制度・政策論特論
(1)春学期2単位・講義
(2)本年の講義の目的は,日本の製造業を題材に取り上げ,その産業構造の特徴を諸側面から明らかにする視角と,同時に社会的分業構造に注目し,下請取引関係を中心とした,日本の製造業の社会的分業構造上の特色を明らかにする視角を把握することにある。日本の工業は戦後50年間に大きな産業構造上の変化を経験した。この変化を把握するための分析視角を,具体的な日本の産業構造の変化を見ることとを通して学ぶことが,この講義の第1の目的である。たとえば,俗にいわれる重化学工業化という視角から見ることは,どのような分類分けに基づいてみているのか,その分類に基づくと何が見えるのか,そしてその視角の限定性は何かを学ぶことである。同時に,その視角を通して日本製造業の構造変化をみることにより,どのような日本の製造業の特徴が見え,問題性が見えてくるのか,これらの点を理解することが求められる。第2の目的は,それぞれの産業構造のもとで,どのような分業が企業間で行なわれているか,そして社会的分業関係にある企業間で,どのようなつながりが形成されているかについての分析視角を,具体的に日本の製造業を中心に分析することにより理解することである。日本の社会的分業の特徴として,講義担当者は山脈型の分業構造の存在を強調している。これは米国シリコンバレーに見られるような分業構造と一脈通じるが,それぞれ独自性を持ち,生産システムとして他の国の製造業にない特徴と問題性を保持している。そして,そのもとでこれまで特徴とされてきた下請系列関係が,解体しつつある。このような問題を考察しうる視角を具体的現象の検討を通して学んでもらいたい。そのために,日本の製造業を題材として,講義担当者がこれまで展開してきた議論を講義する。それと同時に,最近の日本の製造業の実態について調査を行った成果を取り上げ,講義で学んだ視角をつかった検討を,参加者共々行うことを予定している。
(5)渡辺幸男『日本機械工業の社会的分業構造』有斐閣1997年
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