世界的金融・経済危機の構造
(2016年度)

The Structure of
the Financial and Economic Crisis of
Global Economy

a.y. 2016


What's New

この講義は2016年度で終了しました。
なお,講義内容の基幹部分は「独占資本主義論」の講義の後半で取り扱います。
Introduction
サブプライム・ローン問題を発端として2008年秋から本格化したアメリカの金融・経済危機は急速に世界中に拡大していき,世界経済は「百年に一度」の危機に陥ったと言われた。危機回避のためにアメリカや各国政府が膨張的な財政・金融政策や大規模な公的資金投入を実行したことによって,09年後半ごろから各国とも経済成長率は回復傾向に転じたが,実体経済の本格的な景気回復の兆しは見えず停滞は長期化の様相を呈している。
財政膨張によって各国政府の債務残高は急速に膨らみ,09年末にはドバイ・ショックやEU諸国のソブリン危機が次々と発生し,世界経済はいっそう不安定化している。一国の金融危機が他国や世界経済に急速で多大な影響を与えることは,1990年代後半のアジア通貨危機やロシア経済危機などの一連の危機にもみられたが,今回はその震源地がアメリカであったためにその影響の広がりと深刻さは特別の意味をもっている。
冷戦終結からソ連・社会主義圏の崩壊以降の90年代の文字通りのグローバリゼーション,とりわけ膨大な資金が投機的な金融取引の発達によってグローバルに瞬時に駆け巡る構造が成立したことが,90年代後半以降の金融危機の頻発と世界経済の不安定化という事態の背景にある。そうした構造は,第二次世界大戦後にアメリカが主導して戦後資本主義世界体制を構築しさらにその体制が歴史的変容を遂げるなかで,アメリカがその覇権と「繁栄」の維持のために採った世界戦略と諸政策によって形成されてきた構造なのである。
本講義は,現在進行中の金融・経済危機の経過や直接の原因を解説するのではなく,このような危機をもたらすに至った,戦後資本主義世界体制とその危機の構造を明らかにすることを目的とする。なぜなら,現在の危機は1971年の金・ドル交換停止以降,アメリカがその「繁栄」の維持のために採ってきた諸政策が新たな危機を生み,その危機への対応のための政策がまた新たな危機を生むという構造の結果だからである。この理解に立つことによってはじめて,現在の世界的金融・経済危機の意味を充分に考察することが可能となる。
【講義計画】
[T] 戦後資本主義世界体制の構築とその変質
 1 冷戦体制― アメリカの恒常的軍拡体制
 2 アメリカ主導の国際経済体制とその変質
[U] グローバリゼーションと投機的金融取引の盛行
 3 レーガン政策と基軸通貨特権の危機
 4 冷戦の終結とグローバリゼーションの進展
 5 「新帝国主義」戦略と「対テロ戦争」
 6 投機的金融取引の盛行と世界的金融危機
【テキスト】
延近 充『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(御茶の水書房,2012年)の第2部以降を講義します。
出版社の在庫が限られているようです。アマゾンなどのネット通販サイトにはまだ在庫があるようです。
もし手に入らなかった場合は,延近 充『21世紀のマルクス経済学』(慶應義塾大学出版会,2015年)を利用してください。
テキストの誤植・訂正のお知らせ
『薄氷の帝国 アメリカ』中に誤植や誤り・不正確な部分がありました。恐縮ですが,すでにご購入の方は訂正をお願いいたします。

Information

【学習方法】

講義内容を理解するためには授業に出席することが大前提なのは言うまでもないことですが,私の講義では履修者の理解を支援するため,以下のような講義方法をとります(履修者数によっては変更の可能性があります)。この方法に沿って学習されることを強く推奨します。
(1) 講義の1週間前までに講義資料ファイルをアップしますので,履修者は講義資料ファイルをダウンロードしてください。ダウンロードは履修者のみが可能です。
ファイルのダウンロード・ページへのログイン方法は第1回講義で説明しますので,履修者は必ず出席してください。やむをえない事情で第1回講義に欠席した人はメールで問い合わせてください(氏名・学年・クラス・学籍番号と欠席理由を明記すること)。なお,履修申告終了後,履修者名簿で履修が確認できてから回答します。
ログイン方法は第2回講義でも提示します。どちらも欠席した学生はあらためてメールで問い合わせてください。 
初回講義用の講義資料MS Wordファイル版またはPDFファイル版どちらかを選んでダウンロードし,初回講義の際に持参してください(PCの持込み可)。講義は講義資料を持参していることを前提として進めます。
(2) 履修者は講義資料を参考にしながらテキストを読んで予習しておいてください。
(3) 講義では履修者が講義資料を持っていることを前提として説明します。講義を聴きながら講義資料にノートするなどして内容を理解するよう努力してください。また,講義後にも理解をより深めるためにノートを再整理されることを勧めます。
(4) 講義内容の一区切りごとに「授業内レポート」課題を出題します。「課題」は該当講義内容の重要部分をテーマとしたものですので,ノート・テキストなどを参考にして自分の力でレポートにまとめてください。
レポートの作成・提出は義務ではありませんが,その作業によって講義内容の理解がより確実なものになり,定期試験前の勉強は格段に容易になるはずです。レポートの内容によって定期試験の点数に加算します。配点は満点の比率で,定期試験:レポート=100:25程度の予定です。
(5) 「課題」の提出期限後に,論述のための重要ポイントについての解説を授業内レポートのウェブ・ページに掲載します。自分の書いたレポートと比較し不十分だった点を改良してまとめなおすことを推奨します。講義内容の正しい理解とその論述のトレーニングに役立ちます。

Lecture Note

講義の際に使用する講義資料のファイル(Microsoft Word版またはpdfファイル)です。掲載の目的は,講義でとりあげられる内容を前もって知らせ,またテキストを読むうえでの指針を提供することで,皆さんの予習の助けとするためです。該当部分の講義が終われば削除します。この資料があれば講義を聴かなくても講義内容が理解できるというものでは決してありません。くれぐれも誤解のないように!
履修者以外の方で,この科目の分野を真摯に学ぶためにわたしの講義資料を利用したい方は,メールでご相談ください(匿名不可)。ただし,必ずしもご希望にそえるとは限りませんのでご承知おきください。

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