すぐに取り組むべきだとあなたが考える最も必要な改革」について、その内容を具体的に書き、なぜ改革しなければならないかについての理由や現状認識を書きなさい。
Cあなたの考えを述べる際、この講義で学んだことを踏まえて、経済学・公共選択の理論の考え方を生かして書きなさい。この講義は経済学部の講義であるから、法学、政治学、社会学などの考え方で、経済学・公共選択の理論の考え方と相容れないものは認められない。

試験問題の正解


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