近世日本経済史
家族(家)・市場・村落からみた近世農村社会の成立と変容:組織・制度・慣習をふくむ「市場」概念の確立へむけて
(概要)
本講義では,近世農村社会の成立とその変容を「市場」market の進展とそれを受容した組織・制度である「家族」ならびに「村落」との相互連関のなかで考察しようとするものである。これらの問題は日本経済史のなかでも「太閤検地」論争のなかで検討が加えられるべきであったが,制度的な過程を確定する作業が中心となり,「市場」「家族」「村落」という具体的な事柄へのアプローチは少なかった。以下にこれらの問題に関する展望を簡単に記す。
まず,近世農村社会の「家族」であるが,その形成の過程をたどっていくと,17世紀後半以降いわゆる「直系家族」stem family を軸とした日本的な「家」の形成に重なってくる。講義では「下人」の流入・定着・世帯形成という歴史的な流れをおさえながら,やがて生産・消費単位として独立し,「百姓」身分の中核を担う勢力へと成長する様子を考察したい。また「家族」が「市場」に立ち向かうとき,「労働」が重要な要素になる。徳川農村の「勤労革命」(速水)とは,婦女子労働力を積極的に「市場」に参入させた過程をさすのであろう。
つぎに,「市場」であるが,この概念の原理について経済学が前提とするような価格形成(均衡)メカニズムとしての「市場」だけを考えているの
ではなく,むしろそこに参入する人間は不完全であることを前提に,その中で経済的にも合理的な成果を獲得しえたとするならば,それを補完した制度・組織・慣習(ルール)が重要であるという事実に眼を向けることにしたい。そこに本講義では「家族」「村落」と「市場」併記した意図がある。これとは別に「市場経済」への農民の関わり方のパターンについても,テキストに基づきながら議論したい。
最後に,「村落」であるが,とくに徳川以前の「惣村」との違いを明確にしながら,基本的に「市場」への制度的な対応としての「村」領域というスタンスから考えることにする。つまり,制度・組織・慣習という分析枠組みのなかで「市場」概念を相対化し,歴史的な分析概念としての新しい「市場」概念を築いていきたい。
〔評価方法〕
1)
指定文献リポート(指定文献から5冊を選択)30点
締め切り:12月最後の講義時まで,各400字10枚以内
2)
年度末試験60点
3)
平常点10点程度
年間複数回出席を取る。出席回数により加点する。
〔テキスト〕1冊指定
・速水・鬼頭・友部編『歴史人口学のフロンティア』
[春学期日程]
第1回 ガイダンス(obligations ・履修上の注意)
第2回 家族・労働・人口からみた江戸時代
─講義アジェンダ(1)
第3回 市場・村落・家からみた江戸時代
─講義アジェンダ(2)
第4回 戦国・太閤検地・近代初期の村落と農民・農家(1)
第5回 戦国・太閤検地・近代初期の村落と農民・農家(2)
第6回 近代農村社会における「家」の形成史(1)
第7回 近代農村社会における「家」の形成史(2)
第8回 17・18世紀の日本経済史(1)
第9回 17・18世紀の日本経済史(2)
第10回 徳川日本農村の人口・家族史(1)
─人口トレンド─
第11回 徳川日本農村の人口・家族史(2)
─出生力の構造と変遷─
第12回 徳川日本農村の人口・家族史(3)
─結婚市場の構造─
第13回 徳川日本農村の人口・家族史(4)
─死亡パターンの特徴─
第14回 徳川日本都市の人口・家族史(1)
─urban grave- yard effect ─
第15回 徳川日本都市の人口・家族史(2)
─三都と地方都市─
[秋学期日程]
第16回 歴史の中の市場・制度・組織の相互連関
(1) ─研究史─
第17回 直系家族と「市場」への対応(1)
─勤労革命とはなにか─
第18回 直系家族と「市場」への対応(2)
─労働市場の構造と展開─
第19回 世帯ライフサイクルと「市場」の展開
(1) ─土地市場の構造─
第20回 世帯ライフサイクルと「市場」の展開
(2) ─土地市場の成果─
第21回 世帯ライフサイクルと「市場」の展開
(2) ─土地市場の展開─
第22回 プロト工業化・家族経済・人口(1)
─西欧と日本の比較史─
第23回 プロト工業化・家族経済・人口(2)
─西欧と日本の比較史─
第24回 プロト工業化と農「家」の対応(1)
─西日本─
第25回 プロト工業化と農「家」の対応(2)
─西日本─
第26回 プロト工業化と農「家」の対応(3)
─東日本─
第27回 プロト工業化と農「家」の対応(4)
─東日本─
第28回 近代経済成長と二重構造論(1)
─議論の整理─
第29回 近代経済成長と二重構造論(2)
─展望─
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