第11回 拡大教科書の在り方に関する公開シンポジウム
合理的配慮としてのデジタル教科書の活用
中野 泰志(慶應義塾大学)
我々は、弱視児童生徒用の拡大教科書に関する取り組みの一貫として、拡大教科書の問題点である可搬性・操作性を向上させることを目的にデジタル教科書に関する取り組みを行ってきました。例えば、教科書デジタルデータが拡大教科書と同等に利用可能かどうかに関する実践的研究や視覚障害のある児童生徒が授業場面で有効活用できる教科書・教材等閲覧アプリ「UDブラウザ」の開発研究等を実施してきました。その結果、全国の盲学校等で活用実践も広がりつつあります。また、デジタル教科書やタブレット端末を使うことで、より質の高い配慮を合理的に提供しようという試みもスタートしています。
本シンポジウムでは、合理的配慮としての教科書デジタルデータの活用をテーマに、海外の取り組みを紹介する基調講演や効果的な教材等の作成方法を学ぶためのワークショップを実施します。ワークショップでは、5月にリリース予定の最新版の「UDブラウザ」の体験会も実施いたしますので、ぜひ、多くの方にご参加いただきたいと思います。
日時:2016年5月21日(土) 10時55分〜14時50分
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プログラム
- 10時30分 開場
- 10時55分〜11時00分 開会挨拶
- 11時〜12時00分 基調講演
- テーマ:デジタル教科書の効果的な発行と普及、及び合理的配慮としての教科書デジタルデータの活用 --韓国と米国における取組から学ぶ--
- 講師:田中 良広(国立特別支援教育総合研究所)
- 要旨:韓国では、教育部(日本の文部科学省にあたる)と韓国国立学術情報院(KERIS)が主導して、国策としてデジタル教科書の発行、管理、普及が計画的に行われています。我が国においても早晩、学習者用のデジタル教科書が発行され、授業等で活用されていくことが予想されますが、プラットフォームの統一や複数のOSに対応した閲覧用ビューア等、参考にすべき事柄があります。また、米国(ケンタッキー州)では、合理的配慮としてオンライン上のデジタル図書館から児童生徒のニーズに応じたファイル形式で教科書デジタルデータをダウンロードして、授業等で活用されています。我が国における拡大教科書の発行と教科書デジタルデータの活用状況に照らし合わせれば、DTPファイルを加工した教科書デジタルデータをストックして再利用したり、オンラインで提供したりするなどの工夫が求められます。インクルーシブ教育システムの構築とその充実のためには、適切な合理的配慮の提供が不可欠であり、その一端を担うのがICTの効果的な活用であると言えます。これらのことについて皆様と一緒に考えていきたいと思います。
- 休憩(12時00分〜13時00分)
- 昼食は各自ご用意ください。
- 会場周辺には食堂等が多数ございます。
- 会場内でお召し上がりいただいても構いません。
- 13時00分〜14時45分 ワークショップ
- テーマ:「UDブラウザ」で利用できる教科書や自作教材の作成方法に関するワークショップ
- 講師:中野 泰志(慶應義塾大学)、氏間 和仁(広島大学)、永井 伸幸(宮城教育大学)、韓 星民(福岡教育大学)
- 要旨:「UDブラウザ」は、障害のある子供達の視認性や操作性を考慮して作成された教科書・教材閲覧用アプリです。紙の教科書等と全く同じレイアウトで表示させることができる「固定レイアウトモード」と文章だけをリフロー表示させることができる「リフローレイアウトモード」を兼ね備えたハイブリッド型ビューアーという特徴があります。メニュー等が大きく、見やすくしてありますし、リフローモードではUDフォントでの表示も可能です。教科書や教材等を読む際に必要だと考えられるページジャンプ機能、しおり機能、辞書検索機能、書き込み機能等も搭載しています。本ワークショップでは、「UDブラウザ」で利用できる電子データの作成方法について、紹介します。
- 資料(氏間先生ご提供)
- 14時45分〜14時50分 閉会挨拶
- 15時00分 閉場
参加申込
- 定員は100名です。入場は無料です。
- 参加を希望される方は、「慶應義塾大学・中野泰志研究室」宛に、「拡大教科書シンポ参加希望」とお書きの上、メール(info@nakanoy.econ.keio.ac.jp)もしくはファックス(045-566-1374)でお申し込みください。なお、定員に達した場合には、お断りさせていただく場合がありますので、ご了承ください。日吉駅からの誘導が必要な方は、参加申込の際にお問い合わせください。
その他
- お車でのご来場はできません(車いすユーザで、お車でのご来場が必要な場合には、ご連絡ください)。
- シンポジウムを開催する建物は古いため、多機能トイレがありません。多機能トイレをご利用の場合には、「来往舎」をご利用くださるようお願いいたします。
- 本シンポジウムは、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課委託開発事業「学習上の支援機器等教材開発支援事業」、文部科学省初等中等教育局教科書課委託研究事業「特別支援学校(視覚障害等)高等部における教科書デジタルデータ活用に関する調査研究」、文部科学省科学研究費基盤研究(A)「通常の学級で学ぶ視覚障害児のための合理的配慮に関する支援システムの構築」(課題番号16H02072)より研究費の補助を受けて実施いたします。
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