東欧・ロシア社会経済思想史


助教授 神代 光朗

 1989〜91年の東欧・ロシアの旧体制の崩壊とその後の体制転換過程に伴う諸矛盾の進展は,ある意味で20世紀最大の歴史的事象に属するもの
の一つであった。21世紀になって,更に混迷に充ちた世界史的現実の中で,西側資本主義世界の矛盾とも関連して,これらの歴史的諸事象の意味を理解する努力は,今日,極めて大切な学問的課題であろう。しかし,そのためには,これらの地域の国々の歴史的諸問題の理解が必要である。こうした点を考慮して,本講義では,わが国で比較的認識の浅い中・東欧やロシア等のヨーロッパの後進ないし辺境地域の社会・経済の発展と社会・経済思想の関連を中心に,これらの地域のナショナリズム,西欧主義,インターナショナリズムといった問題を主に社会・経済思想の観点から考察してゆきたい。具体的には,ロシアの啓蒙主義とインテリゲンチアの思想,古典的ナロードニキ思想と『資本論』受容をめぐるロシアの資本主義論争,再版農奴制と分割前ポーランドの社会と国家,啓蒙期ポーランドの政治・経済的諸問題−特にポーランド分割と国内改革諸思想,19世紀ポーランドの諸問題と社会・経済思想の諸潮流及びその対抗関係,特に民族問題,農業・農民問題,工業化と「東方市場」論争等とポジティヴィズム,ナショナリズム,社会主義の間のそれらをめぐる論争などを講義の中心とする予定である。なお,担当者のポーランドにおける在外研究時の見聞等も含め,今日の中・東欧の転換過程についても歴史的展望の中で適宜,講ずる予定であり,又,年末には東欧またはロシアの映画の鑑賞も予定している。
 参考文献は,授業の進行に応じ指示するが,当面,森宏一『ロシア思想史』(同時代社1990年),石川郁男『ゲルツェンとチェルヌィシェフスキー』(未来社1988年),『ロシア史2,18〜19世紀』(山川出版1994年),南塚信吾編『東欧の民族と文化』(彩流社,1989年),阪東宏編著『ポーランド史論集』(三省堂,1996年),キェニェーヴィチ『歴史家と民族意識』(未来社1989年),キェニェーヴィチ編『ポーランド史』(恒文社1986年),『講座スラヴの世界(3),スラヴの歴史』(弘文堂1996年),伊東・井内・中井編『ポーランド・ウクライナ・バルト史』(山川出版1999年),南塚編『ドナウ・ヨーロッパ史』(山川出版1999年),柴編『バルカン史』(山川出版)等が参考になる。


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