2017年度(平成29年度)報告

・ 研究実績の概要

理論分析においては、基本モデルであるVSRPDモデルの分析においてまだ刊行していない部分として日本における実験の知見から発見された「寛容な戦略」を含む均衡の存在と安定性を分析した論文、"Long-term Cooperation and Diverse Behavior Patterns under Voluntary Partnerships" (グレーヴァ、藤原共著)をまとめ、Econometric Society の北米夏期大会およびヨーロッパ大会にて報告した。VSRPDモデルの日本での実験データ分析については、実際の被験者の行動を戦略に分類する作業および、最尤法による戦略の推定の作業を、RAと実験班およびグレーヴァで進めている。その成果は"Voluntary Partnerships, Cooperation, and Coordination"(仮題)として草稿にまとめつつある。国際実験としては2017年9月にパキスタンにて2回の実験を行った。そのデータについてはRAを使って初期分析を行いつつあるが、日本のデータとは多少異なる傾向が見られる。

・ 現在までの進捗状況:おおむね順調に進展している

まずパキスタンでの実験を計画よりも早く2回行うことができたのが非常によかった。そのおかげで理論分析の時間も増え、国際学会での論文報告も予定より多く行うことができた。ただし、VSRPD基本モデルの理論分析の論文はトップジャーナルから順に投稿しているため、時間がかかっている。国内実験データの分析については、戦略の定義にミスがあったため、RAの作業のやり直しが行われたがそれ以降は順調に戦略分類、最尤法のための整理が進んでいる。パキスタンでの実験のデータの詳細な分析はその後に行うということは予定通りである。

・ 今後の研究の推進方策

理論班はまずはVSRPD基本モデルの分析論文の国際学術雑誌での刊行を目指し、改訂を早めに完成させる。その後、限定合理的プレイヤーを導入したモデルについても、できる限り2018年度に完成させるよう努力する。実験班とグレーヴァは引き続き日本の実験データを分析した論文の草稿の完成を最優先とし、並行してパキスタンのデータの分析にも着手する。パキスタンの実験はあと2回は行わないと日本の実験と比較できるだけのデータがそろわないので、なるべく早めに行う。