最近、点字図書館などで点字図書を借り出す人よりも録音図書を借り出す人が多くなり、又、点字出版された書籍を購入する人が減っており、点字離れが進んでいるなどと言われている。実際どのくらいの人が点字を読み書きしているのであろうか?
「全国盲学校及び小・中学校弱視学級児童生徒の視覚障害原因等調査研究」(1996年6月、筑波大学心身障害学系代表香川邦生)によれば、1995年7月1日現在、6才以上の盲学校児童生徒総数4323名中点字使用者1297名(30.0p)、普通文字使用者は2301名(53.2p)であった。これは、盲学校での弱視教育が進み、普通の文字を使用する児童生徒が総体的に増加していることと盲学校の児童生徒数の絶対数が昭和34年以後毎年減少している結果である。
厚生省の「身体障害者・児実態調査結果の概要」(1999年1月)によれば、1996年11月1月現在で18才以上の視覚障害者30万5千人のうち、点字ができる者2万8千人、点字ができない者、23万7千人となっている。この調査は推計調査ではあるが、東京都が行った悉皆調査や点字図書館の点字読者数などと比較すると概ね妥当な数であるということができる。
盲学校の児童生徒も合わせると約3万人の視覚障害者が点字を常用して読み書きをしているとみることができる。問題は、9割以上の視覚障害者が点字を常用していないということである。もとよりこれらの多くは高齢の中途視覚障害者であるが、せめて自動券売機や自動販売機あるいはエレベーターの階数や駅舎の階段の手すりなどの点字表示程度は読めた方がよい。さらに食器の包装フィルムや缶・ビンあるいは電磁調理機や洗濯機などの家電製品にも点字表示が増えてきている。たとえ点字で読書ができなくてもこれらのサイン、デザインに用いられている点字は、文字や数字あるいは単語が多く、長時間を必要としないので読めると「生活の質」が高まる。
そこで、高齢者も含めて中途視覚障害者に点字を指導する社会的リハビリテーションのシステム作りが必要となっている。又、それらの指導に際してマス間や行間を開けたり、点字のサイズを大きくした初心者用の教材を提供することが重要となってきている。
私共が研究を行っているこの4年間に、マス間や行間を変更するソフトを開発したが、点のサイズを可変できる点字プロッタや熱転写方式の点字プロッタの開発にも協力した。また、点字サイズの大きな点字プリンタの開発にも協力している。一方、点字サイズやマス間を大きくした手書きの点字板の販売や輸入も行われはじめている。
このような機運のなかで本研究をもっと発展させる必要を痛感している。
国立特殊教育総合研究所
木塚 泰弘