独占資本主義論


助教授 延近 充

 2年生を対象に設置されているマルクス経済学I,IIでは,資本主義社会の経済構造と運動法則を原理的かつ体系的に明らかにすることが課題とされた。そこで明らかにされた資本主義の一般的運動法則は,資本主義が資本主義であるかぎり根底において貫徹しているが,現代のいっそう複雑化した経済問題を解明するためにはそれだけでは十分ではない。
 資本主義の一般的運動法則は競争の全面的支配を特徴とする資本主義においては「鉄の必然性」をもって貫徹するのであるが,資本主義の発展過程はその内的メカニズム自体によって競争の作用を一部制限するようになる。主要な生産部門が少数の巨大資本によって支配され,独占的市場構造が形成されてくるのである。そうした資本主義の構造変化・独占段階への移行にともなって,資本主義の一般的運動法則は一定程度変容し,矛盾の現われ方も異なったものとなってくる。さらに,そのような矛盾に対処するために経済過程に国家が介入することが必要とされ,特に第2次大戦後では社会主義世界体制の成立・冷戦のもとで国家の果たす役割はいっそう大きくなっていった。
 したがって,現代の経済を分析するためには,資本主義の一般的運動法則を基礎としつつ,このような資本主義の歴史的な段階変化その構造と動態を明らかにする理論が必要とされる。この講義では,競争の全面的に支配する段階から独占と競争とが絡み合う段階への移行の問題と現代資本主義を基本的に特徴づける独占資本主義の構造と動態を明らかにすることを中心課題とする。
 テキストとして,北原勇『独占資本主義の理論』(有斐閣)を使用する。なお,この講義は上述のような位置づけを持っているため,マルクス経済学I,IIを履修済であることを前提とし,現代資本主義論も履修されることが望ましい。




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