三田祭論文:スリランカ茶産業へのスマート農業技術導入の提言
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
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板橋区の放課後対策事業あいキッズの取組み

辻本 健太朗、林 英介、深田 竜矢、松本 円

小学生は放課後に自らの意志で自由に時間をつかうことができる。小学校の授業が終わると公園でサッカーやおままごとをする、スイミングスクールや書道、学習塾など習い事に通う、家に帰って宿題に励むなど、思い思いの時間をすごす。小学生の放課後の時間のつかい方のうちの1つとして放課後児童教室や児童館といった公共のサービス利用がある。

平野(2018)は、東京都中央区湾岸地区を調査対象に、大都市の都心地域で暮らす小学生の放課後生活の実態を調査し、親が児童の行動範囲を制限している世帯、もしくは遊び場に不満をもつ世帯の児童の割合は60%を超えることを示した。梅田(2017)は、大都市において子どもの行動範囲に制限がかかり、自由にすごすことができる居場所が減少していると指摘する。子どもたちが自由にすごすことのできる場所が減少しているのだ。この状況に対し、行政は自ら主導して公的な居場所整備をすすめ、地域の住民やNPO法人・民間企業などは自らの力で居場所を作りあげている。

その中で、厚生労働省と文部科学省は2007年に放課後子どもプランを策定し、2014年にはこれを受け継いで放課後子ども総合プランを、2019年には新・放課後子ども総合プランを策定した。新・放課後子ども総合プランの目的は、小学生が放課後を安全・安心にすごせるようにすることにある。そして、その内容は、厚生労働省がおこなっている放課後児童健全育成事業と文部科学省がおこなっている放課後子ども教室推進事業の、異なる2つの事業の一体化を中心とした計画をすすめるものである。国による一体化事業は全体指針を示すにすぎず、実際の運営は各地方自治体にゆだねられており、いくつかの課題も存在する。

猿渡、佐藤(2011)や陣内、上田(2011)は全児童対策である放課後子ども教室について分析し、学童保育と放課後子ども教室の一体化における課題と解決策を示している。宮地(2017)は、両事業の一体化の実施と児童館での居場所事業について整理し、課題と解決策を述べている。この他にも、両事業の一体化における課題について分析している論文は多く存在する。しかし、具体的な地域を対象とし、一体化における課題にどのように向き合っているかを論じた文献は少ない。

本稿では、板橋区を事例としてとりあげ、学童保育と放課後子ども教室の一体化における課題のうち、子どもの活動の制限と保育の質の低下にどのように向き合っているかを示す。1節では行政主導の放課後対策の現状と、板橋区の放課後対策の一体化について、基本情報を示す。2節では、学童保育と放課後子ども教室の一体化における課題として、学校への囲い込みから生まれる子どもの活動の制限、保育の質の低下について述べる。3節では、板橋区における放課後対策事業をとりあげ、2節で述べた課題に対してどのように向き合っているかを述べる。以上から、板橋区のあいキッズは、地域との交流、児童館との役割分担、多様な活動空間の確保と自主的な空間選択の実現、親子の満足度を高める工夫によって、子どもの活動の制限と保育の質の低下に向き合っていると結論付ける。

論文のフロー図

目次
はじめに
1 基本情報
 1-1 子どもの放課後対策事業について
 1-2 学童保育と子ども教室の一体化
 1-3 板橋区における一体化事業
2 学童保育と放課後子ども教室の一体化の課題
 2-1 学校への囲い込み
 2-2 保育の質の低下
3 板橋区における放課後居場所づくり事業
 3-1 板橋区の子どもの活動について
 3-2 板橋区の空間づくりについて
おわりに
参考文献

参考文献
ウェブサイト内の資料については、記載されているURLでのリンクを2023年3月3日時点で確認しました。その後、URL が変更されている可能性があります。

三田祭論文作成にあたり、ご協力いただいた石橋佳純さん、片野俊太郎さん、菊池有咲さん、澤田慶一さん、西村友里さんありがとうございました。

グループ学習室でサブゼミ活動をおこないました。 高島平児童館でボランティアをしました。
高島平新聞社への聞き取り前に、名刺を作成しました。 あいキッズの利用者の方に話を聞きに行きました。
ファミレスでフィールドノートを作成しました。 高島平団地

論文全文(ゼミ関係者のみダウンロード可)

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