研究会
(金融論・経済学史)
昨年度の講義要項のなかで,「景気低迷のなか,金融の再編成を通じて,超巨大金融機関が生まれる可能性はきわめて大きい」と書いた。事態はまさにそのような方向に動き始めている。このような傾向は日本だけに限らず,欧米諸国においても明確に現れている。とくにEU域内での企業買収の展開の中心に金融機関があることは否定できない。市場になんの制限もなくその動きにまかせていれば,このような傾向が現れてくるのは必然である。そして,そこには企業の資産価値をめぐる新たなバブルの危険も秘められている。
わが国では,金融ビッグバンの進行が,巨大金融機関相互の提携や合併を生み出す契機となったことは否定できないが,詳細に検討してみると,ビッグバンへの要請とは異なる論理が貫徹しているのではないかとの疑いを抱かせる。すなわち,方向が後ろ向きなのである。経営を守るという論理が強いことに気づく。
このような動きを経済学的に追いかけるには,事態はあまりにも生々しすぎる。しかし,今われわれの目前で生じている諸現象ほど,金融とはなんなのかを考えるに好都合な材料はない。
金融を勉強しよう,あるいは研究しようとするとき,経済理論も重要であるが,今ひとつ制度を動かしているものは何か,あるいはわれわれの経済活動のなかで制度とはどのような役割をはたいているのか,を理解することもそれ以上に重要である。とくにわが国の金融制度は,しばしば国民経済にたがをはめるほど重くのしかかった。それがいま急速に変化しようとしている。制度変化の方向性を理解することを2年間で心がけてほしい。
また,金融を研究することは貨幣について考えることに通じている。われわれにとって貨幣とはなんなのか,狭く経済学に限定せず経済と社会との関わりのなかで,われわれ自身の問題として考えることが必要だろう。われわれの生活を呪縛してやまない貨幣。現代の資本主義にとって何よりも重要視される「貨幣」。こうした問題意識を持たずに金融を学ぶことには,なにほどの意義があるのであろうか。
〔貨幣について考えるための参考文献〕
・ジンメル『貨幣の哲学』(白水社)
・今村仁治司『貨幣とはなんだろう』(ちくま新書)
・マルクス『経済学批判要綱』(大月書店)
・ケインズ『貨幣論』(東洋経済新報社)
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