自由研究セミナー
「書く行為の歴史」


石井 康史

 文字は人間にとってもっとも重要なメディアであり続けてきましたが、単なる情報伝達手段以上のものであることが時に問題になってもきました。たとえば西欧ロマン主義者にとっては個人の精神というものの運動を記録するのが文字でしたが、コンピュータで書く電子メールの文字に精神が宿っているとはあまり思えません(どちらが良いということではまったくありません)。あるいは西欧ロマン主義と正反対に、日本の書道の先生がなぜ墨をすりながら無心になれと小学生にまで説いたりするのでしょうか。
 言い換えれば、文字を書くとはいったい何を記録することなのでしょうか?このセミナーでは文字を書く行為の歴史を概観することを通じて、文字というメディアが何を記録してきたのか、文字を書く人間の姿がどのように理解されているか、筆記文字と人間がどのような関係を取り結んできたのかといった問題を考えてみます。
 具体的には古代シュメールの楔型文字、エジプトの象形文字からハイパーテクストまで、あるいは古代のスタイラス、中世の羽ペン、グーテンベルグの印刷機、金属ペン、万年筆、タイプライター、コンピュータにいたるまでの西欧の文字筆記の歴史、さらに墨と筆、木簡から紙にいたるまでの東洋の文字筆記の歴史も可能な範囲で取り上げます。
 授業は上記のような主題の中から参加者に事例報告をしてもらい、それについての議論中心に進めます。教科書はジョルジュ・ジャン『文字の歴史』(創元社)、ブリュノ・ブラセル『本の歴史』(創元社)、リュシアン・フェーヴル、アンリ=ジャン・マルタン『書物の出現 上・下』(ちくま学芸文庫)。その他随時指示して行きます。高価な本なので参考書にしておきますが、是非読んでもらいたいのがフリードリヒ・キトラーの名著『グラモフォン・フィルム・タイプライター』(筑摩書房)です。

 教科書:
ジョルジュ・ジャン『文字の歴史』(創元社)

ブリュノ・ブラセル『本の歴史』(創元社)

リュシアン・フェーヴル、アンリ=ジャン・マルタン『書物の出現 上・下』(ちくま学芸文庫)

 参考書:
フリードリヒ・キトラーの名著『グラモフォン・フィルム・タイプライター』(筑摩書房)





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