拡大率、綴じ方、本のサイズ等によって、様々な拡大教科書が作成可能である。どのような拡大教科書が有効かを検証するためには、様々なタイプの拡大教科書を試作し、比較検討する必要がある。そこで、本研究では、どのようなタイプの拡大教科書があるかを調査し、調査結果に基づいて、基本的なタイプの拡大教科書を試作した。
これまでに教科書会社、拡大教科書製作会社、ボランティア等が製作された拡大教科書にどのような種類があるかを調査した。そして、調査で明らかになった主要な拡大教科書を、高等学校の主要教科について、試作した。
教科書発行者やボランティア等への調査の結果、拡大教科書のタイプには、文字サイズ、判サイズ、製本方法、レイアウト方法、分冊、手書き/PC、紙質、インク等、様々な要素を考慮する必要があることがわかった。例えば、図2.1は、ボランティアがプライベートサービスで作成した、まぶしさを考慮して白黒反転した手書きの横置き縦開き(楽譜綴じ)方式のレイアウト変更拡大教科書である。このようなプライベートサービスの拡大教科書がある一方、高等学校段階では単純拡大コピーで作成された拡大教科書を利用しているケースもあることがわかった。
このように弱視の視覚特性を考えれば、拡大教科書も多様になり、個別対応にならざるを得なくなる。しかし、標準規格を決定するためには、拡大教科書が必要であり、なおかつ、より多くの弱視生徒のニーズに合致する要件を明らかにする必要がある。そこで、本研究では、小中学校の標準規格であるレイアウト拡大方式3種類、高等学校において活用されている単純拡大方式8種類を試作することに決定した。単純拡大教科書は、用紙サイズ4種類、綴じ方(通常製本[縦置き横開き]と綴じ代が不要な楽譜綴じ[横置き縦開き]製本)2種類の計8種類(ただし、国語のみ実用性を考慮し、縦開き[楽譜綴じ]製本を1種類とした5種類)とした(図2.2、図2.3)。教科は国語、数学、社会の3教科で、国語8種類、数学11種類、社会11種類の拡大教科書を試作した。選定した教科書は、盲学校での利用実績を考慮し、改訂版新編国語総合(第一学習社)、数学 I(東京書籍)、新版現代社会(実教出版)とした。
試作した拡大教科書は、国語が、レイアウト拡大(A5判18pt、B5判22pt、A4判26pt)、オリジナル(B5判12pt)、単純拡大・縦置き横開き(A4判14pt、B4判17pt、A3判19pt)、単純拡大・横置き縦開き(楽譜綴じ)(B5判17pt)の8種類、数学が、レイアウト拡大(A5判18pt、B5判22pt、A4判26pt)、オリジナル(A5判10pt)、単純拡大・縦置き横開き(B5判12pt、A4判14pt、B4判17pt)、単純拡大・横置き縦開き(楽譜綴じ)(A5判14pt、B5判17pt、A4判20pt、B4判24pt)の11種類、社会がレイアウト拡大(A5判18pt、B5判22pt、A4判26pt)、オリジナル(B5判10pt)、単純拡大・縦置き横開き(A4判11pt、B4判14pt、A3判16pt)、単純拡大・横置き縦開き(楽譜綴じ)(A5判11pt、B5判14pt、A4判16pt、B4判20pt)の11種類であった(表2.1、図2.4〜2.6)。なお、試作にあたっては、操作性等も検討できるように、用紙、インク、製本等は、通常の拡大教科書と同じ方法・精度で作成した。
ID
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拡大方式
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国語
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数学
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社会
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判
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文字サイズ
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判
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文字サイズ
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判
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文字サイズ
|
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1
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レイアウト
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A5
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18pt
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A5
|
18pt
|
A5
|
18pt
|
2
|
レイアウト
|
B5
|
22pt
|
B5
|
22pt
|
B5
|
22pt
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3
|
レイアウト
|
A4
|
26pt
|
A4
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26pt
|
A4
|
26pt
|
4
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原本教科書
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B5
|
12pt
|
A5
|
10pt
|
B5
|
10pt
|
5
|
単純拡大(縦)
|
A4
|
14pt
|
B5
|
12pt
|
A4
|
11pt
|
6
|
単純拡大(縦)
|
B4
|
17pt
|
A4
|
14pt
|
B4
|
14pt
|
7
|
単純拡大(縦)
|
A3
|
19pt
|
B4
|
17pt
|
A3
|
16pt
|
8
|
単純拡大(横:楽譜)
|
B5
|
17pt
|
A5
|
14pt
|
A5
|
11pt
|
9
|
単純拡大(横:楽譜)
|
|
|
B5
|
17pt
|
B5
|
14pt
|
10
|
単純拡大(横:楽譜)
|
|
|
A4
|
20pt
|
A4
|
16pt
|
11
|
単純拡大(横:楽譜)
|
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B4
|
24pt
|
B4
|
20pt
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