経済思想の歴史I〔春学期〕
21世紀を目前にして、現代の経済思想は大きな課題に直面している。それは経済成長至上主義ともいうべき思考様式が、いまやその限界を露呈しているということでもある。環境・グリーン志向、自然調和、あるいは持続可能な経済体制等々、20世紀のつい最近まで関心を呼ばなかった課題が続々と提示されている。他方、貨幣的経済の安直な収益機会の追及こそが資本主義なのだといった「バブル」志向型の思考様式もまた根強い。まさに経済思想は多様な相矛盾した方向にますます拡散する傾向を示している。また、経済活動の根底に情報ネットワークが不可欠なものとなり、それへの関与はまさに平等主義的に従来の経済主体の概念を変えつつある。このような時代に、この講義で取り上げるような資本主義の古典的時代の、古典的経済思想の生成と展開を論じることにはいかなる意義があるのであろうか。これは講義の進行とともに諸君とともに考えてゆきたい課題でもある。
この講義が対象とする経済学の生成期の思想には、今日のわれわれが想像する以上に道徳的に強く関与していたものである。しかしここでいう“moral”の意味は多様で、単純な理解を拒むであろう。このことだけを諸君の頭に入れておいていただいてこの講義をきいてほしい。
講義の内容
- I.経済思想へのintroduction 市民性と経済体制
- II.アダム・スミスの時代 道徳哲学としてのpolitical economyはいかにして生まれたのか
- III.Political economyの成立と展開 道徳的要素と政策課題
- 1.マルサス『人口論』の世界
- 2.リカードウの経済学体系
参考文献
参考文献は講義開始時に別途配布する予定
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