2019年度PDF版拡大図書に関する研究
慶應義塾大学「PDF版拡大図書」
小中学校におけるPDF版拡大図書に関する調査研究
特別支援学校(視覚障害等)高等部における教科書デジタルデータ活用に関する調査研究
研究代表者:中野 泰志
(慶應義塾大学経済学部)
更新日:2020年2月11日
1.はじめに
應義塾大学中野泰志研究室では、長年、文部科学省初等中等教育局の委託を受け、視覚に障害のある児童生徒のための教科用特定図書(拡大教科書等)に関する実践的研究を実施しています。2013年度からは、紙の検定教科書と同じレイアウトを保持しつつ、文字サイズやフォント等を柔軟に変更できるデジタルの教科用特定図書として「PDF版拡大図書」の制作・配布を行ってきました。お陰さまで、PDF版拡大図書は好評で、2018年度は、延べ5,557冊のPDF版拡大図書を390人の視覚障害のある児童生徒に配布し、調査研究を実施することが出来ました。PDF版拡大図書を希望する児童生徒は、年々、増加しており、ニーズも多様化してきました。そこで、今年度は、広島大学の氏間和仁研究室と連携し、以下の通り、事業を整理しました。これまでよりも柔軟なニーズに対応できるようになりましたが、手続き等が昨年度までとは異なりますので、ご注意ください。なお、広島大学が提供する予定の「文字・画像付き音声教材」については、氏間先生にお問い合わせください。
【慶應義塾大学と広島大学の役割分担】
- 慶應義塾大学が提供する「PDF版拡大図書」
- 広島大学が提供する「文字・画像付き音声教材」
- 対象:発達障害等のある小中高校生
- 事業主体:文部科学省初等中等教育局教科書課の受託事業
PDF版拡大図書は、慶應義塾大学中野泰志研究室が作成した教科書・教材閲覧用アプリ「UDブラウザ」用のデジタル教材です。本事業において、PDF版拡大図書を無償で提供させていただきますので、このPDF版拡大図書を授業や家庭学習においてご活用いただき、運用上の課題や利便性等についてアンケート調査等にご協力くださるようにお願いいたします。また、年度末に実践報告会を実施しますが、実践報告をしていただける学校(希望者が多い場合には選考させていただきます)には、交通費等を支給させていただきます。
2.本研究の目的
- 慶應義塾大学中野泰志研究室「小中学校におけるPDF版拡大図書に関する調査研究」事業
本事業は、慶應義塾大学中野泰志研究室が、著作権法施行令第2条第1項第2号の規定により視覚障害者等のための複製等が認められる者として作成した小中学生用PDF版拡大図書の効果に関する調査研究として実施します。本事業において、「PDF版拡大図書」を無償で提供させていただきますので、このPDF版拡大図書を授業や家庭学習においてご活用いただき、紙の拡大教科書との比較等に関するアンケート調査等にご協力くださるようにお願いいたします。
- 文部科学省初等中等教育局教科書課「特別支援学校(視覚障害等)高等部における教科書デジタルデータ活用に関する調査研究」
本事業の目的は、視覚障害等のある生徒が教科書デジタルデータ(PDF版拡大図書)を教科用拡大図書として使用可能とするための提供システムの構築や、それに伴う諸課題等について検証することです。本事業において、「PDF版拡大図書」を無償で提供させていただきますので、このPDF版拡大図書を授業や家庭学習においてご活用いただき、運用上の課題や利便性等についてアンケート調査等にご協力くださるようにお願いいたします。なお、本事業は、文部科学省から受託した研究であり、現在、文部科学省で検討されているデジタル教科書のあり方に資する重要な研究です。
3.無償提供が可能なPDF版拡大図書
無償で提供可能なPDF版拡大図書は以下の通りです。
- 小学校用PDF版拡大図書(「小中学校におけるPDF版拡大図書に関する調査研究」事業)
作成済み:172種類、【参考】2018年度の利用者数:151人
- 中学校用PDF版拡大図書(「小中学校におけるPDF版拡大図書に関する調査研究」事業)
作成済み:81種類、【参考】2018年度の利用者数:78人
- 高等学校用PDF版拡大図書(「特別支援学校(視覚障害等)高等部における教科書デジタルデータ活用に関する調査研究」事業)
作成済み:208種類、【参考】2018年度の利用者数:161人
上述のリストにない検定教科書を希望する場合には、新規作成希望依頼を事務局にご提出ください。なお、予算が限られているため、提供できる教科書に限りがあることや提供させていただくデータの精度が必ずしも高くない(教科によってはPDFのみであったり、漢字の読み上げが正確ではないデータがあったりします)ことをご了承ください。また、新規に作成する場合、数ヶ月程度時間がかかりますので、ご了承ください。
4.本研究への参加要件
「PDF版拡大図書」の無償提供の対象は、以下の要件を満たしている児童生徒です。
- 視覚に障害(障害者手帳を有している必要はありません)があるために、通常の検定教科書にアクセスすることが困難であること
- PDF版拡大図書を授業や家庭学習等で利用したいと希望していること
- 当該児童生徒、保護者、担当教員、学校長が本研究の趣旨に同意していること
- アンケート調査、ヒアリング等、研究への協力が可能であること
- 後述の「PDF版拡大図書運用上の留意点」を守り、不正利用をしないこと
- 特別支援学校や特別支援学級・通級指導教室設置校等の学校長が上述の要件を満たしていることを認め、調査研究協力校として登録すること
なお、PDF版拡大図書は、調査研究協力校としてご登録いただいた特別支援学校や特別支援学級・通級指導教室設置校等に提供いたします。在籍校の学校長が上述の要件を満たしていることを認め、調査研究協力校になることが出来ない場合には、近隣の特別支援学校や特別支援学級・通級指導教室設置校設置校を介して手続きをしていただいても構いません。
5.PDF版拡大図書運用上の留意点
学校長及び研究担当者は、以下の留意点を守って、運用していただくようお願いいたします。
- PDF版拡大図書を利用するためには、iPad/iPhone/iPod Touchと教科書・教材閲覧用アプリ「UDブラウザ」(無償)が必要です。これらのデバイスとアプリは、学校もしくは当該児童生徒が用意してください。
- セキュリティを担保するため、PDF版拡大図書を利用するiPadには、常時、最新のiOS(iOS9以上が必須、iOS10以上を推奨)及び「UDブラウザ」(ver.2.9.0以上が必須)をインストールしていただくようお願いします。
- PDF版拡大図書の提供は、文部科学省の研究の一貫として行うものであるため、申請された場合には、必ず、研究へのご協力(アンケート調査への協力等)をお願いいたします。
- PDF版拡大図書は、原則として、インターネットを介して提供いたします。また、インターネットからダウンロードしたデータは、各学校でiPad等に転送するようお願いします。なお、インターネットからダウンロード等が出来ない場合には、DVDでの提供を検討いたしますので、ご相談ください。
- PDF版拡大図書は、本研究の目的以外では利用しないでください。セキュリティは担保してありますが、他者にデータを提供する等の不正な利用をしないようにお願いします。
- 各自が利用出来るのは、登録申請していただいたPDF版拡大図書のみですが、年度途中で追加申請をすることは可能です。
- PDF版拡大図書には、パスワードによる利用制限がかけられています。利用制限を解除するためには、慶應義塾大学に対して利用者登録をしていただく必要があります。
- 慶應義塾大学の事務局とやり取りをする研究担当者を任命してください(特別支援学校の場合は、原則として、学部ごとに任命をお願いします)。
- 研究担当者と事務局とのやり取りは、メールで行います。書類を添付ファイルでお送りすることがあるため、メールにファイル添付が出来るように設定をお願いします。
- iPadを紛失する等で、データ流出の危険性が生じた場合には、必ず、ご連絡くださるようお願いいたします。
- PDF版拡大図書は、各教科書発行者からお預かりしている貴重なデータです。申請にあたっては、間違いのないよう、慎重にお願いします。
- PDF版拡大図書を1冊、作成するためには、数ヶ月の日時と20万円程度の費用がかかるため、無償提供が可能なPDF版拡大図書一覧にない教科書の作成を申請する際には、教科書名等を間違えないようにお願いします。なお、予算の上限を超えた場合には、新規作成をお断りさせていただく場合もありますので、ご了承ください。
- 紙媒体の教科書の使用義務(学校教育法第34条等)がありますので、ご留意してください。
- 本研究の主たる対象は弱視の児童生徒です。ただし、弱視児童生徒用に作成されたデータであることを了解していただければ、盲の生徒に適用していただいても構いません(現時点では、漢字の正確な読み上げ等が保障できませんので、ご了承ください)。
- 地域の学校に在籍している視覚に障害のある児童生徒にも、PDF版拡大図書の提供を行います。ただし、希望するすべての教科書が用意できるわけではないことやリフロー可能なデータを用意できない場合があることをご了承ください。また、必ず、研究へのご協力(アンケート調査への協力等)をお願いいたします。
6.ご協力いただきたい内容
- 学校長へのお願い
- 研究への参加要件や運用上の留意点の確認
- 研究担当者の任命
- 研究担当者の方へのお願い
- 利用者の登録・管理
- データの管理(DVDで提供を受けた場合には返却)
- DVDで提供を受けた場合には、PDF版拡大図書の入ったDVDを利用したインストール作業
- PDF版拡大図書のサーバーからダウンロード&インストール作業
- 児童生徒、教員、保護者からの意見の集約ならびに事務局との連絡役
- アンケート調査等への協力
- 慶應義塾大学が主催する実践研究成果報告会や日本弱視教育研究会の機関誌「弱視教育」等での報告(希望する学校のみ)
- 当該児童生徒の皆様へのお願い
- PDF版拡大図書を授業や家庭学習等で利用
- アンケート調査およびインタビューへの協力
- データや使い勝手等について気付いたことの教員への報告
- 当該児童生徒を担当している教員の皆様へのお願い
- アンケート調査およびインタビューへの協力
- 生徒からの意見聴取と報告
- PDF版拡大図書を授業等に利用していただき、自ら気付いた点等の報告
7.注意事項
PDF版拡大図書の提供にあたっては、「教科書デジタルデータの提供に関する実施要項(平成21年2月10日 文部科学大臣決定 平成22年3月18日改正)」に基づき、利用する教科書を文部科学省教科書課及び教科書発行者(出版社)に提出する必要があります。
学校長からご指名いただいた研究担当者の先生から申請希望のメールが届き次第、「研究協力校承諾書」等の必要な書類をメール添付でお送りします。書類が届きましたら、必要事項にご記入の上、メール添付にて、ご返信ください。
「研究協力校承諾書」等の確認が終わりましたら、PDF版拡大図書を提供させていただきます。なお、4月8日に教科書発行者からの了解が得られましたので、公衆送信(大学のサーバーからのダウンロード)でデータを提供いたします。
8.申請手続きの概要
- ステップ1:研究協力校申請
- PDF版拡大図書の提供を希望される場合には、メールに、「1.学校名、2.ご担当者のお名前・ご所属・ご連絡先[電話、メール]、3.申請を希望する児童生徒の所属(小学部・中学部・高等部等)・人数、4.備考等」をご記入の上、「2019年度PDF版拡大図書の調査研究協力校申請」というタイトルで事務局までご送信くださるようお願いいたします。
- 事務局にて、メールの内容を確認させていただいた上で、申請に必要な書類等をメール添付でお送りします。
- なお、特別支援学校で申請していただく場合、学部単位(小学部、中学部、高等部それぞれにご担当者を決めてください)でお願いいたします。教科書申請等の諸手続きについては、各学部の研究担当者の先生(規模の小さな学校の場合には、1人で複数の学部を取りまとめていただいて構いませんし、規模の大きな学校の場合には、1つの学部を複数名でご担当いただいても構いません)とメールでやり取りさせていただきたいと思います。
- ステップ2:利用者申請
- 事務局が研究協力校申請を受理したら、利用者申請書類をメール添付でお送りしますので、必要事項をご記入の上、メール添付でご返送ください。
- ステップ3:認証コード・教科書申請
- 事務局が利用者申請を受理したら、「認証コード・教科書申請の手順」をメール添付でお送りしますので、手順書に基づいてWeb(ユーザIDとパスワードが必要)から手続きをしてください(ユーザIDとパスワードは事務局からの手順書と一緒にお送りします)。すべての手続きが完了したら、事務局から「認証パスワード」をお送りします。
9.PDF版拡大図書の利用方法
準備中
ダウンロード
Q and A
- Q1 「PDF版拡大図書」って何ですか?
A1 「PDF版拡大図書」とは、弱視児童生徒の見やすさや使いやすさを考慮して作成されたPDF形式の教科用特定図書です。紙の教科書と全く同じレイアウトの固定レイアウト(PDF)と文字サイズやフォント等を変更できるリフローレイアウト(HTML)を、用途に応じて、切り替えて利用できます。文部科学省では、高校生用の教科用拡大図書の普及に資するため、特別支援学校(視覚障害等)高等部において、PDF形式の教科書デジタルデータを、拡大機能を有するタブレット型情報端末等により活用し、教科用拡大図書と同様に使用し得るための諸条件等について調査研究を実施しています。この調査研究を受託している慶應義塾大学が、教科書デジタルデータを用いて発行しています。なお、小中学生用のPDF版拡大図書は、著作権法施行令第2条第1項第2号の規定により視覚障害者等のための複製等が認められる者として作成し、慶應義塾大学中野泰志研究室の調査研究の一貫として提供しています。
- Q2 「UDブラウザ」って何ですか?
A2 「UDブラウザ」とは、障害のある児童生徒、特に、弱視の児童生徒がアクセスしやすいように、拡大、読み上げ、書体や縦書き・横書きの変更、ページジャンプや書き込み等の機能を有している教科書・教材閲覧用アプリです。現在、iOSが搭載されているiPad、iPhone、iPod Touchで動作します。App Storeから無償でダウンロードできます。
- Q3 視覚支援学校(盲学校)で教育相談を受けている児童生徒に、PDF版拡大図書を提供できますか?
A3 できます。盲学校から申請をしていただいても構いませんし、もし、在籍校の校長先生が視覚障害があることを認定し、調査研究協力校の登録をしてくださるのであれば、在籍校から申請をしていただいても構いません。
- Q4 肢体不自由の特別支援学校に在籍しているのですが、PDF版拡大図書を申請できますか?
A4 視覚に障害があれば、どこの学校に所属していても申請できます。2018年度までは、盲学校を介して提供していましたが、2019年度からは、在籍校の校長先生が視覚障害があることを認定し、調査研究協力校の登録をしてくだされば申請が可能になりました。なお、在籍校の校長先生の認定が得られない場合には、従来通り、盲学校を介して申請してください。
- Q5 弱視特別支援学級に在籍しているのですが、PDF版拡大図書を申請できますか?
A5 できます。2018年度までは、盲学校を介して提供していましたが、2019年度からは、在籍校の校長先生が視覚障害があることを認定し、調査研究協力校の登録をしてくだされば申請が可能になりました。なお、在籍校の校長先生の認定が得られない場合には、従来通り、盲学校を介して申請してください。
- Q6 弱視通級指導教室に通級しているのですが、PDF版拡大図書を申請できますか?
A6 できます。申請方法は2種類あります。1番目の方法は、在籍校の校長先生に、視覚障害の認定をしていただき、在籍校に研究協力校の申請をしていただく方法です。2番目の方法は、通級先である特別支援学校や特別支援学級・通級指導教室設置校に視覚障害の認定と研究協力校の申請をしていただく方法です。
- Q7 通常の学級に在籍しているのですが、PDF版拡大図書を申請できますか?
A7 できます。申請方法は2種類あります。1番目の方法は、在籍校の校長先生に、視覚障害の認定をしていただき、在籍校に研究協力校の申請をしていただく方法です。2番目の方法は、特別支援学校や特別支援学級・通級指導教室設置校に視覚障害の認定と研究協力校の申請をしていただく方法です。
- Q8 年度途中で教科書を追加でお願い出来ますか?
A8 できます。そのため、初めて利用する方は、履修しているすべての教科書を年度当初に一括して申請しようとせず、使い勝手を確認した上で追加申請をしてください。なお、追加申請をする際には、年度当初と同じIDを使って申請してください。
- Q9 個人で申請できますか?
A9 個人での申請は受け付けていません。PDF版拡大図書が提供できるのは、調査研究に協力できる視覚に障害のある児童生徒のみであり、学校長に認定していただく必要があります。そのため、必ず、学校から申請を出してください。
- Q10 発達障害のある児童生徒も申請できますか?
A10 視覚にも障害があれば、申請できます。もし、視覚に障害がまったくない場合には、広島大学が提供する予定の「文字・画像付き音声教材」等の音声教材をご利用ください。
- Q11 PDF版拡大図書は、Windowsタブレットやパソコンでは利用できないのですか?
A11 できません。現在、PDF版拡大図書のセキュリティ(データ流出や不正利用防止対策等)に対応できる閲覧アプリが、Windowsタブレット等にはないからです。Windows版に対するご要望が多ければ、将来的に、PDF版拡大図書を閲覧できるアプリを開発する計画があります。
- Q12 どんな教科書がデジタル化されているんですか?
A12 教科書発行者が発行している検定教科書の中で、以下のリストにあるもののみです。
上述のリストになくても、以下のリストにある検定教科書については、新規作成の受付をします。なお、予算が限られているため、提供できる教科書に限りがあることや提供させていただくデータの精度が必ずしも高くない(教科によってはPDFのみであったり、漢字の読み上げが正確ではないデータがあったりします)ことをご了承ください。また、新規に作成する場合、数ヶ月程度時間がかかりますので、ご了承ください。
教科書バリアフリー法に基づいて実施しているため、検定教科書以外の文部科学省著作教科書や補助教材等の作成はできませんので、ご了承ください。
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