契約理論


助教授 石橋 孝次

 均衡分析(equilibrium analysis)・ゲーム理論(game theory) と並んで,近年ミクロ経済学の分
析用具として定着しつつある契約理論(contract theory) についての入門的理解を目的とする。契約理論とは,情報が非対称な場合の経済活動の特性を明らかにするものであり,新古典派経済学を補完する組織・制度の経済分析にとっての不可欠な分析用具となっている。情報とインセンティブの理論に基づく基礎理論と,労働契約・企業組織・金融契約・保険契約・産業組織・規制などの問題への応用理論とを並行的に解説する。講義内容は以下のとおりである。

 1.契約理論の目的と方法
 2.期待効用理論
(1)期待効用定理

(2)リスクに対する態度

 3.モラル・ハザード
(1)標準的プリンシパル・エージェント・モデル

(2)追加的情報の価値とモニタリングのインセンティブ

(3)複数の職務と仕事のデザイン

(4)複数エージェント:フリーライダー問題とトーナメント資金

(5)モラル・ハザードの動学モデル

(6)保険契約におけるモラル・ハザード

(7)流通と取引慣行

(8)金融契約とエージェンシー・コスト

(9)コーポレート・ガバナンス

 4.アドバース・セレクション
(1)レモンの原理

(2)アドバース・セレクションの基本モデル

(3)保険契約におけるアドバース・セレクション

(4)価格差別

(5)信用割当と自己選択の手段としての担保

(6)インセンティブ規制の理論

(7)複数エージェント:オークション

 5.シグナリング
(1)スペンスの学歴モデル

(2)品質のシグナルとしての価格と広告

 6.不完備契約
(1)取引費用とホールド・アップ問題

(2)所有権法の経済分析

(3)公的企業の民営化

〔参考書〕
・ポール・ミルグロム,ジョン・ロバーツ(奥野他訳)『組織の経済学』NTT 出版1997年
・ベルナール・サラニエ(細江他訳)『契約の経済学』勁草書房2000年
・青木昌彦・奥野正寛『経済システムの比較制度分析』東京大学出版会1996年
・丸山雅祥・成生達彦『現代のミクロ経済学』創文社1997年


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