研究実績の概要
2015年
基本理論分析
藤原・グレーヴァは自発的継続囚人のジレンマで二戦略均衡が新しく定義された安定性を満たすことを示し、それと同値な六戦略均衡の存在を示した。藤原・グレーヴァ・鈴木は、この二戦略均衡と単一戦略均衡の利得比較を行った。これらの研究により、自発的にパートナーシップを継続するモデルには、協力者と非協力者が共存するNash 均衡があり、さらに、あるもっともらしい条件が満たされる場合、より強い進化的安定性も満たす上に、任意の信頼構築均衡より効率的になることを示した。これらの研究結果は国内外の学会で報告するとともに、藤原・グレーヴァ論文はSSRNで公開、藤原・グレーヴァ・鈴木論文はEconomic Theory 誌に刊行した。
実験経済学との関連の分析
実験経済学との関連の研究も進み、SAET Conference や国内のワークショップで途中経過を報告した。また、この報告をもとに下記の「論文作成と学会報告」に挙げた論文執筆の準備を進めている。これまでの実験と大きく異なる結果としては、同じ相手とのゲームの2期目の協力率が非常に高いということが挙げられる。
実験設計・実施・分析
2014年に実験デザインを変更したことから、十分なデータ数を確保するために実験を重ねて実施した。特に、蓄積したデータから,理論では考慮していなかった戦略も含めた新たな戦略類型を考察する必要を確認し,データ分析を進めた。パートナーシップの継続・非継続を内生的に選択することに,理論論文では想定しなかったシグナルの機能が備わっている可能性がデータ分析から浮かびあがり,更なる分析の必要性を確認した。なお今回は、最後にアンケートも行い、被験者の「予想の変化」の様子についても情報を得ることができた。
論文作成と学会報告
上記「基本理論分析」で挙げた基本理論の論文の他に、上記「実験論文との関連の分析」に挙げたように、実験の分析結果を報告しフィードバックを得ながら論文執筆を進めている。
現在までの進捗状況
おおむね順調に進展している。
基本理論分析は順調で、Economic Theory 誌に論文が掲載された。実験に関しても、パイロット実験1回と本実験4回を行い、分析を重ね論文執筆にとりかかっている。ただ、途中で予想外の実験分析の結果が得られ、それに伴い最後の実験を2015年11・12月に行ったため、分析と学会報告が完了しておらず研究期間を1年間延長した。
2014年
基本理論分析
藤原・グレーヴァは自発的継続囚人のジレンマで二戦略均衡が新しく定義された安定性を満たすことを示し、二戦略均衡と同値な六戦略均衡の存在を示した。藤原・グレーヴァ・鈴木は、この二戦略均衡と単一戦略均衡の利得比較を行った。これらの研究結果は論文にまとめてSSRNで公開し国内外の学会で報告した。後者は国際的専門誌に投稿し、改訂・再投稿の段階にある。
計6回の研究会を行い、自発的継続囚人のジレンマの実験結果の理論的検討を行った。実験結果は上記の二戦略均衡を概ね支持するが、そこに含まれない戦略が一定程度存在することが注目され、それを含む六戦略均衡という理論結果につながった。また、単純な二戦略ではないものの一期後に協力する戦略の割合が理論値より大きいことも注目され、被験者間の暗黙のコミュニケーションが存在する可能性を検討した。資料の収集はアルバイトを使用し、計算のチェックはRAを雇った。
実験経済学との関連の分析
西村・中泉を中心に、藤原・鈴木・グレーヴァ・松井を加えた6名で社会ゲームの観点から、実験結果の再検討を行った。検討すべき実験研究の焦点を絞り、社会ゲームの実験室内再現性に関する理論的検証を理論グループとの共同作業で行った。
実験設計・実施・分析
2012-13年度の実験の成果をふまえて、10月-11月に第2回目の本実験を行った。上記1の被験者間の暗黙のコミュニケーションが存在するかどうかについて、新たな実験を設計・実施した。謝金の支払いは業者を使った。前年度までRAを務めた安井佑太氏が学振の研究員になったため、新たに研究協力者を依頼した。西村・安井とRAが行ったデータ分析の結果を計3回の研究会で全員で検討し、実験の再設計・論文の執筆等について議論した。
学会報告
基本理論の分析が進んだので、奥野、グレーヴァ、鈴木がいくつかの学会で論文報告を行い、フィードバックを得た。
2013年
基本理論分析
基本理論分析:藤原・グレーヴァが自発的継続囚人のジレンマという社会ゲームの一つにおいて、特定の二戦略均衡がもっともらしい均衡であり、伝統的概念を超えた新しい定義の下で進化的に安定になることを示した。また、藤原・グレーヴァ・鈴木が、この二戦略均衡と単一戦略均衡の利得の比較を行った。これらの研究結果は論文にまとめてSSRNにて公開するとともに国内外の学会で報告しており、現在は国際的専門誌への投稿のために改訂を重ねている段階である。
その他に、都内の大学で計9回の研究会を行い、これまでの実験結果を踏まえて、自発的継続囚人のジレンマにおける上記の二戦略均衡以外のいくつかの注目すべき戦略や、情報への反応、均衡への移行過程などについて、理論分析の発展に向けた議論を藤原を中心に全員で行った。資料の収集にはアルバイトを使用し、計算のチェックにはRAを雇った。
実験経済学との関連の分析
実験経済学との関連の分析:西村・中泉を中心に、藤原・鈴木・グレーヴァを加えた5名で社会ゲームの観点から、既存の実験結果の再検討を行った。検討すべき実験研究の焦点を絞り、社会ゲームの実験室内再現性に関する理論的検証を理論グループとの共同作業で行った。
実験設計
2012年度に行ったパイロット実験の成果をふまえて、全員で本実験の設計について検討した。そして西村・鈴木およびRAが何度か会合やテストランを重ねながら準備した上で12月に本実験を行った。謝金の支払いには業者を使った。西村とRAが行ったデータ分析の結果を研究会で全員で検討し、理論の発展・論文の執筆・今後行うべき実験について議論した。
学会報告
基本理論の分析が進んだので、奥野、グレーヴァ、鈴木がいくつかの学会で論文報告を行い、フィードバックを得た。
2012年
基本理論分析
藤原、松井、グレーヴァ、鈴木の4人で社会ゲームの基本モデルを構築し、社会ゲームに特徴的な均衡の性質を調べ始めた。Mathematicaなどの数学ソフトを活用した。計算のチェック、資料の収集にアルバイトを使用した。月1~2回の会合を都内の大学で行い、分析を進めてきた。結果として、共同論文を2本ほど書き始めており、25年度にはそれらの論文を国際学会で報告し、あるいは専門誌に投稿できる準備が整いつつある。
実験経済学との関連の分析
西村・中泉を中心に、藤原・鈴木・グレーヴァを加えた5名で社会ゲームの観点から、既存の実験結果の再検討を行った。検討すべき実験研究の焦点を絞り、社会ゲームの実験室内再現性に関する理論的検証を理論グループとの共同作業で行っている。パイロット実験の準備とその結果の解析のために、都内で計4回の会合を開いた。
実験設計
理論に適合する実験の設計を全員で考えた。西村が実験研究の方法論に関する知見を提供し、実験設計のノウハウを全員が学んだ。並行して実験室で使用するためのソフトを鈴木が主となって作った。
パイロット実験
2012年12月に東京大学にてパイロット実験を行った。実験の補助としてアルバイトを雇い、謝金の支払いには業者を使った。西村・鈴木に加えて、補助者として雇用した大学院生の知見も得て、パイロット実験の結果を解析すると共に、25年度以降に行なう予定の本実験の準備作業を始めた。
学会報告
基本理論の分析が進んだので、藤原、グレーヴァ、鈴木がいくつかの学会で論文報告を行い、フィードバックを得た。