三田祭論文:浅草地域のオーバーツーリズム解決の糸口
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
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浅草地域のオーバーツーリズム解決の糸口

上江洲 由輔

オーバーツーリズムという言葉を聞いたことがあるだろうか。メディアでも取りあげられ始めている概念で、海外のみならず日本国内でも問題となっている事象である。

東京都台東区に位置する浅草地域は、東京を代表する観光地の1つである。台東区(2023)によると、浅草地域には毎年多くの観光客が訪れ、2018年には年間観光客数が5,500万人を超え、そのうち年間外国人観光客数は1,000万に迫るほどだ。海外からも多くの観光客が訪れる浅草地域は、浅草寺や仲見世通り、雷門などを中心に下町情緒を感じさせる観光の街として賑わっている。浅草以外にも京都、鎌倉などの主要観光地を筆頭に観光客数は年々増え、観光業の経済規模は拡大しつづけている。

その一方で、国内外の観光客が主要な観光地に集中することで起きる弊害も明らかになってきている。高坂(2019)は、先にあげた浅草や京都などでは、観光客による騒音や混雑、ゴミ問題などさまざまな問題が起き、地域住民の日常生活が乱され、両者の間に軋轢が生じていることを指摘している。観光庁(2019)によると、日本では2014年ごろから急速に観光客数が増加したことにより、地域住民や観光資源、環境への負荷など、観光によって周辺環境に悪影響をおよぼしている。このような観光問題は、オーバーツーリズムといい、観光業が生み出す公害、観光公害ともいわれている。オーバーツーリズムとは一種の公害であるが、一般的に公害とされるものとはちがい、原因は観光によるものである。2023年、オーバーツーリズムはとくに海外で重大な事例が発生しているが、日本国内も例外ではない。一刻もはやい解決が望まれているが、崔(2020)によると、日本に先立ってオーバーツーリズムに見舞われたバルセロナやヴェネツィア、モルディブなどの有名観光地では、さまざまな対応策が取られているものの、解決には至っていない。高坂(2019)は、オーバーツーリズム対策には、複数のツールを組み合わせ、問題事象の部分的抑制とダメージの軽減を図る手法が一般的であるとし、観光地の特徴と問題事象から、規制型、分散型、課金型のツールをオーバーツーリズムへの対策として述べている。谷本、谷本(2020)は、観光公害の概念を検討し、ヴェネツィアの事例から京都に関する考察をおこなっているが、日本国内の観光地におけるオーバーツーリズムを解消し、持続可能なものにするための手段について論じている先行研究は少ない。

本稿では、浅草地域のオーバーツーリズムを解決するために、着手すべきことの分析をおこなう。1節では、浅草地域の概要について説明し、2節ではオーバーツーリズムと持続可能な観光、オーバーツーリズムの解決事例と、浅草地域の観光問題を確認する。3節では分散型、規制型、課金型の3つの手法のうち、浅草地域のオーバーツーリズムの解決のためにまずどの手法を導入すべきであるか示す。結論として、浅草地域のオーバーツーリズムにはまず分散型の手法を導入するべきであることを示す。

論文のフロー図

目次
はじめに
1 浅草地域について
2 オーバーツーリズムについて
 2-1 オーバーツーリズムの概要と事例
 2-2 持続可能な観光について
 2-3 分散、課金、規制によるオーバーツーリズムの解決事例
 2-4 浅草地域における観光課題
3 浅草地域のオーバーツーリズムの対応策
おわりに
参考文献

参考文献
ウェブサイト内の資料については、記載されているURLでのリンクを2023年11月21日時点で確認しました。その後、URL が変更されている可能性があります。
論文全文(ゼミ関係者のみダウンロード可)

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