卒業論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
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稲石果音「老朽化したホテルへの昭和レトロの導入」

老朽化したホテルにも魅力がある。2000年以降、毎年100軒以上のホテルが廃業している。1964年からはじまったホテルブームを経て大量に建設されたホテルが、バブル崩壊によって経営が苦しくなり、改修費を支払うことができないまま老朽化の一途をたどっている。低い宿泊費で経営せざるを得ない老朽化したホテルに対して、島本(2018)は他世代よりも宿泊にお金をかけない若者を集客する必要性を示した。1947年創業の伊東ハトヤホテルはバブル崩壊後の経営不振に苦しんだが、建物の古さを昭和レトロな魅力として演出することで、新たに若者の集客に成功した。

老朽化したホテルに若者をより効果的に惹きつけるためには、どんな昭和レトロを演出するかが鍵となる。昭和レトロとは、昭和時代のノスタルジックな雰囲気や憧れをさす言葉である。昭和レトロブームは1970年代からはじまっており、2022年現在もつづいている。2000年以降は、とくに昭和を経験していない平成生まれの若者が昭和レトロを愛好する傾向がある。堀内(2007)は、昭和レトロの内容が昭和30年代を中心とした古き良き昭和のイメージと合致することが、若者にとって重要であることを示した。古谷、田村、増田、田中、水師(2019)は、若者が昭和レトロに対して古さの中に新しさを求めていること、辻、梅村(2012)は非日常の体験を求めていることを示した。天野(2017)は、レトロツーリズムの視点から昭和レトロを取りいれた施設を4つに分類し、昭和レトロの導入が集客にプラスの影響をあたえることを述べた。古谷、田村、増田、田中、水師(2019)や辻、梅村(2006)は昭和レトロのどの要素が若者を惹きつけているのかを分析し、天野(2017)は施設に昭和レトロを導入することの有用性を説いた。しかし、対象客層と昭和レトロ導入施設を限定した分析はしきれていない。

本稿は、対象客層を若者に絞り、昭和レトロの導入先も老朽化したホテルに限定した。ホテルは老朽化した建物を活かしたまま、古さの中に新しさのあるような昭和レトロを演出し非日常の体験を提供することで、低い宿泊費、宿泊以外の付加価値、インスタ映えを達成し、若者を惹きつけることができることを示す。1節で老朽化したホテルの現状と若者を惹きつける必要性を述べる。2節と3節では、それぞれ事例をもとに若者がホテルに求める要素と、若者が求める昭和レトロの要素について分析する。4節では、老朽化した建物を活かしつつ、若者が求めるホテルの要素と昭和感の要素を合致させた昭和レトロを演出することで、効果的に若者を惹きつけることを示す。

論文のフロー図

目次

はじめに
1 ホテルの老朽化について
 1-1 ホテルの老朽化の現状
 1-2 老朽化したホテルと若者
2 若者がホテルに求めること
3 若者が求める昭和レトロ
 3-1 昭和レトロブームについて
 3-2 昭和レトロの導入の成功事例
 3-3 若者が求める昭和レトロ
4 老朽化したホテルでの昭和レトロの導入
 4-1 宿泊費の安さ
 4-2 昭和時代の体験
 4-3 インスタ映えを意識した昭和レトロ
おわりに
参考文献

参考文献

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