三田祭論文:スリランカ茶産業へのスマート農業技術導入の提言
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
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地方中核都市における公共交通需要の創出

竹田 陽輝

地方中核都市の交通は車であふれている。渋滞や環境面での交通問題が地方中核都市で懸念されている。高度成長期以降、技術進歩がすすみ、個人による移動可能距離が伸びた結果、とくに都心へのアクセスがしやすい地方中核都市での車への依存が顕著になってきている。国土交通省(2012)によると、平日の中核都市圏の交通分担率は自動車が半分以上を占め、年々この分担率は増加している一方で、公共交通の分担率は6%から9%と非常に低い。自動車に依存した交通は、環境や交通状況などに悪影響をおよぼし、市町村の持続可能性は低くなってしまう。

偏った交通需要を調節する方策として交通需要マネジメント(TDM: Transportation Demand Management)がある。TDMにはさまざまな方法があり、ロードプライシングやパークアンドライドなどがある。ロードプライシングとは特定の道路交通利用者に対して金銭を徴収するシステムだ。パークアンドライドとは公共交通発着場の近辺に駐車場を設け、自動車と公共交通両方を活用して目的地に向かうシステムである。關、庭田(2007)は都市部でのロードプライシングの実施によって自動車の需要が減少することを示した。Anas and Lindsey(2011)はメルボルンや香港といった、海外の大都市における交通状況をまとめ、大都市におけるロードプライシングの有効性を分析している。Rosli, Adnan, Diyanah and Abdul(2012)は海外の大きな都市を例にあげ、パークアンドライドによって自動車需要が公共交通需要に転換することを示した。このように、ロードプライシングやパークアンドライドの効果をまとめたり、大都市で個別に実施した結果を分析したりした論文は多い。しかし2つの政策の複合的な導入を扱った論文は、竹隈、溝上(2002)のロードプライシングとパークアンドライドの複合的な実施による自動車需要の変動をシミュレーションした研究があるものの、まだ少ない。

本稿では、地方中核都市におけるTDMとしてロードプライシングとパークアンドライドに焦点を当て、これらの有効性を分析する。1節では地方中核都市の公共交通の現状を説明する。2節ではロードプライシング、3節ではパークアンドライドについての先行研究をまとめ、それぞれの政策が地方中核都市の車依存交通を改善し、公共交通へと需要を転換させる条件を明らかにする。4節では以上2つの政策を複合的に実施した先行研究とその効果を分析する。そのうえで、ロードプライシング区域内の道路交通網が充実しており、かつパークアンドライドを複合的に実施することで、地方中核都市における自動車需要を公共交通需要に転換できることを結論づける。

論文のフロー図

目次
1 地方中核都市と公共交通
 1-1 公共交通の役割
 1-2地方中核都市とは
 1-3 地方中核都市における公共交通需要
2 ロードプライシング
 2-1 ロードプライシングとは
 2-2 導入事例
 2-3 導入の条件と効果
3 パークアンドライド
 3-1 パークアンドライドとは
 3-2 導入事例
 3-3 導入の条件と効果
4 ロードプライシングとパークアンドライドの複合的な導入
 4-1 複合的な導入の事例と先行研究
 4-2 実施の条件と効果
おわりに
参考文献

参考文献
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