企業理論


助教授 津曲 正俊

 入門的なミクロ経済学では企業の特徴を単なる生産関数としてのみ表現する。しかし,その内部をよく見ると,生産にかかわる大勢の人間の活動をうまく調整することを目的して構築された多くの興味深い組織上の工夫が観察される。本講義は,「生産活動のための組織」という側面から企業をとらえて,生産活動を支える多様な仕組みの意義と役割を分析することを目的としている。
 近年,「ゲーム理論」「契約理論」といったミクロ経済理論を用いて企業などの組織の問題にアプローチする手法が注目されている。講議でもこれらのミクロ理論を基本的な分析道具とした議論を行う。必要となるゲーム理論と契約理論の基本部分を逐次説明しながら講議をすすめる予定であるが,特殊科目の「契約理論」「ゲーム理論」の内容がよりよい理解に役立つかもしれない。以下の内容を予定している。

 1 序論:問題意識
 2 取引費用が引き起こす問題
2.1 取引費用と「不完備契約」の問題

2.2 ホールドアップ問題

2.3 なぜ「組織」は重要か?

 3 「不完備契約」の問題に対処する様々な仕組み
3.1 企業統合の意義:資産の所有構造の観点から

3.2 権限配分と組織形態の選択

3.3 コーポレートガバナンスの諸手段の役割

 4 モラルハザード問題と企業組織
4.1 モラルハザード問題

4.2 モラルハザード問題への様々な対応

4.3 インフルエンス活動と組織形態の選択

講義内容をすべて網羅したテキストはないが,参考文献として次のものがあげられる。

(1)ミルグロム,ロバーツ(奥野,伊藤,今井,西村,八木訳)『組織の経済学』1997年,NTT 出版
(2)柳川範之『契約と組織の経済学』2000年,東洋経済新報社
(3)小田切宏之『企業経済学』2000年,東洋経済新報社
(4)小佐野広『コーポレート・ガバナンスの経済学』2001年 日本経済新聞社


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