自由研究セミナー


後平 隆

 「フィガロの結婚」といえばモーツァルトのオペラを思い浮かべるでしょう。あれには原作があって、作者はボーマルシェというフランス18世紀の劇作家。この人は「セヴィリアの理髪師」も書いていて、これはフィガロ三部作の最初の作品。最後は「罪ある母」で、この三作を通してオペラでおなじみの登場人物の前身や後日談が語られるという趣向になっているわけです。「フィガロの結婚」ほど人を幸福感で満たしてくれるオペラはない。原作もおもしろい。見てから読むか、読んでから見るか。LDでオペラを見て、翻訳で原作を読む。一人で読むより、何人かで役割を分担して読み合わせをするほうがもっと楽しい。それをやってみたい。
 「フィガロの結婚」の次は、さらに時代をさかのぼって、天才劇作家を輩出したフランス17世紀から、モリエールの辛辣でおかしい「タルチェフ」を読もうか。そして最後にシェークスピアの「オセロ」で締めくくる。これもLDでオペラをみる。
 じつはこの三作は、フランス19世紀の小説家スタンダールの代表作「赤と黒」のなかに陰に陽にふんだんに取り込まれている。日本人の多くが教養の大切さを感じていた頃、各種の世界文学全集が出た。第一回配本の売れ行きが企画の成否を決めたから、「赤と黒」はいつもその栄誉に浴していた。こんなに生きる勇気を鼓舞してくれる物語も少ない。なにより読んで楽しい。剣あり、恋あり、野心ありで、今の世の青年にもおもしろくないはずがない。が、残念ながら、教室で読むには長い。論じるためには、諸君がこの小説を読了していることが前提になるけれど、昨今ではこれがあやしい。でもいつか読んで欲しい。そのときのためにも「フィガロの結婚」「タルチュフ」「オセロ」を読んでおこう。スタンダールが夢中になった劇だもの、どれもとびきり面白いこと請け合い。大人になってから、じつはまだ読んでいないんですよ、などとは恥ずかしくて言えないでしょう?だから一緒に楽しく読んでみないか。




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