自由研究セミナー
「現代の経済をどうみるか」
出口の見えない深刻な不況に陥っている日本経済、世界の中で例外的に好調な状態を保っているアメリカ経済、国境を超えて移動する巨額の資金や巨大多国籍企業の提携・合併のような世界市場の再編の動き、急速な経済成長から一転して不安定となったアジア経済。経済的な相互依存が深まり一国の経済政策が他国に与える影響が大きくなって、混迷を深める経済問題や地球環境問題などの解決のために各国間の協力の必要性が強まる一方、政策手段は手詰りとなり活路を見出せない状態……。こうした現代資本主義が直面している問題の根源を明らかにするためには、理論的検討と現状分析を世界史的視野から行う必要がある。
2年生を対象に設置されているマルクス経済学I、IIは、資本主義社会の経済構造と運動法則を原理的かつ体系的に明
らかにすることを課題としている。そこで明らかにされる資本主義の一般的運動法則は、資本主義が資本主義であるか
ぎり根底において貫徹しているが、現代のいっそう複雑化した経済問題を解明するためにはそれだけでは十分ではない。資本主義の一般的運動法則は競争の全面的支配を特徴とする資本主義においては「鉄の必然性」をもって貫徹するのであるが、資本主義の発展過程はその内的メカニズム自体によって競争の作用を一部制限するようになる。主要な生産部門が少数の巨大資本によって支配され、独占的市場構造が形成されてくるのである。そうした資本主義の構造変化・独占段階への移行にともなって、資本主義の一般的運動法則は一定程度変容し、矛盾の現われ方も異なったものとなって
くる。さらに、そのような矛盾に対処するために経済過程に国家が恒常的に介入することが必要とされ、特に第2次大戦後では社会主義世界体制の成立・冷戦のもとで、アメリカ主導によって構築された国際政治・軍事・経済体制が資本主義諸国の復興と経済成長のための不可欠の枠組みとなった。冷戦の終焉はこうした枠組みの崩壊をも意味しているのである。
したがって、現代の経済を分析するためには、資本主義の一般的運動法則を基礎としつつ、資本主義の歴史的段階変化とその特徴を明らかにする理論が必要とされる。このような理論とそれを基礎とした現状分析を本格的に取り扱うのは三田に設置されている専門科目である。この自由研究セミナーでは、その入門編として現代の経済の抱える問題についてどのようにアプローチしたらよいかを、理論・現状分析の両面から受講者諸君とともに考え、討論することを第1の目的としている。
この自由研究セミナーの第2の目的は、討論をつうじて論理的な思考力や人の意見を理解し自分の考えをまとめる力を養うこと、自分で研究テーマを設定し論文にまとめるトレーニングを行なうことである。このため、授業に毎回出席することはもちろん、夏休みには論文を書き、秋にそれについての報告を行ない、他の受講者の質疑や私のコメントに基づいて、論文を書き直し、学年末に提出することが義務づけられる。授業の進め方など詳細については最初の時間に説明するので受講希望者は必ず出席すること。
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