自由研究セミナー
「都市と建築―「内」と「外」の空間意識について」


伊藤 行雄

 哲学者の和辻哲郎は、著書『風土』において、日本の家の構造を「距てなき結合」として特色づけている。日本の家屋では、どの部屋も錠前などによって他の部屋と区別されることがない。部屋がたとえ襖や障子で仕切られているにしても、それはただ相互の信頼において仕切られるのであって、それを開けたりすることを拒むものではない。一方、ヨーロッパでは、家の内部は個々の独立した部屋で区切られ、その間は厚い壁と頑丈な扉によって距てられている、つまり個々が相互に距たる構造となっている。
 家の外部と内部についていえば、日本では玄関で靴を脱ぐことなどによって明白に区別されるのに対して、ヨーロッパでは個別の部屋の内外が問題であり、部屋の外は「距てある」個人と個人の共同空間である。城壁や市壁の内側での共同生活を考えれば、距てある個人と個人の、日本とは違った意味での「内」なる空間ということになる。
 『風土』が刊行されたのは1935年だが、「内」と「外」の問題を私たちは現代の都市生活や建築との関係のなかでどう考えていくべきか、また、日本人とヨーロッパ人との空間意識の違いはどのような形態であらわれているか、など本研究会ではこうした西と東の文化の相違を、建築や都市、町並みなどに焦点を合わせて様々なテキストを検討し、フィールドワークを行っていく予定である。
 研究会は参加者のレポート発表と討論によって進められる。また、研究発表の基礎的な方法やレジメ作成のトレーニングも行う。使用テキストの順序は第1回目の授業で決める。

 テキスト(予定)
芦原義信『街並みの美学』(岩波同時代ライブラリー)

陣内秀信『東京』(文春文庫)

岡並木『舗装と下水道の文化』(論創社)

和辻哲郎『風土』(岩波文庫)

ブルーノ・タウト『日本美の再発見』(岩波新書)

カール・クルーバー『ドイツの都市造形史』(西村書店)

G.カレン『都市の景観』鹿島出版会 その他





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