現代資本主義論
〔春学期〕
講義の目標
21世紀を迎えようとする資本主義については,1980年代末から90年代初頭のソ連東欧社会主義体制の崩壊,第2次世界大戦後の世界政治と経済を規定してきた冷戦構造の終焉によって,唯一の経済体制としてあたかも歴史上唯一の「勝者」のごとく,その優位性が喧伝されて今日に至っている。資本主義は他にならぶもののない絶対的な経済体制なのであろうか。資本主義の現実をみよ。その現実は,上記のごとき喧伝とはおよそかけ離れた現実をわれわれの眼前に露呈しているではないか。深まる貧富の格差・後退する社会福祉・企業家や官僚の道徳的な退廃・生産労働からの逃避・「貨幣」への妄信・着実に悪化しつつある雇用=労働条件・加速化する地球環境の破壊。その現実は歴史の勝者などというには余りにも弱者に過酷な体制ではないか。自ら生きる権利を制限せねばならない体制が果たして最も優位性のある体制などといえるのであろうか。われわれは,体制選択の権利を放棄してはならないのではないか。資本主義へのオルタナティヴを提示しなければならないのではないか。さもなければ,われわれの文明は余りにも惨めなものに終わってしまうのではないかと,率直に憂える。この講義は,労働・貨幣・環境の3要素に注目しつつ経済体制としての現代資本主義を,その内的構造と固有の運動法則に即して解明することを目指す。そして代替的経済体制を展望する可能性を検討してみたい。
講義の内容
I.現代資本主義とは──その歴史的位相
II.現代資本主義分析の基礎範疇
- 1.金融資本
- 2.国家
- 3.世界市場と停滞基調──市場原理の限界
III.現代資本主義のもとでの資本蓄積=再生産の構造──成長神話の成立と崩壊
- 1.資本集中の展開
- 2.貨幣資本の蓄積
- 3.財政と資本蓄積
- 4.グローバルな貨幣的蓄積構造と地球環境
IV.現代資本主義のもとでの貨幣=信用制度──「バブル」化の必然性
- 1.貨幣制度──金本位制から管理通貨制へ2.中央銀行か資本市場か3.公信用の展開4.金融市場肥大化の論理──「カジノ資本主義」へ
V.後半の講義への中間総括「生き方」を選ぶ権利の主張を!
〔秋学期〕
秋学期は,現代資本主義の担い手である資本を,巨大企業の所有構造とその意味,中小企業の存立状況とその意味,現代資本主義の展開における大企業と中小企業の相互関連といった視点から検討する。これを通し,現代資本主義の在り方が,巨大独占資本に主導されるものといえると同時に,大多数をしめる中小資本の存在にも大きく影響されるものであることを示す。講義は以下のように展開される。
I.現代の巨大企業所有構造と企業行動
- 1日本の巨大企業の所有構造
- 2主要国の巨大企業の所有構造
- 3巨大企業の所有構造と企業行動についてのいくつかの論点
II.現代の中小企業大いなる期待と実態
- 4日本の中小企業・ベンチャー
- 5シリコンバレーとは
- 6中小企業・ベンチャーをどのように把握するか
- 7産業集積論の復権
III.大企業と中小企業
- 8現在経済における大企業と中小企業の位置づけ
〔参考文献〕
・北原勇『独占資本主義の理論』有斐閣1977年
・北原勇『現代資本主義における所有と決定』岩波書店1984年
・植竹晃久・仲田正機編著『現代企業の所有・支配・管理コーポレート・ガバナンスと企業管理システム』ミネルヴァ書房1999年
・深尾光洋・森田泰子『企業ガバナンス構造の国際比較』日本経済新聞社1997年
・渡辺幸男『日本機械工業の社会的分業構造階層構造・産業集積からの下請制把握』有斐閣1997年
・A.saxeniann,Regional Advantage Culture and Competition in Silicon Valley and Route 128, Harvard Univ.Press,1994,A.サクセニアン『現代の二都物語』講談社1995年
・M.J.Piore &C.F.Sabel,The Second Industrial Divide - Possibilities for Prosperity,Basic Books, 1984,M.J.ピオリ&C.F.セーブル『第2 の産業分水嶺』筑摩書房1993年
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