労働経済論
(春学期)
応用ミクロ経済学的視点から,労働経済学の理論について解説を行います。労働経済理論は,経済原論2で扱われたミクロ経済理論(特に消費者理論)が,実際の我々の生活にいかに密接に関係しているかを知るための,最良の材料を提供してくれます。なぜなら,「働く」ということ自体は一生の時間の一部分に見えますが,それは収入として生活全体を支える糧となるだけでなく,「働く」こと以外の人生設計(教育,家庭生活等)での選択肢を時間的・空間的に規定するからです。現代の労働経済学理論に与えられた課題は,「働く」ということを中心とした家族や企業の中での個人の生活の諸側面を,ミクロ経済理論を利用して可能な限り説明していくことだと定義できます。
この講義では,ある程度の数学的道具を使いますが,それ以上に求めたいことは,社会や経済の現象の背後にある,「経済学的」なストーリーやメカニズムを見抜くための直感や想像力を磨くことです。そのためには,人はなぜある行動を選択するのか,その帰結は経済全体から見てどう評価できるのかを,日ごろから意識して考えることが必要です。皆さん自身が,すでに日常行っている選択について意識的になることも大切でしょう。その材料は労働だけに限りません。応用ミクロ的な立場からは,企業文化や政治・社会の動向に至るまでが,人間の行動の動機づけを分析するという立場からアプローチできます。このような視点を持つことは,個人の人生設計や,それをとりまく政策を批判的に見直すためのきっかけになるはずです。
以下は前半講義内容の概略です。
1.労働供給
2.労働需要
3.家庭内生産と家族
4.教育と訓練
5.賃金格差と労働市場
6.雇用慣行
7.労働の移動
8.労働組合
9.失業
取り合えずの参考書としては,樋口美雄『労働経済学』,島田晴雄・清家篤『仕事と暮らしの経済学』,八代尚宏『結婚の経済学』等をあげておきます。
(秋学期)
春学期ではミクロ経済学を土台とする労働経済学の基本的な理論概念や分析用具ならびに考え方について学習した。秋学期ではその理論的基礎をふまえ,さらにマクロ経済学の理論的基礎をも念頭におきながら,歴史的経緯もふまえた広い視野で主として労働経済にかかわる政策課題を学ぶことを目指す。
本年は特に歴史的転換を経験しつつある日本経済の構造変化の諸相を総合的にとらえ,その中でとりわけ労働市場ををめぐる構造変化と政策課題について考察する。日本経済の構造変化については労働に影響を及ぼすと考えられるさまざまな側面を財政,金融から産業構造,社会保障,国際経済関係にいたるまで総合的に展望し,それら労働力の需給,所得分配,生産性など労働市場の変数とどのように相互にかかわり合って変化してゆくかを分析する。そのうえで,そうした構造変化の中で,労働政策が果たす役割について省察する。
参考書としては,島田晴雄『日本再浮上の構想』東洋経済新報社,同『労働市場改革』東洋経済新報社,同『日本の雇用−21世紀への再設計−』,同『労働経済学』岩波書店を使用する。
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