社会・環境論演習
(1)秋学期2単位・合同演習
(2)本演習においては,環境経済論の理解を促進し,より発展した水準の内容にまで到達できるようにすることを目的とする。
(3)まず初めに,環境経済学の理論内容を深めるために次の内容にしたがって,原著論文を中心に読む。
- 1.所有権とオープンアクセス問題。
ここではオープンアクセスにともなう共有地の悲劇問題を中心に,共有地のルールの形成と機能,囲い込み問題などを扱う。また,権利の配分問題も関係してくるのでコースの定理などもここでとりあげる。
- 2.環境経済学における投入産出分析。
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LCA や現実の政策での汚染物質のコントロールにおいては投入産出分析が用いられることが多い。そこで,環境経済学の理論で用いられる投入産出分析モデルの典型例をとりあげ,理論構造を解明する。
- 3.成長経済下における廃棄物排出の理論分析。
経済成長モデルのなかで,廃棄物の抑制問題を取り扱う。マクロ経済学のなかでは,環境制約がとりあげられる機会は少ない。新古典派経済成長モデル,およびハロッドの経済成長モデルに環境制約を取り入れたモデルをとりあげて,環境制約と経済成長の対抗関係を分析する。
- 4.汚染の動学的コントロールの問題。
経済動学のなかに汚染物排出抑制のコントロール問題を導入し,最適汚染の分析を行う。経済厚生の最大化問題の観点から排出抑制問題を考える。
- 5.再生可能資源と枯渇資源の問題。
漁業資源等を例として,持続可能な資源利用のモデル分析を行う。また,ホテリングタイプの枯渇性資源の問題も扱い,最適供給問題を考える。
- 6.環境税と排出権売買の理論分析。
ミクロ,マクロ双方の観点から排出権売買の経済効果,環境保全効果を分析する。特に,いわゆる共同実施と排出権売買の関係性を解明することによって,排出権売買のバリエーションの実現可能性をとりあげる。
- 7.貿易と環境の理論分析。
比較優位原理に基づいた環境と貿易のモデル,ヘクシャー=オリンに基づいたモデル,また最近のゲーム論的なモデルをとりあげ,国際貿易と環境保全の関係を分析する。またポリューションヘイブン(汚染逃避地)の理論的可能性についても論じる。
- 8.物質循環論による分析。
生態系と経済系を2つの相互依存的系として捕らえた理論モデルをとりあげ,物質循環の構造を経済学的な立場から解明する。そして,2つの系の持続可能性を理論的に定式化する。
(5)授業中にリストを配布する。
(注意)この他,定期的な研究会に出席し,報告することが義務づけられる。
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