イラクにおける大規模爆弾攻撃事件(2009年)

イラクでは,2007年秋以降,米軍・多国籍軍への攻撃事件と部族間・宗派間抗争に起因する民間人を標的とした攻撃事件,いずれも顕著に減少し,治安情勢は「劇的」に安定化に向かっていると評価されている。米軍以外の「有志連合軍」は次々にイラクから撤退し,アメリカもイラクと安全保障協定(2008年11月17日署名,2009年1月1日発効,主な内容は【注釈2008年[11-4]】を参照されたい))を結んで,09年6月末までに都市部からの米軍の撤退,2011年末までの米軍のイラクからの完全撤退が定められた。
しかし2009年に入って,下記の表のように,主としてシーア派居住地区やシーア派巡礼者,あるいは米軍・イラク政府に協力的な部族長や自警団を標的とした爆弾攻撃事件が頻発し,多数の民間人死者が発生している。
日付は現地時間
1月2日 バビル州ユシフィヤで部族長宅への自爆攻撃により23人死亡。
1月4日 バグダッドでシーア派巡礼者への女性の自爆攻撃により38人死亡。
2月11日 バグダッドの市場とバス・ターミナルで2台の自動車爆弾攻撃により16人死亡。
2月13日 バビル州ムサイブでシーア派巡礼者への女性の自爆攻撃により40人死亡。
3月5日 ヒッラの市場で自動車爆弾攻撃により13人死亡。
3月8日 バグダッドの警察学校で自爆攻撃により少なくとも30人死亡。
3月10日 バグダッド西部アブグレイブで部族長標的の自爆攻撃により33人死亡。
3月23日 ディヤラ州ジャラウラでクルド人葬儀会場への自爆攻撃により23人死亡。
3月26日 バグダッド東部シーア派居住区の市場で自動車爆弾攻撃により20人死亡。
4月6日 バグダッドで一連の爆弾攻撃により37人死亡。
4月23日 ディヤラ州ミクダディヤで自爆攻撃によりイラン人巡礼者44人含む53人死亡。
バグダッドで難民たちに食糧配給中の警察部隊標的の自爆攻撃により31人死亡。
4月24日 バグダッドのシーア派聖廟外で2人の女性の自爆攻撃により71人死亡。
4月29日 バグダッド東部サドルシティで2台の自動車爆弾攻撃により51人死亡。
5月6日 バグダッド南部の市場で駐車中の自動車爆弾攻撃により15人死亡。
5月20日 バグダッド北西部のシーア派貧困者居住地区で自動車爆弾攻撃により41人死亡。
5月21日 バグダッド南部のスンニ派居住地区でIED攻撃により米兵3人死亡,民間人12人死亡。
6月10日 ナーシリヤ西方のシーア派居住の村で自動車爆弾攻撃により33人死亡。
6月20日 キルクークのシーア派モスク前でトラック爆弾による自爆攻撃により72人死亡。
6月22日 バグダッド各所で自動車爆弾や自爆攻撃により23人死亡。
6月24日 バグダッド東部サドルシティの市場で爆弾攻撃により78人死亡。
6月26日 バグダッド中心部で二輪車に仕掛けられた爆弾攻撃により少なくとも19人死亡。
6月30日 キルクークの市場で自動車爆弾攻撃により33人死亡,100人以上負傷。
7月8日 モスル北郊の住宅地とシーア派モスク近くで2件の自動車爆弾攻撃により16人死亡,33人負傷。
7月9日 タルアファルで警察反テロ部局職員宅への自爆攻撃,集まった群衆の中で別の1人が自爆攻撃,38人死亡,66人負傷負傷。
バグダッド東部サドルシティの市場で2発のIED攻撃により7人死亡,30人負傷。
バグダッド北部で警官隊標的の2発のIED攻撃により9人死亡,警官3人含む35人負傷。
7月21日 バグダッド各所でIEDや自動車爆弾攻撃により16人死亡,120人以上負傷。
7月30日 バクバでスンニ派地方政治団体(復興開発運動)事務所への爆弾攻撃により7人死亡,8人負傷。
カイムの警察署への自動車爆弾による自爆攻撃により5人死亡,7人負傷。
7月31日 バグダッドの5カ所のシーア派モスク近くで爆弾攻撃により金曜礼拝者少なくとも28人死亡,136人負傷(北部シャアブ地区で24人死亡・107人負傷,ディヤラ橋近くのモスクで4人死亡・17人負傷,南東部ザファラニヤ地区で1人死亡・6人負傷,南西部イラム地区で4人負傷,東部カマリヤ地区で6人負傷,カマリヤ地区以外はサドル師派のモスク)。
8月7日 モスル北郊のラシーディヤ村のシーア派モスク近くで巡礼者標的の自動車爆弾による自爆攻撃により38人死亡,140人負傷(200人以上負傷の情報も。
バグダッド東部でシーア派巡礼者標的の2件計3発の爆弾攻撃により7人死亡,28人負傷。
バグダッドのスンニ派居住地区で二輪車爆弾攻撃により警官3人含む6人死亡,30人負傷。
8月10日 モスル東郊のカズナ村(シーア派少数部族居住)で2件の大規模なトラック爆弾攻撃により少なくとも28人死亡,138人負傷。
バグダッド各所で8件のIED攻撃事件により19人死亡,100人以上負傷。
8月13日 タルアファル西方シンジャル(少数派クルド人イスラム教徒居住)の喫茶店内で2人の自爆攻撃により21人死亡,32人負傷。
8月19日 バグダッド中心部と北部の官庁街,南部・西部の商業地区で6件の爆弾攻撃事件により計95人死亡,536人負傷。
8月24日 クート近郊で2台のミニバスに仕掛けられた爆弾により11人死亡,12人負傷。
8月29日 サラハディン州北部シャルカット郊外の村(スンニ派居住)の警察署への自動車爆弾による自爆攻撃により少なくとも警官6人含む12人死亡,17人負傷。
タルアファル西方シンジャルの市場近くで駐車中のトラック爆弾により6人死亡,23人負傷。
9月7日 ラマディの警察検問所への自動車爆弾による自爆攻撃により警官3人と民間人5人死亡,16人負傷。
バクバのシーア派モスク入り口で警官の制服を着た男の自爆攻撃により警官ら6人死亡,18人負傷。
9月10日 モスル東郊のワルデク村(シーア派クルド人居住)でトラック爆弾による自爆攻撃により25人死亡,50人負傷。
9月18日 バビル州マフムディヤのシーア派居住地区のパン屋近くで駐車中の車に仕掛けられた爆弾攻撃により少なくとも7人死亡,21人負傷。
9月28日 【イラク各地で爆弾攻撃により計18人死亡】
ラマディ西部の警察署への爆弾を搭載した給水車による自爆攻撃により警官7人死亡,16人負傷。
バグダッド西部ガザリヤ地区で2発の爆弾攻撃によりイラク兵3人死亡,民間人11人含む15人負傷。
10月5日 アンバル州北部ハディサで親政府派と反政府派に分裂したスンニ派部族の葬儀会場への自爆攻撃により6人死亡,15人負傷。
10月6日 ファルージャ南方約25kmのアミリヤの市場でミニバスに仕掛けられた爆弾により少なくとも9人死亡,31人負傷。
10月11日 ラマディ中心部で警察本部近くの駐車場に駐車中の自動車爆弾攻撃と集まった警官隊と民間人への二輪車による自爆攻撃,その後病院近くで3発目の自動車爆弾攻撃により少なくとも16人死亡,負傷者多数。
10月13日 バクバ近郊ブハリツで自爆攻撃によりスンニ派覚醒評議会指揮官1人含む8人死亡,10人負傷。
10月16日 タルアファルのスンニ派モスク内で男が聖職者や礼拝者に発砲の後に自爆,少なくとも15人死亡,95人負傷。
10月18日 バグダッド北部アダミヤ地区で2件の爆弾攻撃事件により計8人死亡,29人負傷(駐車中の自動車爆弾攻撃により5人死亡,15人負傷,二輪車に仕掛けられた爆弾攻撃により3人死亡,14人負傷)。
10月25日 バグダッド中心部の司法省庁舎前で自動車爆弾による自爆攻撃,数分後に近くの市行政庁舎前でトラック爆弾による自爆攻撃,少なくとも司法省職員35人と市職員25人含む155人死亡,500人以上負傷。
11月1日 バビル州ムサイブで自転車に仕掛けられた爆弾により5人死亡,37人負傷。(AP)(R)
カルバラの警察検問所近くで爆発物を積んだバスによる自爆攻撃により警官1人含む3人死亡,15人負傷。(AP)(R)
12月7日 バグダッド東部サドルシティの中学校校庭で爆弾攻撃により生徒7人死亡,41人負傷。(R)(MC)
12月8日 バグダッド南部ドーラ地区で警官隊標的の自動車爆弾による自爆攻撃により警官3人と民間人12人死亡,約1時間後,バグダッド中心部の法務庁舎,財務省など4カ所で自動車爆弾による自爆攻撃により127人死亡,513人負傷。(AP)(R)
12月11日 バビル州ユシフィヤで商店に仕掛けられた爆弾の爆発後に駆けつけた警官隊標的に自動車爆弾攻撃,警官2人含む6人死亡,警官2人とイラク兵2人含む21人負傷。(R)
12月15日 バグダッド中心部グリーン・ゾーンの3カ所の入り口近くの駐車場内の3台の自動車爆弾攻撃により5人死亡,16人負傷。(AP)(R)
モスル西部のキリスト教アッシリアン教会外での自動車爆弾攻撃後に集まった人々に2発目の自動車爆弾攻撃,4人死亡,40人負傷。(AP)(R)
12月23日 カルバラで26日に行なわれるシーア派の祭礼アシュラへ向かう巡礼者への攻撃事件多発。(AP)(R)
12月24日 バグダッドやバビル州などでシーア派巡礼者への爆弾攻撃により計27人死亡,130人以上負傷。(AP)(R)
12月27日 ディヤラ州トゥズクルマトで青年・スポーツ省大臣標的のIED攻撃により護衛官と警察署長やシーア派巡礼者5人死亡,28人負傷。(AP)(R)
12月30日 ラマディの州政府庁舎前の検問に自動車爆弾による自爆攻撃,州知事や治安部隊が調査中に治安部隊の制服を着た男が自爆攻撃,警官ら27人死亡,州知事含む105人負傷。(AP)(R)
ディヤラ州カリスでIED攻撃によりシーア派巡礼者7人死亡,25人負傷。(AP)(R)

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