自由研究セミナー〔秋学期〕
「経済学と歴史認識」


神代 光朗

 私の自由研究では、一般的には社会科学、特殊的には経済学の古典文献を学生諸君とともに熟読することを中心としている。20世紀の最後の四半世紀以降、資本主義の世界体制の停滞と混迷、ソ連型旧「社会主義」体制の崩壊、世界各地域で相次ぐ民族紛争、資本主義・世界経済のグローバル化と再編、世界的な規模ですすむ経済格差の増大等、21世紀の初頭にもちこされた私達の周囲をとりまく経済、政治、文化の諸現象は、まことに複雑で、一見、無秩序な混沌とした状況を呈しているかにみえる。そして、社会科学、とりわけ、経済学はこれらの諸事象を根底的に解明する糸口を見失いつつあるかにみえる。しかし、学問として経済学を学ぶ私達は、これらの諸事象の表面にのみ目を奪われて翻弄され、思考停止に陥るわけにはゆかない。私達が出発点としてつねに立ち帰り、学ぶべき社会科学、経済学の古典は、同時代の複雑な諸事象に実践的に立ち向うべき巨大な歴史的認識を、その体系の基礎にもっていた。今こそ、私達はこの大きな歴史の転換期の中にあって、古典の体系の中から、この世界史的な歴史意識と経済学の体系との学問的かかわりを学ぶべき時にあるであろう。従って、今年は半期のセミナーではあるが、アダム・スミス、ヘーゲル、マルクスの古典文献から、経済学と歴史認識にかかわると考えられる部分を読み、経済学を歴史科学として学習する糸口または入門を目ざすとともに、そこから現代がどうみえてくるかも共に学びたい。最後まで、古典文献を読む労苦をいとわない諸君を歓迎する。

参考書:
(1) アダム・スミス『国富論』(中公文庫)
(2) ヘーゲル『歴史哲学講義』(岩波文庫)
(3) マルクス『経済学批判』(国民文庫)
(4) マルクス『資本論』(新日本新書)
読む部分については、最初の授業の時に話す。


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