自由研究セミナー〔秋学期〕
「アダム・スミス著『国富論』を読む」
私の自由研究は、一般的には社会科学、特殊的には経済学の古典文献を学生諸君と一緒に熟読することを中心とする。現代の落ち着かないうわついた社会状況の悪しき影響が、最も冷静な批判的視点を培うべき大学アカデミーの世界にも暗く重い影をおとしはじめている時代が、特にこの数年つづいている。経済学部という社会科学の最も基本を構成する伝統のあるこの学部に籍をおいて、専門の課程でどのような研究分野を選択するにせよ、人類の学問的文化遺産をなす社会科学史上の古典を、じっくりと読み通すという精神的思惟の過程をくぐりぬけてくる学生がどれだけいるであろうか。
多分、一割にもみたないのではなかろうか。そして「精神のない」「専門人」が毎年、社会の中枢部へとはき出されてゆくのである。今や大学は学問の場として崩壊の縁に立たされていると言っても過言ではない。そうした危機の意識をともにもち、古典を通じて学問の深さと香りを感じとろうではないか。その精神的過程こそが、危機にある現代日本の社会を根底から再建すべき若い学生諸君の人間的な批判的精神を育てるのだと考える。その点で、スミスの『国富論』は、過去の経済思想を体系的に総合し、経済学を自立した科学として確立した最初の偉業の代表的な著作の一つであるとともに、後のすべての経済学がそこから、その思想的・学説的源泉をくみとった源でもある。
従って、今年度は、半期のセミナーではあるが、諸君とともに、この古典を熟読する。運営方法は最初の授業の時に話す。
参考書:
- アダム・スミス『国富論』(中公文庫全3冊)、その他は適宜、授業の時間中に示す予定である。
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