発達障害児童・生徒の見え方に対するスタンスは特別支援教育の場すべてに同様の見方、考え方で対処されているという状態にはまだ至っていない。見えているから、日常基本的な動作ができているからと、多様な視覚、視機能に関して手立ての必要な事例に対して十分な措置がなされていない。視覚障害教育の場面での指導事例や他の障害を持つ指導事例を広く検証し、適切な「見え方」について、認知、理解の面まで含めて活用の可能性を探る。
視覚に障がいを持つ子どもたちにとって、空や山、川、海といった大きか空間はとてもわかりにくい存在です。土や葉っぱを触ることで山の全貌を想像することは難しく、そのこと自体を拒否してしまう子どもも少なくありません。この研究は立体や音などを駆使して、空や海などをイメージするお手伝いをしたり、それらの要素がどう関連しているのか理解したり、実際にこの場所に行ってみたい!触れてみたい!と思う気持ちを育てたりすることを目的としています。京都のライトハウス・あいあい教室様にご協力いただき、視覚に障がいを持つ2人の子どもたちと1年を通して遊び、試作を繰り返しました。波の音やお日様がピカピカ光る様子を感じたりすることで、海や山などに対する“興味を育てるおもちゃ”と、図鑑のように海や山などの“知識、情報を手で感じて学ぶ”おもちゃという2つの方向性からそれぞれの子どもに適したおもちゃを提案しました。
県立こども病院での院内相談を受け、 初回から10年以上経過した保護者10名に対して、アンケート調査を実施した結果の報告。
目的:名古屋盲学校と当事者家族支援団体が連携した視覚障がい乳幼児保護者支援について報告する。
方法:2016年5月より毎月1回、土曜日に名古屋盲学校幼稚部を会場として、当団体が主催するパパママ会(2時間程度)を定期的に実施している。2016年5月は5家族、6月は7家族の参加があった。本報告では、①実施日時や環境、②保護者からの相談内容について検討し、今後の取り組みの在り方を考察する。
結果と考察:①実施日時を土曜日に設定することで母親だけではなく、父親や祖父母等の参加があり、母親の普段の子育てに対する悩みを家族で共有する場となっていた。また、盲学校幼稚部の利用や保護者が相談している間、対象時やその兄弟が遊べるよう準備することが安心して相談する環境作りとして重要であると考えられる。②参加した保護者からの相談内容をみると、「言葉がでない」「もうすぐ2歳なのに歩かない」「目押しをやめされるにはどうしたらよいか?」「まぶしがって外出ができない」等、発達に関する内容、「動物園に行っても見えないから楽しいのか?」「親は点字を勉強したほうがよいのか?」「お手伝いはできるのか?」等日常生活に関する内容がみられた。前者のような相談内容については、盲学校教員から専門家の立場として発達を促す働きかけについて助言を行いつつ、継続的な支援へとつなげていき、後者については、成人した視覚障がい当事者が自身の経験をもとに話題提供をすることができるものと考える。
乳幼児期の子どもたちは、絵本を通して楽しみながら感性やコミュニケーション力、好奇心などを育てていくと共に、言葉と絵によって新しい情報を得ていく。しかし、視覚障がいのある見えない・見えにくい子どもたちにとっては、絵が中心となる乳幼児向けの一般的な絵本では、存分に楽しむことが難しい場合がある。視覚障がいのある乳幼児、学齢児童が通うあいあい教室では、見えない・見えにくい子どもたちが自らの手で触れて楽しむことができる様々な"さわる絵本"を療育で使用している。歌に合わせて楽しむ手作りの紙芝居や、全て布で出来た絵本、カラーの絵と絵に合わせた点図で出来た絵本などがある。物語への導入から絵本を読むまでを、子どもに合わせた内容、姿勢や見せ方で取り入れている。また、教材を手作りする中、元の絵を単に立体化するのではなく、本物に近い素材を使用する、絵では通常見えていない服の下の体を再現する、背景は簡略化し、何を触って感じてほしいか明確にするなどの工夫をしている。コントラストをよくし、きらきら光る素材を使用するなど、見えにくい子どもにとっても楽しめる要素を取り入れ、みんなで場を共有して読むことが出来るようにしている。子どもたちは"さわる絵本"を通して、手で触ることに慣れていくと、物語の流れや登場人物などの位置を覚え、次第に自ら"探す"ようになっていく。また、月や虹などの天体、空や山などの自然、羽を広げた孔雀といった動物のあらゆる姿など、自分の知らない事物を知ることができる。そして、点字が読めるようになると、大人の読み聞かせばかりでなく、自分で読んで絵を確認することができ、ひとつの物語を長く楽しむことへと繋がっていく。このようにあいあい教室では、様々な感触に慣れ、手指の発達を促しながら、「これはなんだろう」と自分の手で触ってみようとする気持ち、「もっと見てみたい」、「知りたい」という気持ちを大切にしている。
ビニールプールや大きなタライの中にボール、新聞紙、ドングリ、風船、等の素材をいれました。子どもたちも中に入り遊びました。自分の体から触っている素材が離れてしまっても、範囲が決まっているので見つけやすく触りやすいです。
盲幼児3名の教材を用いた指導事例から、幼児期初期の触探索の広がり方や、外界を認知する時の手の使い方の変化について分析を行った。その結果、触探索は、点から線へ、線から面へ、そして片手から両手へという広がり方であった。外界を認知する時の手の使い方では、片手のみ用いる段階、もう片方の手が探索や確かめの手として出てきた段階、片手で探索し、もう片方の手で操作するような両手協応の段階というように発達していった。幼児期早期から、教材を用いた具体的な体験を通して、このような手の使い方を育むことが重要であると考える。
今回のポスターは、学校の知っていただくような内容のものを作成しました。本校の幼稚部の日課・活動等や、乳幼児の相談の状況等をお伝えできればと思います。『幼稚部案内』『学校案内』『理療教育』等の、学校で発行しているパンフレット等も持ってきましたので、お立ち寄りいただいて、ご覧いただきたいと思っています。
目的:摂食嚥下機能は、乳幼児の成長を支える上で大きな役割を果たす。視覚障がい乳幼児の場合、離乳食の段階で食物を視覚的に捉えることができないゆえに、食べることに意欲的になれないこと(猪平,2007)、食べ物を口に入れても口型模倣が困難なために咀嚼が難しいことが指摘されている。本報告では、摂食嚥下過程、摂食嚥下機能の発達、視覚障がい児に対する配慮について文献に基づき報告する。
方法:猪平・大内・牟田口(2007)、山田・向井(2011)、片桐・北住・藤本・丸茂・谷口・山脇(2012)、高見(2015)の文献を参考に摂食嚥下機能の過程や発達、視覚障がい乳幼児への配慮について紹介する。
結果と考察:(1)摂食嚥下の過程 摂食嚥下の過程は、匂いや見た目から食べ物であると判断する認知期、口の中に食べ物を入れる口腔準備期、食べ物を咀嚼する口腔期、食べ物を咽頭に送り嚥下を行う咽頭期、食べ物の塊が食道に入る食道期の5つの過程がある(山田,2011)。その中で、視覚障がい乳幼児は、認知期に課題が見られると指摘されている。(2)乳幼児期の摂食嚥下機能の発達 乳幼児の摂食嚥下機能は、生後約1年で唇や舌の基本的な動きが獲得され、摂食嚥下の準備を行う経口摂取準備期、離乳食が開始される嚥下獲得期(5か月)と捕食獲得期がある。離乳食中期の7か月頃になると、食べ物を押しつぶしながら食べる押しつぶし期があり、9か月頃の離乳食後期になると、すりつぶし期へと移行する(向井,2011)。その後は、自食準備期、手づかみ期、食具食べ期と自力で食べられるようになる。(3)視覚障がい乳幼児の摂食嚥下に対する配慮 視覚障がい乳幼児は、視覚的な情報が得られないため、食物の硬さや匂い、味を通して食べ物を認識していく。食への意欲を引き出す方法として、食事を楽しいコミュニケーションの場とするとともに(高見,2015)、手づかみ期では、食べ物を手で掴みやすい形にすることも1つの方法である(猪平,2007)。また、声かけで口に食べ物が入ることを知らせる段階から、「人参、甘くておいしいね」と食べ物と味や匂いを結びつけるような配慮が挙げられる(神奈川県教育委員会,2007)。(4)視覚障がいとほかの障がいを併せ持つ乳幼児の摂食嚥下 摂食嚥下機能が呼吸と協調によって行われている(向井,2011)。そのため、重複障がいがある場合は、消化器や呼吸の状態、筋力の状態を意識しながらの食事が必要である。そして、重複障がいの種類や程度により、視覚障がいへの配慮以外に他の障がいに対する工夫も必要になる(向井,2011)。例えば、脳性麻痺の場合は、嚥下機能や飲み込みやすい姿勢にも配慮した摂食嚥下の指導が必要になると指摘されている(北住,2012)。
引用文献
生まれつき目に障害をもった音楽家Shusui(周水)は、結婚して親になり、耳の不自由なお子さんと出会った。障害を持つ親御さんには色々な思いがあることを知り、自分を育ててくれた音楽を使って自分の経験をシェアし、障害のある子供達や親御さんを励ましたいと「育音(Iku-ON)」を立上げた。自身の作品CD付絵本「アフリカゾウのなみだ」を携え、絵本の読み聞かせと唄のふれあい会を、盲学校、聾学校、各障害児施設を周り実施している。
過去数年間の早期を含む教育相談数の増減や年齢別相談数からの考察。教育相談保護者へのアンケートのまとめから考える、今幼稚部教育相談に求められていることの考察 等。
幼稚部の教育と育児相談について、①カリキュラム(時間割と授業風景の写真とその写真の説明)、②特色ある授業を抜粋しての紹介と授業風景の写真(保育園との交流、触ってみよう、リトミック、畑活動、親子で遊ぼう)、③育児相談について
全国的に、盲学校の在籍数の減少・重度重複障害児の割合の増加が言われて久しいが、高知県では、平成27年度の視覚障害での身体障害者手帳保持者3,021名のうち、18歳未満の子どもの数は21名(1%未満)にもかかわらず、地域への乳幼児教育相談の需要は減ることはない。その背景には、高知県地域福祉部障害保健福祉課を中心にすすめられてきた「ル・ミエールプラン」という、教育・福祉・医療の連携をコンセプトとし、中途視覚障害者を中心としたリハビリテーション訓練と、「地域の支援者」への視覚障害理解・啓発活動がある。盲学校は教育分野として、当初からこのプロジェクトに参加、ライフステージに沿った様々な支援が可能であることをアピールしてきた。この約15年の活動を通して「具体的な視覚支援の方法」を学んできた、高知県内5ヶ所の福祉保健所の保健師さんやPTさんなどとの連携が進み、地域の実情を踏まえた相談依頼が来るようになってきている。高知県のような人口が少なく、かつ中山間の多い地域の盲学校からは、「いかにしたら盲学校認知度が上がるのか?」といった質問がよく聞かれる。高知盲の取組から見えてきたことは、盲学校の認知度というより、まず「視覚支援の理解・啓発(認知度も含めて)」に視点を当て、地域の様々な支援者が視覚支援とは何かを「具体的に理解」し、一体となって「継続的に」当事者支援を行っていく中から育まれていくことが必要ではないかということである。今回の発表では、「地域での視覚障害支援」の現状と課題として、参加者の皆様と情報や課題を共有したいと思う。
盲学校への通学においては、スクールバスや就学奨励費等、文部科学省の支援制度が利用できる。しかし、地域や学校によってはスクールバスを運行していなかったり、自宅からスクールバスのバス停までの移動支援が必要だったりする場合がある。また、厚生労働省の移動支援に関する事業では「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出」を対象としていないため、これらのケースでは、保護者が通学の支援を行わざるを得ないと考えられる。その結果、子供の通学支援のために、保護者の社会参加に影響が出ている可能性がある。そこで、本研究では、盲学校への通学支援の実態及び通学支援が保護者の社会参加へ及ぼす影響について全国調査を実施した。
(株)アーチャレジーでは、弱視のお子さんでもお使いいただける、筆記用具を展示致します。黒い紙に白い罫線が引かれた白黒反転ノートや、白い紙に太い罫線が引かれたかっこいい・かわいいノートKIMINOTE(キミノテ)がございます。他にも黒い紙に書けるボールペンや芯が折れなくて安全なシャーペン、鉛筆類をご紹介しておりますので、是非お立ち寄りください。
カシオ計算機㈱では、視覚特別支援学校の生徒様向けフルカラー触覚教材を作成できる2.5Dプリントシステムを開発しました。今回の大会での機器展示では、たくさんの2.5Dプリントコンテンツをご用意して、皆様のご来場をお待ちしております。
この度、機器展示をさせて頂きます「カジヤマプロテーゼ」と申します。弊社は「義眼」を専門に取り扱っており、全国の弊社営業所はもとより、各地の医療機関等にて義眼の製作や相談会などを行っております。今回、「各種義眼のサンプルの展示」・「モニターでの義眼のつけ外しの動画」等を予定しております。そのほかに義眼の「日常の取り扱い方法」や「費用補助のお手続き」等をまとめた小冊子をお配り致します。かねてより、義眼の装用が必要な成長時期の方、特に乳幼児のお子様には、「義眼」の役割がとても重要だと言われています。この機会に展示ブースにお越し頂き、弊社スタッフに何でもお気軽にお尋ね下さい。
遮光眼鏡CCPシリーズは多くの視覚障害者の方々にご使用いただいており、まぶしさを感じる人々へQOLの向上を目指し、商品を製造、販売してきました。新商品もありますので是非、ご覧になってください。
【出品品目】富士ゼロックスではCSR活動の一つとして、弱視の児童・生徒をサポートする拡大写本の製作ボランティアに、デジタルカラー複合機を無償で利用していただくサービスを、1994年から続けています。また、事業活動としては2009年度より教科書バリアフリー法に基づく「教科書デジタルデータ提供に関する調査研究事業」を文部科学省から受託し、ボランティアが拡大教科書等の製作に利用する教科書デジタルデータの提供・管理を行い、製作に関わる情報提供や提供データの形式について研究を実施中です。展示では、ボランティアがデジタルデータを使って、児童生徒それぞれの症状やニーズに合わせて製作した拡大教科書や音声教材等をご紹介しています。
ラピコは子供や女性でも持ちやすいようにデザインした視覚障がい者用の小型筆記具(触図筆ペン)です。AC100V電源を用い、ペンに内蔵したヒータ(70度弱)でインク用のみつろうを溶かします。ペン先を軽く用紙に押し付けると先端から溶けたみつろうが用紙の上に出てきて線がかけます。かいた線は15秒程で固まり、指先で触れて確認できます。紙・プラスチック・ガラス等様々な素材にかくことが出来ます。失敗してもへらで削って修正出来ます。削り取ったみつろうは再利用可能です。万が一溶けたみつろうに触れてもやけど等の心配はありません。また、みつろうは蜂の巣が原料なのでアレルギーも少なく間違って食べても体に影響はありません。