三田祭論文:ボールパークのランドマーク化による地域愛醸成
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
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ボールパークのランドマーク化による地域愛醸成

竹内 耕太郎、中村 紳之介、平野 瑞樹

2025年現在、日本において、人口減少と東京一極集中はきわめて深刻な社会的課題となっている。日本の総人口は2014年から継続的に減少しており、地方部ではとくに急速な人口減少が進行している。少子高齢化による自然減に加え、若年層を中心とした都市部への流出がつづいたことで、地方自治体の存立基盤そのものが揺らぎつつある。とくに、進学や就職の機会を求めて首都圏へと移動した若者がその後もUターンせず定住する傾向が強まっており、東京への人口集中は加速度的に進行してきた。

地方における人口減少は、労働力不足や産業衰退のみならず、教育・医療・交通といった生活インフラの維持を困難にする。さらに、地域固有の文化や伝統行事の継承もむずかしくなり、地域アイデンティティの喪失につながる危険性もある。こうした負の連鎖は、地域社会の魅力をいっそう低下させ、さらなる人口流出を招く悪循環を形成する。

したがって、東京以外の地域において人口減少・人口流出を抑制し、持続可能な地域社会を構築することは急務だ。これを実現するためには、単なる人口維持ではなく、地域住民が住みつづけたいと思い、誇りを持てる環境をいかに整備するかが問われている。すなわち、地域経済の活性化や生活基盤の強化に加えて、人々を惹きつける新たな価値や魅力をいかに創出できるかが重要な課題であり、住民の地域への愛着を深めることが目標となる。

住民の地域への愛着を深めるための施策には多様なものが存在する。その中でもスポーツ分野に着目すると、日本においても浸透しつつあるボールパークが地域のランドマークとして認識されることにより、地域愛の醸成に寄与する可能性が指摘できる。従来の野球を観戦する場所とは異なり、複合施設として多様なサービスを提供するボールパークは、地域住民から地域のシンボルとして機能する潜在性を有していると言える。

先行研究では、ボールパークの開業によって周辺地域へあたえる効果を評価してきた。たとえば、Brenda(2006)は、サンディエゴのペトコパークが周辺地域の再開発を促進し、居住人口の増加や地価の向上に寄与したことを示した。三菱リサーチ&コンサルティング(2024)によると、北海道ボールパークFビレッジの建設により、北広島市における新たな雇用創出や住宅開発が進展し、それに伴う若年層を中心とした転入の増加を示している。また、将来的にも周辺地域への居住希望者の増加が見込まれ、人口減少に一定の歯どめをかける効果が期待されると指摘している。実際、ボールパークの建設によって転入数や居住人口が増加する効果は確認されているが、ボールパークを通じた住民の地域愛の醸成、またそれに伴う転出の防止に関する議論は十分とはいえない。

本稿では地域住民の意識醸成やボールパークが持つ性質を分析し、ボールパークがランドマークとして地域愛を醸成する効果を持つことを検証する。1節では地域愛醸成の背景や要因を、2節ではボールパークについての分析を、そして3節でそれらを踏まえ地域愛醸成の可能性について検討する。結論として、ボールパークが地域のランドマークとして地域愛の醸成に寄与することを示す。

論文のフロー図

目次
はじめに
1 地域愛醸成について
 1-1 地域愛醸成が必要となる背景
 1-2 地域愛を醸成する要因
2 ボールパークについて
 2-1 概要
 2-2 期待される効果
3 ランドマーク化の可能性
 3-1 成立要件
 3-2 成立要件を満たす事例
 3-3 ボールパークのランドマーク化による地域愛醸成
おわりに
参考文献

参考文献
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