経済問題メーリングリスト

2000年10月17日更新

投稿アドレス

このメーリングリストへ投稿をするには
econml@tets.econ.keio.ac.jp
にメールを送ります。このアドレスへの投稿はメンバーに限られています。 メンバーにはならないけれど、そのときどきの課題について一言はさみたいと いう場合には
econml-guest@tets.econ.keio.ac.jp
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引用記号を用いた引用について

メーリングリスト上で < 記号などをつかった引用をおこなうことついては2つの問題があるという問題提起から議論が始まった。
  1. 議論をする上での障害
    1. 議論の断片化。
    2. 議論への途中参加がしにくい。(内容が把握しづらくなる)
  2. 参加者に不利益が起こる問題
    1. 引用符自体の問題
このうち2番目の問題については「おそらくソフト側がすぐに解決 してしまうでしょう(PC-Talker などの製品出ています)。 」という意見がでた。 この論点は純粋にコンピュータソフトに関する技術的な問題なので、 この意見を受けいれ、以後の議題はもっぱら第1の論点に絞ることにした。

なお、議論をするときに文献中の文章を利用するときには当然出典をあきらかにすべ きである。文献中の文章をまるごとつかう(引用の)場合に限らず、自分の意見や 体験ではなく、他人の考えや体験の中で文献中にあるものを利用するのだとし たら、どのような文献をつかったのか明記しなければいけない。 以下で議論の対象になっているのは、メーリングリストの他の参加者の過去の発 言を引用することの是非、引用の仕方である。

ここで言葉の定義については次のように確認した。

このような定義を踏まえた上で、次のような整理をおこなった。

  1. 引用記号を利用することの利点
    • 引用記号を使っている場合、「ああ、これは誰々さん意見の・・・って 部分ね」という具合に読み手が分かり易いことも確かだと思うのです。(関根0913)
  2. 引用記号を利用することのデメリット
    • 自分にとって 都合の良い部分だけを抜き出して引用することによって、相手の論理 を、自分にとって有利な論理に変換させることが出来る。 逆に言えば、引用する部分によっては、相手が言いたいこととは違う 印象を、読み手に与えてしまう危険性がある。

    • 不特定多数の参加者がいることを考えると、引用機能を使用すると、メー   リングリストでの議論ではなく、二者間のメールのやり取りとなりメーリ   ングリストの意味が無くなる。

    • メーラーの引用機能を使用すると、後から参加した人が受け取ったときに   前後の文脈がわからない、そして誤解して理解する可能性がある。

  3. 引用記号を禁止することの利点

    • 引用記号が禁止となると、誰かの意見に対して意見する場合、まず相手 の意見を簡単にまとめなければならない。大変なことだ が、文章をつくる訓練になる。

  4. 引用記号を禁止することのデメリット

    • 相手の意見発表の中で、過去の自分の意見が相手の都合のいいニュアンス に書き換えられてしまう可能性がある。

    • 過去の投稿に対し、部分的に反論の場合、引用が無いと、どの部分に対する 意見なのかが不明瞭になる。


引用の仕方によって弊害が起きる可能性について次のような意見がでた。


以上のような整理をおこないながら、議論の対象になっているのは、一般的な 意味での引用の問題ではなく、メーリングリストの参加者の過去の発言をメー ラーの引用機能を利用しての引用であることが明確になった。 メーリングリスト外の誰かの意見、事実の紹介、 文献からの文章の紹介につい てはきちんと引用であることは明確にすべきである。 たとえば、誰かがメーリングリストでの議論を利用しながら 論文を書くとき、どの文献からの引用であるかを明確にしておいた方が便宜が よい。また、メーリングリスト・メンバー以外の人の知的財産権に対する配慮 をしなければならない。

しかし、このメーリングリストのメンバー同士では知的財産 権を要求しない。ここでの議論の成果はみなの共有財産であり、メン バーがどのように利用しても構わないとする。 (共有ということは財産権が発生しないということです。) そこで、「誰のいつの時点での発言であるかを材料にする」といったことを明 確にしながら議論をする必要は生じない。

また、他メンバーの思想信条や人格がどのようなものであるのかを理解するた めに議論をするのではなく、自分とはちがう考えをもつ人との議論を通じて自 分がどのように考えるのかを重視するという姿勢をもつことにする。このよう な姿勢をもつときには、他人の文章を引用するよりも、まず自分で対立仮説を 提示し、それに反論する形で自説を展開する文章を作る方が有益と思われる。 誰かの意見を基にして論旨を作るときに、元の発言者の真意を理解していなかっ たり、曲解があっても一向に構わない。元の発言者のことを理解するために議 論をおこなっているのではないからである。

上で整理した引用記号を禁止することのデメリットはこのような考えからはデ メリットにはならないということである。引用記号を利用することの利点も利 点として強調できるものではない。引用記号を利用することによる 途中参加者の不利益、引用記号を禁止することの利点だけ が依然として有効な論点として生き残る。

以上の議論からの論理的な帰結は「メーラーの引用機能を利用した引用は禁止 する」ということになる。


補足

  1. 引用記号を禁止することについては、その内容ではなく、禁止条項があること 自体に懸念も生まれた。禁止条項を作るよりも、メンバーの良識と、度が過ぎ ることに対する管理人の注意だけで問題に対処すべきとの意見もでた。 もっともな意見ではあるが、引用機能の利用は日常生活ではふつうにつかわれ ていることであり、誰も悪意で利用しているわけではないこと、および議論に 集中するために、途中での管理人による警告や注意は極力減らしたいこと、か ら禁止条項を作る方がいいと判断した。

  2. 引用機能の禁止を提案しているのは、 文章を書くときの精神構造のようなことにも関係している。 断片的な文章に対して断片的に反応しているだけで コミュニケーションが成立するのが多くの場合のメールの文章であり、 メーラーの引用機能はそのようなコミュニケーションの ありかたに大きく貢献していると思う。 経済問題メーリングリストではこのようなコミュニケーションを 目指しているわけではない。 メーラーの引用機能は便利だが、 安易につかう人は自分でよく考えもせずに発言してしまうということを 問題にしている。


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管理人:慶應義塾大学経済学部 大平 哲